伊坂幸太郎の作品のキャラクターと、その映像化について

『ポンコツ山田.com』の山田さんによる伊坂幸太郎の作品のキャラクターのお話。そこから伊坂作品の映像化についても。
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山田 @ponkotsuyamada

ちょっと前に「G戦」を元にしてキャラクターの「濁り」に関する記事を書いたけど、それを伊坂幸太郎に当てはめてみると、驚くほどに「濁って」いない。多くの主人公は巻き込まれ型か俯瞰型だし、メインに動くキャラクターが何を考えているかはかなり強固に隠されている。

2010-04-28 23:19:08
山田 @ponkotsuyamada

更に遡れば、「伊坂幸太郎の作品にはケミカルな印象がある」とブログで書いたけど、たぶんそれは「濁り」がないというのと通じる話。色彩的な印象がとてもマット・フラットで、生命が育まれるような「濁った」色は感じない。

2010-04-28 23:22:50
山田 @ponkotsuyamada

でも僕は、それが伊坂作品にとってマイナスに働いているとは思わないのです。キャラクターの動きが精緻に計算されていて、いい意味で作り物めいたエンターテイメント作品。それが僕なりの伊坂作品短評。全く悪いものではない。

2010-04-28 23:24:36
山田 @ponkotsuyamada

施川ユウキ先生の「え!?絵が下手なのに漫画家に?」に関連して書いた記事(http://bit.ly/3dfX4I)でも触れたけれど、作ろうとしている作品の質(中身)とその表現方法(方向性)がそぐっていればいいのだと思います。適材適所。

2010-04-28 23:28:21
山田 @ponkotsuyamada

あ、「伊坂作品はケミカル」云々と書いた記事はこれ。http://bit.ly/9zEEud

2010-04-28 23:29:26
山田 @ponkotsuyamada

伊坂幸太郎のキャラクター作りの上手さは、「何を考えているかわからない人間」に色濃く出てると思います。創作物ではしばしばいわゆる「天才」がそのような形で造形されるけどそうではなく、飛びぬけた才覚を見せるのではなく淡々と何を考えているかわからないキャラクター。

2010-04-29 00:09:33
山田 @ponkotsuyamada

「モダンタイムス」に登場した岡本猛がその代表格。何考えているかさっぱりわからず、素晴らしく怖い。

2010-04-29 00:10:58
山田 @ponkotsuyamada

渡辺佳代子は、終盤に物分りが良くなってきた感があり、それは残念だった。

2010-04-29 00:12:19
山田 @ponkotsuyamada

何を考えているのかわからない登場人物がメインキャラクターを混乱のままに事件に巻き込んでいくのが、読み手の興味も一緒に引っ張っていくのだと思う。わからないからわかりたい、というやつだろうか。

2010-04-29 00:13:48
山田 @ponkotsuyamada

内田樹・名越康文の対談「14歳の子を持つ親たちへ」(新潮新書)の前書きで、「居着き」というタームが使われていた。「何考えているかわからないキャラクター」の効用・役割は、それに通じるものがある。以下、重要な箇所を抜粋。

2010-04-29 00:26:10
山田 @ponkotsuyamada

「先に「?」のふきだしを頭に付けてしまった側は「居着き」、心身の自由を奪われ、付けさせた側はその問いかけをどういう文脈に置いて「料理」するかのフリーハンドを手に入れる」(p7)

2010-04-29 00:26:57
山田 @ponkotsuyamada

意図的に「何を考えているかわからないキャラクター」を出すことで読み手の頭上に?をつけ、書き手の導きたい方向に容易に誘導できるようになる、という「居着き」のタームは、人と人との出会いに留まらず、物語形式の創作物においても当てはまるものだと思うのです。

2010-04-29 00:29:03
水星 @mercury_c

@ponkotsuyamada 山田さんの意見に同意で、そこから伊坂作品の映像化が上手くいかない(と私が思う)理由について私の考えをこれから@してみます

2010-04-29 00:17:18
水星 @mercury_c

@ponkotsuyamada 結論から言うと、「何を考えているか分からない」伊坂作品の人物に役者を起用することで、何を考えてるかイメージ付けされてしてしまうのが原因だと思います。

2010-04-29 00:25:58
水星 @mercury_c

@ponkotsuyamada 例えば『ゴールデンスランバー』のお父さん役は伊東四朗さんですが、これを観た受け手は伊東四朗という人の情報をもっているがゆえに「お父さん役の伊東四朗」というイメージを頭の中に描きます。

2010-04-29 00:27:39
水星 @mercury_c

@ponkotsuyamada 結果お父さんの情報量が増えてしまうといったように、情報量の少ない小説だからこそ可能だった「何を考えているか分からない」伊坂作品の人物がいわば普通の人に落としこめられてしまうのではないかと考えました(終)

2010-04-29 00:29:41
山田 @ponkotsuyamada

@mercury_c 視覚情報は他のあらゆる情報媒体に比べて直接的かつ鮮明ですから、限定性の高い文字情報から視覚情報を生み出した場合に、そもそも文字情報にはなかった「余計な」情報が含まれることが一つの宿命ではあります。

2010-04-29 00:41:01
山田 @ponkotsuyamada

@mercury_c 伊坂作品の登場人物の「濁り」のなさは、キャラクターの余計な情報の少なさ、人物像の限定性ということも意味しますますから、別媒体に作るときは、それを念頭に置いて作らなくてはいけないのではと思います。情報の雑多さは、人物像の類推を推し進めてしまいますから。

2010-04-29 00:42:12
山田 @ponkotsuyamada

@mercury_c まあ、小説以外の伊坂作品を一つも見ていないので、確たることは言えないのですが。

2010-04-29 00:42:30
水星 @mercury_c

@ponkotsuyamada 映像化は表層の筋だけ取り出して普通の話になっちゃう気がするんですよ。『ゴールデンスランバー』は非常に映画的な話ですけど、本筋だけ抽出すると違う作品のように思える……と予告だけ見まくった感想ですがw

2010-04-29 00:51:51
水星 @mercury_c

@ponkotsuyamada いつか話したいことだったんでちょうど間に合ってよかったです。これあとでとぅぎゃります

2010-04-29 00:53:39