犬神佐兵衛の謎

なぜセリフがないのか・・・
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カルヴァドス @cornelius0321

犬神佐兵衛については、ちゃんと考えなければならないと前から思ってきた。映画の佐兵衛は1976年版では三国連太郎、2006年版では仲代達矢が演じている。

2011-05-21 20:09:49
カルヴァドス @cornelius0321

この二人は、俳優の格、ギャラという面でも日本最高峰といってよい。にもかかわらず、冒頭の臨終場面しか登場せず、セリフもない。あまりに贅沢な使い方だ。

2011-05-21 20:09:24
カルヴァドス @cornelius0321

これから私がつぶやくことは、ただの妄想、単なるお遊びなので、ご覧になる方は、笑ったり、バカにしたりしてください。

2011-05-21 20:09:14
カルヴァドス @cornelius0321

ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、非現世的で禁欲的な態度と、世俗的な営利活動は、対立するものではないという趣旨のことを述べている。

2011-05-21 20:09:04
カルヴァドス @cornelius0321

難解な書物なので、私が理解した限りでは、「信仰心が篤くて生真面目でありながら、同時に、金儲けに精を出す人」が周りにいても別に変ではないという意味だと思う。

2011-05-21 20:08:54
カルヴァドス @cornelius0321

日本でも、商家に神棚を祀るのは当たり前だし、デパートの屋上の片隅にはお稲荷さんが置かれていたりする。つまり、宗教と経済活動は両立するということだ。

2011-05-21 20:08:35
カルヴァドス @cornelius0321

佐兵衛は流浪の末に行き倒れていたところを那須神社の野々宮大弐に拾われ、大弐・晴世夫妻に庇護される。この二人の恩人に対し、佐兵衛が献身的だったことは疑いない。野々宮家が神官の家であり、犬神が憑き物筋であることなどから、佐兵衛が信心深い人物だと推測できる。

2011-05-21 20:08:25
カルヴァドス @cornelius0321

ネタバレにならないようにしておくが、天涯孤独の佐兵衛にとって、大弐との関係や、晴世・祝子との関係こそが、本当の「家庭」である。でもその家庭は、現世では決して手に入れることのできない家庭(=あの世的な存在)だ。

2011-05-21 20:08:13
カルヴァドス @cornelius0321

信心深い人間なら、来世こそはこの本当の家庭を手に入れたいと願い、そのためにはより一層現世での労働(経済活動)に打ち込む必要があった。そうした労働の結果が犬神家の莫大な財産になったのだと思う。松子たちで構成される家庭は、その途中で「仕方なく」生じた副産物にすぎない。

2011-05-21 20:08:04
カルヴァドス @cornelius0321

映画の佐兵衛は、鬱積した感情から金と女と権力を貪る人物であるという設定になっているが、これでは、ただの変わり者にしか見えない。ウェーバー的に考えれば、「来世での幸福を願って信心する」人格と「現世での経済活動に精を出す」人格は、一人の人間の中で矛盾することなく同居できる。

2011-05-21 20:07:51
カルヴァドス @cornelius0321

佐兵衛は思慮深い人である。立志伝に名を残す人というのは、「よく喋る人」ではなく「よく考えて実行する力のある人」であることが多い。「野々宮家に恩返しするにはどうしたらいいか」という具合に。

2011-05-21 20:07:41
カルヴァドス @cornelius0321

実行力のある人に、ぺらぺら喋る「セリフ」は必要ない。原作を膨らませて、佐兵衛にセリフを与えるような脚本も書けただろうが、佐兵衛のセリフがなかったのは、私にはこうだとしか思えない。

2011-05-21 20:07:28
カルヴァドス @cornelius0321

菊畑の場面が歌舞伎の「鬼一法眼三略巻」であり、斧琴菊も音羽屋ゆかりの判じ物であることは、よく知られているが、「鬼一法眼」の話自体は、犬神家と関係ない。

2011-05-21 20:07:15
カルヴァドス @cornelius0321

「伽羅先代萩」という歌舞伎の演目がある。伊達藩の御家騒動がモチーフで、まま炊きや子別れの場面など、見どころも多い。通し狂言も面白いが、「御殿」「床下」という場面だけ上演されることも多い。

2011-05-21 20:07:06
カルヴァドス @cornelius0321

その「床下」の最後に、仁木弾正という人物が登場する。お家騒動の黒幕であり、さまざまな計略を図る人物だ。この弾正は「すっぽん(=花道のセリ)」からせり上がって、蠟燭の明かりだけの薄暗い花道を、「セリフなし」で歩いていく。

2011-05-21 20:06:53
カルヴァドス @cornelius0321

わずか数分だけのシーンだが、静まり返った劇場内での仁木弾正の迫力、存在感は凄まじい。この仁木弾正を演じるのは、松本幸四郎や市川團十郎などの「大物歌舞伎役者」だ。無名の役者が演じることはない。

2011-05-21 20:06:43
カルヴァドス @cornelius0321

仁木弾正は、知略を巡らしいろいろな仕掛けを施したということを、「セリフなし」で、その雰囲気だけで、観客に分からせる器量のある役者が務める役なのだ。

2011-05-21 20:06:32
カルヴァドス @cornelius0321

犬神佐兵衛は「超大物俳優」が演じなければならないという決まりはどこにもない。にもかかわらず、実際に超大物役者が演じている理由を探すとすれば、私にはこの仁木弾正のような存在感だけで見る者を圧倒できる役者でなければならないとしか思えない。

2011-05-21 20:06:19
カルヴァドス @cornelius0321

もちろん、佐兵衛と仁木弾正を結び付ける証拠や材料は何もない。前にも言ったように、私の憶測だ。

2011-05-21 20:06:05
カルヴァドス @cornelius0321

もちろん、佐兵衛と仁木弾正を結び付ける証拠や材料は何もない。前にも言ったように、私の憶測だ。

2011-05-21 20:06:05
カルヴァドス @cornelius0321

長くなったので、まとめに入ろう。佐兵衛を大物役者がセリフなしで演じるのは、「言葉の人」ではなく「実行力の人」であることを象徴的に示し、なおかつ、さまざまな計略を練ってきたことを雰囲気だけで伝えられる人物である必要があったからである。<この話題終わり>

2011-05-21 20:05:52