【彼方へ】最初の目標は、桜上水で強いチームを作ること。次はプロになること。その次は代表に選ばれること。そして海外でプレーすること。今は、W杯で優勝すること。無謀だってわかってる。今の日本のレベルでは、W杯での優勝は簡単なことではない。でも、もっともっとと求めていく。心は、彼方へ。
2011-08-09 11:09:55【ジンクス】試合前にはいつも音楽を聴く。ヘッドホンを耳に当てて、試合の事だけを考える。でも試合が始まるとそんなこと忘れてただボールを蹴る。走っても、負けることもある。それでも俺は試合前に音楽を聴く。意味なんてなくても、結果が追いつかなくても。ジンクスに全てを賭ける程バカじゃない。
2011-08-09 11:19:01【守るべきもの】親父が俺にサッカーを強制し出した頃から、俺は俺だけのサッカーを守ろうと思った。意地を張って、絶対に親父の言うことは聞かなかった。今でも、俺は俺のサッカーを貫くことに誇りを感じている。でもその基礎を作ったのは紛れもない親父だって気付いたら、もうどうしようもないな。
2011-08-09 11:23:03【誓い】サッカーが人生の全てになるのは嫌だったし、俺には他にやりたいことが山ほどあったし、最初からプロへの道なんて考えちゃいなかった。それでも武蔵森でサッカーを続けてるのは、こいつらだけには嘘はつきたくないと思ったからだ。6年間だけ、こいつらの夢に付き合おう。今、お前らに誓うよ。
2011-08-09 11:27:30【嫌いじゃないよ】俺、よく冷めてるとか、何考えてるかわからないとか言われたりする。まあそんなの一種の処世術で、その方が生きるのがラクだったからだ。でも、試合で勝って走って仲間の元へ行って、笑いながら全員でもみくちゃに抱き合ったりするのも、嫌いじゃない。サッカーだけは、特別なんだ。
2011-08-09 11:32:38【見上げた夜空】6月の夜空は暗く、小さな星が光っている。今頃、向こうは夕方くらいだろうか。試合開始の笛が鳴るのを、全員で待っているのだろう。あいつらが今ドイツにいるのは当然で、俺が日本で夜空を見上げているのも当然のことだ。繋がった空に祈る。なあ、俺の気持ちまで攫って勝ってくれよ。
2011-08-09 11:37:16【溶けたアイス】「あちぃ」「夏だからね」結人の言葉に英士が答える。太陽は沈んだというのに、練習帰りに買ったアイスが溶ける程にはまだ暑い。「ほら一馬、アイス」英士が俺を見る。俺は慌てて手首に流れたアイスを舐めながら、あと何回こうして3人で帰れるだろうと思うんだ。アイスは溶けていく。
2011-08-09 11:50:02【報われた想い】メンタルが弱いって言われてきたけど、そんなのどうやって鍛えればいいのかわからなかった。直すよう努力はしたけど、正直どうしろっていうんだとも思っていた。それを覆したのが、W杯での得点。ああ、自分を信じればいいのか。仲間を信じればいいのか。見てるか?あの頃の弱い俺。
2011-08-09 11:54:47【また会えたね】ユースでずっと一緒だった英士と結人と道が別れた時、それはプロへの道を選んだ時だった。あんなに長い間一緒のチームでプレーしていたのに、これからは敵同士になる。プレースタイルを知られている分、随分厄介な敵だ。でも、また同じチームでプレーできるんだな。代表という場所で。
2011-08-09 11:57:57マサキへの青春系お題は、追う者、追われる者 / 甘いだけじゃない / キャプテンマーク です。 http://bit.ly/nEZAe3
2011-08-10 09:58:36【甘いだけじゃない】甘くて優しくて綺麗な物には興味がない。汚くて駆け引きがあって利己的な事の方が人間的だ。常に求めるのは勝利だが、負けた時の悔しさにも意味がある。下を向いた視線を上げる事が大切で。でも、やっぱり悔しいものは悔しい。負けたくない。矛盾した心。勝負は甘いだけじゃない。
2011-08-10 10:36:03【追う者、追われる者】何かを比べて優劣をつけたり価値をつけることが苦手な方だと思う。常にフラットな視線を保っていたい。まあ翻せば、何かに執着することがあんまりないということだが。でも、翼にはいつも俺の前を行っていてほしい。俺はあいつの背中を追いかけていたい。唯一の執着が、それだ。
2011-08-10 10:37:31【キャプテンマーク】前半35分にレッドを食らった翼が、悔しそうに唇を噛みながら俺に近付いてきた。「ありえない」険しい顔をしたまま、赤いユニホームに巻いていたキャプテンマークを外す。「ほら」「俺?」「以外に誰がいんの」真顔の翼に苦笑した。ああ、たまんねえの。その信頼、勝利で返すわ。
2011-08-10 10:44:17英士への青春系お題は、緩んだその口元が / 光浴びて / 誰もいないグラウンド です。 http://bit.ly/nEZAe3
2011-08-10 10:45:07【緩んだその口元が】「次の試合、俺が真ん中だから」「知ってるよそんな事」苦々しげに水野が言う。W杯、重要な試合にスタメンとして選ばれた俺には優越感があった。「そのまま10番も掻っ攫ってくけど」すると、水野が笑った。「それはムリだな」緩く笑んだ口元が俺を挑発する。そうこなくっちゃ。
2011-08-10 10:50:05【光浴びて】南アフリカW杯、カメルーン戦。フリーステートスタジアム。16時キックオフのスタジアムのライトはまだ点けられていない。試合が終わる頃には巨大なライトがピッチを照らすだろう。溢れる光の中で、勝利を勝ち取るのは俺達だ。試合開始の笛が鳴る。強まる予感。考えるのは、勝つ事だけ。
2011-08-10 11:02:40【誰もいないグラウンド】ユースとしてサッカーを続けて、プロに進んで、W杯で世界を相手に戦った。最初に所属した広島を離れることなく、俺は現役を終えた。沢山のサポーターが引退試合に駆け付けてくれた。誰もいないグラウンドに一人で立つ。ここが、俺の世界の全てだった。まだ離れる気はないよ。
2011-08-10 11:10:27根岸への青春系お題は、陰の功労者 / これだけは素直に言える / 夕暮れ時、電車に揺られて です。 http://bit.ly/nEZAe3
2011-08-10 11:11:28【影の功労者】渋沢も藤代も天才だし三上も結構凄いし、世間に注目されるのは大体その3人だ。けどさ、サッカーは11人でするスポーツで、俺だって一応スタメンで、つまり、もうちょい俺モテてもよくね?って事なんだけど、三上が後はお前らに任せたって言うからさ、嬉しかったとかさ、言わないけど。
2011-08-10 11:39:19【これだけは素直に言える】俺結構なーんも考えてなくて、周りに「根岸しっかりしろよ」って言われる位にはアレで、でも今までそれで生きてきたから特に直そうとか、しっかりしようとか思わないんだけど、試合中はない頭をフル回転させて自分の役割をこなす。だってサッカーはどうでもよくないもん。
2011-08-10 11:44:50【夕暮れ時、電車に揺られて】練習試合の帰り、皆で電車に乗る。大きな荷物で席に座るのは迷惑だから、ドアの近くのスペースに男数十人で固まって立つ。今日の試合どうだったとか、お前汗臭いから寄るなとか、帰りにコンビニ寄ろうぜとか、後になって思い出すのは決まってなんでもない日常だという事。
2011-08-10 11:49:01