ついのべ2020年11月分

まあいいや書いちまえの精神でやってきた140字小説のまとめ。
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コオロ @ko_ro506

#novelber「ん~、やはり地球産は違いますな」その言葉を聞いて、宇宙農協への出荷業務は完了。無事に終わったことに安堵するも、やはり彼らにとって地球は区別のつかない片田舎の一つなのだと寂しくなる。卸した野菜の本当の産地は月だ。地球はとっくに荒廃したことを、僕はまだ誰にも言えずにいる。

2020-11-20 23:31:41
コオロ @ko_ro506

#twnovel 雨の切れ間、雲の晴れ間を狙って外出する。私の目当ては虹ではなく、アスファルトいっぱいの水溜まりが映し出す青空だ。まるで空の上にいるような気分になれる、この僅かな時間の散歩が私は好きだ。心が洗われる思いで、空に沿ってのんびり歩く。車に水を撥ねられ体も洗われた。ぶち殺すぞ。

2020-11-21 10:04:39
コオロ @ko_ro506

#novelber 家電の割引券をもらった。鍋も簡単に作れるというのでホットプレートを買うつもりが、店を出るときにはラジオを抱えていた。温かくても自分で作って自分で食べるしかない鍋よりも、無言の空間を埋める会話が欲しかった。ラジオは軽いが、足取りは重い。一人になってしまった部屋への帰り道。

2020-11-21 17:12:34
コオロ @ko_ro506

#novelber「結婚なんて遥か未来の話だと思ってたのに、遂に『え、してないの?』って言われちゃったなぁ…」とか言ってへこんでる彼女は、その発言の言外に『君たち』『まだ』が込められていたことに気付いていない。まだ先かな、と呟くと「何が?」なんて訊いてくるので、僕は「春、かな」と答えた。

2020-11-22 17:10:23
コオロ @ko_ro506

#twnovel お前も“キューブ”を求めるのか。なら忠告しておいてやる。お前が望む結果は決して得られない。かつては俺も“キューブ”には全てが内包されていると思っていた。“キューブ”さえあればと信じていた。だが勘違いだったんだ。よく聞け、具材は別売りだ。鍋キューブだけじゃ鍋はできないんだよ…!

2020-11-22 23:40:01
コオロ @ko_ro506

#novelber 何処かささくれが立ったような異物感があり、どうにも気になるので霊能力者に見てもらうことにした。「何か動物の霊が憑いていますね…」「動物…まさかこの前、動物園に行ったときに…」「あなたに訴えたいことがあるようです」「何て言ってるんです?」「『笹くれ』と…」「パンダかな…」

2020-11-23 07:17:10
コオロ @ko_ro506

#サカイメの書架応募 あけましておめでとうございます。そんなの直接言えばいいじゃんと毎年サボっていた年賀状。書かない方が験担ぎになるかもしれないけど、こんなときだから書きまくった。大きく伸びをして、未だ予定の決まらない年末年始を想い、横になる。新年と一緒に明けてるといいなあ、自粛。

2020-11-24 23:02:24
コオロ @ko_ro506

#サカイメの書架応募 昔、賭けをしようって言ったじゃん。どっちがより幸せになれるかってやつ。見ればわかるよ、アンタは幸せそうだね。だから勝ったと思って私に会いに来た。ふっ、油断したね。私はこのときを待っていた。幸せなアンタ以上に幸せになる一発逆転のチャンスを…そのプロポーズをねッ!

2020-11-24 23:32:33
コオロ @ko_ro506

#サカイメの書架応募 生まれ変わりたい。残業を終えた夜道、スーパーで買ったあれこれがずっしりと重い袋をぶら提げて、そんな益体もないことを思う。そんなこと、叶うはずないのにね。アパートに帰宅し、蛇口を捻り、待つ間にだらだら支度をして、重たい体を湯舟に投げ入れた。あ~~生き返るわ~~。

2020-11-24 23:52:21
コオロ @ko_ro506

#novelber 僕の描いた肖像画が賞を取り、立派な額縁に飾られることになった。誰だよこの美人さん、そうからかう相手には、喋ったこともない人だよと答える。あの家の二階の窓辺、あの始発の車窓、いつだって僕は話しかけることができなかった。額縁の中から微笑むあなたを、僕はやっぱり見ているだけ。

2020-11-25 22:10:21
コオロ @ko_ro506

#novelber 追い越した船は幽霊船だった。あの船だって、かつては私と同じように宝島を目指したのかもしれない。何があってそうなったのかは知らないが、私まで引きずり込もうとするんじゃない。空虚な呪詛を振り切って舵を取る。新しい宝島なんてもうないのさ。そう歌いながら幽霊船は、ぐるぐる廻る。

2020-11-25 22:54:23
コオロ @ko_ro506

#novelber 君は、ちゃんとわかっているのだろうか。今は寄り添っていられるけど、いつまでもこうしてはいられないと。背中を押してやらなくとも、君は僕の手を離れて、前へ前へと進んでいくんだ。僕が見送ったその背中は大きくのけ反り、そして転んだ。初めてのスケート、まだ手を離すのは早かったか。

2020-11-26 20:30:03
コオロ @ko_ro506

#novelber 冬になるとみんなパワーアップするよな。クリスマスプレゼントにとお願いされたのは、初期形態からずいぶんとゴテゴテになったヒーローのお高いなりきりセット。げんなりしていると、息子が「パパも冬になるとコートを着込んでヒーローみたいだね」とヨイショしてきた。ちょっと襟を立てた。

2020-11-27 23:38:30
コオロ @ko_ro506

#novelber 僕は一方的に見せびらかしたわけではないんです。誘われたんです、向こうから。このご時世でお店には行けないから、一人焼肉だけどオンラインで一緒にやろうと。それで見せてと言うから、奮発した霜降り肉を見せたんです。それをスクショで撮ってメシハラってタレ込むなんて思いませんよ…。

2020-11-28 22:28:02
コオロ @ko_ro506

#novelber 悪い夢だ。見慣れた街並を、場所にそぐわない幻想生物が闊歩している。そういうVRゲームなのだが、これならゴーグルがなくても私が普段から見ている光景と大差ない。こいつらを消すには全部書き上げてやるしかないが、新しいのが次々に湧いてくる。小説家の人生は、抜け出せない悪い夢だ。

2020-11-29 13:08:50
コオロ @ko_ro506

#呟怖 店名は忘れましたが「牛の首」を出す焼肉屋があったんです。奥の個室に運んでいく店員が、牛の首です、と言うのを聞きました。気になってトイレに立つふりをして覗いたんですが、個室には誰もいなかったんですよ。運んでいったはずの店員も。だから何か楽しみだな。すいません。牛の首ください。

2020-11-29 14:25:01
コオロ @ko_ro506

#twnovel 今日はいい肉の日、我々バイヤーも頑張りました。極上の牛肉を求めてさる東北の地まで。雪国で育った牛の肉は、自然と絶品な霜降りになりますからね。その理論のもと徹底的な放牧で野生化した牛に我々は挑み、戻ったのは私だけ。みんな牛にやられました。何の成果も!得られませんでした!!

2020-11-29 18:59:08
コオロ @ko_ro506

「30日目の #twnovel です。通してください」「どれどれ…おいッ、何だこれは!すっとぼけた駄文ばっか書きやがって!他の人のを見てみろ、もっとポエミーでオシャレな小説書いてるだろうが!しかも最後の最後でメタネタをやりやがったな!お前のような者を #novelber の塔に入れるわけがあるか!」

2020-11-30 22:34:59