- _Ware_Aoba
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また来月
おまけ
#いいねされた数だけ存在していない自分の作品から一文や台詞を抜き出して紹介する ちんじふ劇場完結編「終末はおべんとう持って海戦へ(仮)」より
2021-01-12 15:17:17それはただの穴だった。 ただし大洋に穿たれた巨大な穴だ。 そこから来るのだ。あの深海棲艦という連中は。 誰ともなくあれは『ディープ・ゼロ』と呼ばれるようになった。 深く、そして何も無いが故に。 無尽蔵に現出する深海棲艦は、その穴が閉じれば封じ込められる。 それが人類の悲願であった。
2021-01-19 23:42:31アウトレンジに特化した現行兵器の有用性を全て無に帰す深海棲艦へ反抗するため、人類は艦娘という存在を手に入れた。 生存圏を確保するための戦いを繰り広げつつ、人類は静かに力を蓄えた。 日本で現出した艦娘も、今や多くの国が持つに至った。 時は来たれり。 世界各国は反攻作戦を計画した。
2021-01-19 23:51:14穴は世界各地に7つ存在する。 その7つの穴に一斉に攻勢を仕掛けるという。 『オペレーション・ラグナロック』 作戦名は失笑されたものの、作戦企図を聞くに及び、出席者は襟を正した。 これは最終戦争なのだ。 つまりこの作戦が失敗すれば、人類は深海棲艦に滅ぼされる。近くもなく遠くも無きに。
2021-01-19 23:59:45「Tschüss, 世話になったわ。こんなにも長く日本にいることになるとは思わなかったけど」 「行くのね」 「ええ、提督。これまでありがとう」 「生きて、また会えると良いわね」 「会えるわ。あなたに鍛えられた私たちですもの」 彼女は笑うと背を向け、そのまま振り向かずに出ていった。
2021-01-20 00:10:36「横須賀、呉、佐世保、舞鶴から精鋭を選抜。それでも6、700人の大所帯になるでしょうね」 「空前絶後の聯合艦隊だな」 「大湊は?」 「残ると」 「どうして? 全戦力を傾けてこその作戦でしょう?」 「それをやったMI/ALを覚えてる?」 「……」 「帰る場所があっての勝利だろうってさ」
2021-01-20 00:19:42「私、人類の危機が迫ったときは、一致団結してその危機に立ち向かうもんだと思ってたんですけどね」 「実際は……違いましたね」 「人が居る数だけ、人の思惑があるんですよね」 「先人曰く『船頭多くして船山に上る』」 「だから、他の船頭には降りてもらったんです」 「ものは言い様ですね」
2021-01-20 00:24:54「親父っさんたちも付いてきてくれるんですか?」 「おう。俺たち以外に誰が整備や修理をやるってんだ?」 「ありがたいですけど……いいんですか?」 「なあ、明石よ。老い先短えのが残って、お前たちを送り出すのは、道理が合わねえと思わねえか? 爺共にもな。正義ってもんはあるんだよ」
2021-01-20 00:35:20「みなさん。お疲れさまでした。これで訓練は最後とします。出撃までは各々が自由に過ごしてください」 「「「ありがとうございました!」」」 「最後に。事にあたり『死ぬ気』で相対することは悪いことではありません。が、私は命を捨てろと思っていません。死ぬ気で帰ってきてください」
2021-01-20 00:49:26「鎮守府もだいぶ人が減りましたね」 「外国籍の艦娘たちは本国の指揮系統に統合されるためにみんな帰国したからね。太平洋を担当するのは私たち日本とアメリカになる」 「不思議ですよね。私たちのもとになった艦艇の時代には争っていた間柄だったのに」 「それが艦娘として築く未来のひとつよ」
2021-01-20 07:20:50「爺さんのとこまで抜けられるのは困るんだけど」 「残るのは儂だけだ。ウチの娘っ子たちを、うまく使ってやってくれ」 「どうして?」 「練度の足らぬ艦娘は作戦から外される。その娘らをまとめる者がいるだろう?」 「でも……」 「これからはお前たち若いのの時代だ。老いぼれは銃後を守るさ」
2021-01-20 20:31:54「大作戦ともなるとすごい物資ですねえ」 「違うのよ。これは正式な物資じゃなくて提督のへそくりなの」 「え?」 「提督は前々から、正式なルートとは別に資材を貯めていたの。だからこれは書類上は存在しないものなのよ」 「それが、こんなにですか?」 「この膨大な資源を使い切る規模なのよ」
2021-01-21 21:37:47「改おおすみ型艦娘母艦5隻。護衛には「いずも」を中心とした第1護衛隊群。「かが」を中心とした第4護衛隊群が付きます。その他、第1潜水隊群からそうりゅう型を中心に6隻。あら、なんですか? このおおすみ型2隻と水陸機動団って。上陸作戦はないですよね?」 「念の為のお守り、かなあ」
2021-01-21 21:46:18「横須賀に護衛艦隊集結中らしい」 「おー。軍港めぐりで見れるかな?」 「それが、1週間臨時運休」 「なんでさ!」 「噂だと近々大きな作戦に出るらしいから、そのせいだろうなあ」 「にしたって、ひでえなあ。いつからなんだよその作戦って」 「全く情報がない。海自の知り合いもダメだって」
2021-01-21 21:53:12「呉艦隊第十六駆逐隊の雪風です!」 「時雨です。佐世保艦隊第廿七駆逐隊から来ました」 「おー、まさに呉の雪風、佐世保の時雨じゃんか」 「そういう期待をされると困るんだけど……」 「のわっちも横須賀から来たって名乗りを上げないと」 「嫌よ。そんなの恥ずかしい」 「えー」
2021-01-23 22:21:21「艦隊出撃前の訓示なんですが……ちょっと困ったことになりまして」 「防衛大臣でも来ることになった?」 「いえ、官邸から首相がリモートで。と」 「……まあ、便宜上の最高司令官ではあるけど。なんでまた」 「支持率下がってますからねえ」 「政治家にゃあ、一大決戦も支持率アップの手段か」
2021-01-26 21:22:30「明石。51cm三連装砲を出してくれ。出来ているだろう?」 「えー! ダメですよ。組み立ては済んでますけど、試射も何もやってませんもの」 「51cm砲自体は確立済みの技術だ。調整は航行中に行う」 「技術者としては反対したいんですが」 「伝家の宝刀を使わないまま終わらせたくはないだろう?」
2021-01-26 21:31:37艦娘を載せた母艦とともに自衛艦隊が一隻、また一隻と横須賀港から出港していく。 岸壁では海上自衛隊の音楽隊が、壮行のためにずっと同じ曲を奏でていた。 宇宙戦艦ヤマト。 「必ずここへ帰ってくるぞ」 その歌詞に込められた願いが届くように、最後の一隻が見えなくなるまで、演奏は続けられた。
2021-01-26 21:48:59「聯合艦隊の艦娘諸君。我々は幾年にも渡り、深海棲艦と戦争を繰り広げてきた。終わりの無いかのように見えたが、その糸口をついに得ることが出来た。この戦いで勝利すれば、戦争は終わる。先人の言葉を借りて諸君らに掲げさせてもらおう」 『人類の興廃此の一戦に在り。各員一層奮励努力せよ』
2021-01-26 22:06:39未完