ライオット・オブ・シンティレイション #6
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
SPLAAASH！SPLAAASH！色彩が色彩と衝突し、飛び散ったパーティクルは輝き、ネオンの幻像を結んだ。桃の花が舞うさまを武装サラリマン達は幻視した。「何だ？」「胡乱な……」『火力重点。圧倒的武力を敵性企業に間接的に見せつけ重点な』鉄蜘蛛は電子マイコ音声を発し、ニンジャにロックオンした。 25
2020-12-13 22:24:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「そうだ！」「その手だぜ！」KATANA部隊はこぞってニンジャに銃口を向けた。ニンジャは空中でクルクルと回転し、次の足場を探す。そこへ、BRRRRTTT！BRATATATATATA！容赦なき一斉放火が浴びせられた！……だが！「イヤーッ！」SMASH！下から飛び出してきた赤黒の風が、ニンジャを上へ蹴り上げた！26
2020-12-13 22:27:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「イヤーッ！」スプレーのニンジャは天高く跳び、マグロツェッペリンにしがみついた。一方、スプレーのニンジャを蹴り上げた赤黒の風も同様にニンジャであり……手からフックロープを放つと、KATANA武装ラインが敷かれた屋上へ一瞬にして至った！「イヤーッ！」「ピガーッ！」鉄蜘蛛にトビゲリ！ 27
2020-12-13 22:28:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「ガガガッ、ガガガガピガガガ」鉄蜘蛛は横倒しになり、軋み音とノイズを発しながら起き上がろうとした。赤黒のニンジャは燃えるコマめいてギュルギュルと音立てて回転し、着地した。「なッ」「コイツ！？」KATANA部隊はアサルトライフルを向けた。ニンジャは燃える目で睨み返した……！ 28
2020-12-13 22:30:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
そのニンジャは……然り、読者の皆さんは御存知だ……ニンジャスレイヤーは、回転しゃがみ姿勢から逆回転で立ち上がり、スリケンを投擲した！「イヤーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！？」投げられたスリケンがアサルトライフルに突き刺さり、火花を散らしてジャミングを引き起こす！ 29
2020-12-13 22:33:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
キュイイイイ！鉄蜘蛛が体制復帰し、電磁弾丸でニンジャスレイヤーに狙いを定める！ZDOOOOM！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは高く宙返りして、電磁弾丸を回避！地平の果へ星となる電磁弾丸！「イヤッ！イヤーッ！」KBAM！投げ返されたスリケンが鉄蜘蛛の関節部に命中！ 30
2020-12-13 22:35:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
……『オイ！』空中でバランスをとったニンジャスレイヤーのニューロンに、タキの通信音声が響き渡った。『何度でも強調するが、いいか、絶対に必要以上の面倒引き起こすんじゃねえぞ。何のメリットもねえ！』「当然だ。そんな事をして何になる。黙って見ていろ」ニンジャスレイヤーは応答した。 31
2020-12-13 22:38:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
『黙って見てると無茶苦茶やる奴がいたぜ』「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーはフックロープを給水タンクに噛ませると、今度はオムラ側の屋上へ滑空した。「オムラ！」「イチバン！」パワード武者鎧たちの激しい攻撃！「イヤーッ！」「グワーッ！」向かい来た一体を掴み、もう一体にぶつける！ 32
2020-12-13 22:41:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
そしてマグロツェッペリン！片手でぶら下がったザナドゥは、眼下のニンジャスレイヤーの戦いぶりに舌を巻き、同時に、当初の己はなんと無謀なチャレンジを試みようとしていたのかと、あらためて背筋を寒くした。だがそのまま観戦しているわけにはいかない。やるべき事を終わらせねば！「イヤーッ！」33
2020-12-13 22:44:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
意を決して飛び降りたザナドゥは、看板にさらなるスプレーを噴きつけた。色が爆発し、花が散り、戯画化された黄金の雲が周囲に漂い始めた。もはや「ファック桃」は影も形もない。ザナドゥは看板に刻み込まれた悪意を拳で殴り飛ばし、己のキャラクターで上塗りしたのだ。桃色から白、金。 34
2020-12-13 22:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」オムラ武者鎧を蹴り倒したニンジャスレイヤーは、対岸からの銃撃を受けながら跳び、再びKATANAを相手取った。ザナドゥのキャンバスはもはや看板をはみ出し、空気に色と姿を描き出していった。なんと愚かだった事だろう。彼は己を省みた。 35
2020-12-13 22:54:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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そしてニンジャスレイヤーに感謝した。なぜ彼は己を助けてくれたのか？確かに彼の仲間のウキヨはザナドゥの身に起きた出来事を端的に案じ、助けたそうにしていた。だが、ニンジャスレイヤーは？理由を問い質す気にはなれなかった。訊いたところで答えないだろうし、訊いてはならぬと感じていた。 36
2020-12-13 22:58:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ペイントが終わろうとしていた。ああ、終わってしまう。金色の雲の中で、ザナドゥは少し寂しい気持ちになった。会心の、起死回生の作品だ。だが、終われば次へ向かうのだ……。「イヤーッ！」ザナドゥは最後にXANADUのタグを入れた。桃の幻が二つに割れ、中からヴィーナスが誕生した。 37
2020-12-13 23:01:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ヴィーナスはサペウチCEOの頬に手を添え、ウインクした。サペウチCEOは恥ずかしげに笑い、そして二人はサムアップした。ゴウランガ、の文字が天に昇り、武装サラリマン達はあまりの事に銃火器を降ろし、呆気にとられた。……ニンジャスレイヤーは空を見た。飛び来たる炎の矢を、彼は見据えた。 38
2020-12-13 23:03:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ナムサン……それはネオサイタマ郊外からこの看板を破壊すべく放たれた、短距離弾道ミサイルであった。看板は勿論、周囲に展開した暗黒メガコーポ勢力にすら被害を及ぼす自暴自棄的な攻撃であった……。 39
2020-12-13 23:06:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「なんと……なんたる事か」サペウチCEOは中継モニタ越しに、今まさに起こった超自然的ですらある出来事を、クチを半開きにして見ていた。「着弾30秒前ドスエ」電子マイコ音声アラートが、CEOに現状を認識させた。「そうだ！破壊……するのか、そうだな」CEOは遠い目になり、本部長は訝しんだ。 41
2020-12-13 23:09:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「とにかく、これで解決」サペウチCEOは腕組みしてモニタを見守る。「解決……解……アイエッ！？」赤黒く燃える残像を伴ったニンジャが、ビル屋上を跳び移り、ミサイルに向かって行った。そして腕を力強く打ち振り、燃える縄のようなものを射出した。ミサイルが引き戻された。「何ッ！？」 42
2020-12-13 23:14:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ニンジャを支点に、燃える縄で繋がれたミサイルはサテライト回転を始めた。「何だね、これは！」「アナヤ！」本部長は仰天のあまり、モニタに身を乗り出し、CEOの顔を顔で押し返しながらそのさまを見た。「一体これは……！？」「何たる事か……！」 43
2020-12-13 23:17:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ハンマー投げ選手じみて、ギュルギュルとその場で回転する速度が際限なく上がってゆく。それはさながらドーナツ状の残像円だ。やがて赤黒のニンジャはミサイルを……解放した！ミサイルはあさっての方向！成層圏に向かって飛翔！遠い爆発となって、かき消えた……！ゴウランガ！ 44
2020-12-13 23:21:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「ア……バカな」サペウチCEOは頭を抱えて膝をついた。本部長は慌ててUNIXデッキに向かい、情報収集を試みる。現場の状況は？看板に接近した非企業存在は？文字列が滝のように流れる中、赤黒の装束の外見情報は「ニンジャスレイヤー」という単語を抽出しかかり、エラーを生じ、文字化けして消えた。 45
2020-12-13 23:25:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
「これは」本部長は愕然となった。謎のデータ消失現象への反応ではない。「何だね」サペウチCEOが並び立った。彼らは株価チャート情報に目を見開いた。落書き騒動以来下落を続けていた株価が底を打ち、短期的な跳ね上がりを見せていた。IRC-SNSに、ヴィーナスとサムアップするCEOの噂話が駆けた。 46
2020-12-13 23:28:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
サペウチCEOと本部長は呆然として、画面を流れる文字列を見つめていた。複数のIRC通信コールがUNIXデッキを光らせていた。やがてCEOは精神の混乱を克服すべくパットゴルフを始め、本部長はさらなる情報収集をするべく、腕まくりしてデッキの椅子に座り直した。 47
2020-12-13 23:33:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
……数日後、キタノ・スクエアビル、ピザタキ。ザナドゥは窓際のテーブル、落ち着かない気分で携帯IRC端末をいじっていた。例の看板はあの後すぐに高所作業が行われ、サペウチ・モリドーコムの看板はリペイントが施された。株価は下落前のちょうどの水準に戻り、何事もなかったかのようだ。 49
2020-12-13 23:37:21