立憲民主党本多平直議員の処分をめぐる議論について、刑事法研究者 野村健太郎氏のツイートまとめ

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野村健太郎 @hokorimura

普段SNSでの発信はしないのですが、立憲民主党本多平直議員の処分をめぐる議論について、刑事法研究者の立場から、現時点で考えることを書きたいと思います。まず、私自身は、性犯罪を専門的に研究しているわけではなく、性交同意年齢についても特別な知見があるわけではありませんが、【1/】 twitter.com/otsujikanako/s…

2021-07-18 17:07:06
野村健太郎 @hokorimura

【承前】現在の13歳という線引きは、やや低すぎるように思えるところであり、具体的な年齢はともかく、引き上げが望ましいのではないかと考えています。仮に本多発言が、引き上げ自体に反対するものだったとすれば、立場は異なることになります。他方、立法をめぐる議論の過程では、【2/】

2021-07-18 17:07:06
野村健太郎 @hokorimura

【承前】(ある立場からみれば)間違っている意見や倫理的に異論のあり得る意見も含めた多様な意見が表明され、それに対する批判がなされることによって、より良い結論に向かっていくことが期待されています。議論に参加する議員にとっては、【3/】

2021-07-18 17:07:07
野村健太郎 @hokorimura

【承前】「間違った意見(間違っている可能性のある意見)」を言うこともまた、大切な仕事の一部であり、「間違った意見」を言ったことを理由に地位を追われる状況は、議会制民主主義を危うくするものではないか、という危惧をもっています。例えば、労働法の規制を緩めて【4/】

2021-07-18 17:07:07
野村健太郎 @hokorimura

【承前】労使間の「自由な合意」に委ねるべきだと主張する議員がいたとして、その主張が労使間の力の不均衡を無視したものであり、それが実現されれば過労死等の増加を招きかねないものであったとしても、そのような意見の表明自体が議員辞職に値するものだとはいえないように【5/】

2021-07-18 17:07:07
野村健太郎 @hokorimura

【承前】思います(もちろん、主張内容に対する批判はなされるべきですし、それが選挙の際のマイナスポイントになり得ることも当然です)。とりわけ刑事立法は、刑罰という極めて強い権力を国家に与えるものであり、処罰範囲を拡大する方向での法改正には、慎重な姿勢が求められます。【6/】

2021-07-18 17:07:08
野村健太郎 @hokorimura

【承前】立法に携わる人は、「加害者と被害者(性犯罪の場合には、特に男性と女性)」という権力関係に加えて、「国家と市民(特に被告人)」という権力関係にも敏感でなければなりません。常識的な感覚からすれば処罰されて当然と思えるような行為についても【7/】

2021-07-18 17:07:08
野村健太郎 @hokorimura

【承前】(あるいは、そのような行為についてこそ)、「本当にこれを処罰する権限を国家に与えてよいのか?」「何か見落としていることはないか?」ということを、想像力を持ち寄って検討することが、立法府の責任です。そこで示された疑問や懸念が結果としては理由のないもの【8/】

2021-07-18 17:07:09
野村健太郎 @hokorimura

【承前】(あるいは誤った前提に立つもの)であったとしても、それを検証するプロセスが無駄だということにはなりません。疑問や懸念に理由がないことの確認そのものが、議論の成果だといえるからです。今回の本多議員の意見も、たとえそれがジェンダーバイアスに基づいた、【9/】

2021-07-18 17:07:09
野村健太郎 @hokorimura

【承前】批判を免れないものであったとしても、それを表明して議論の土俵にのせることができる環境自体は、健全な刑事立法プロセスを確保するための重要な前提だと思います。性犯罪について議論する際に、ジェンダーバイアスへの注意が必要なのは確かですが、同時に、もう一つのバイアス、【10/】

2021-07-18 17:07:09
野村健太郎 @hokorimura

【承前】すなわち、「処罰や捜査の対象となるのは、我々一般市民とは違う人々である」というバイアス(ここではさしあたり「一般市民バイアス」と呼んでおきます)にも注意する必要があります。我々は普段、自分が犯罪者や被疑者として国家権力の対象となることは、あまり想像していません。【11/】

2021-07-18 17:07:10
野村健太郎 @hokorimura

【承前】しかし、言うまでもなく処罰や捜査は、「一般市民」を対象とするものであり、それを正当化するためには、仮に自分たちがその処罰や捜査の対象となったとしても納得できると言えなければなりません。ところが、ジェンダーバイアス同様、この「一般市民バイアス」もまた【12/】

2021-07-18 17:07:10
野村健太郎 @hokorimura

【承前】根深いものであり、そこから自由にものを考えることには、困難を伴います。だからこそ、刑事立法に際しては、あえて「一般市民としての常識的な感覚」から離れて、場合によっては想像するだけで嫌悪感を覚えるような行為についても、本当にそれを一律に処罰の対象としてよいのかを【13/】

2021-07-18 17:07:10
野村健太郎 @hokorimura

【承前】検討する必要があります。もちろん、いくら議論の過程であっても、それ自体が差別的であるような発言や、脅迫や名誉毀損のように直接的な他害性のある発言は許されないでしょう。しかし、今回の本多議員の発言内容は、それとは異なるように思います。【14/】

2021-07-18 17:07:11
野村健太郎 @hokorimura

【承前】たしかに、性に関わる問題について、不用意に「自分」を例に出すことは、相手に対して自身を性的な主体として提示することを意味するものであり、避けるべきであったと思います。しかし、そのこと自体が議員としての地位を追われる十分な理由になるかは、疑問です。【15/】

2021-07-18 17:07:11
野村健太郎 @hokorimura

【承前】他方、本多議員の処分に対する疑問を表明する人の中には、これを機会にフェミニストやフラワーデモを叩こうという意図がうかがわれる人もいるように感じます。しかし、仮に、性暴力の被害者やそれに寄り添う人々からなされた主張の中に、刑事法の基本原則に照らして【16/】

2021-07-18 17:07:11
野村健太郎 @hokorimura

【承前】許容できない主張が含まれていたとしても、必要以上に攻撃的な言葉でこれに反論することは、不適切でしょう。例えば、殺人の被害者遺族が被告人の死刑を望む主張をした場合に、たとえその事案が類似事案と比較して到底死刑相当とはいえない事案だったとしても、【17/】

2021-07-18 17:07:12
野村健太郎 @hokorimura

【承前】その遺族を罵倒しようとする人は、ほとんどいないのではないでしょうか。それが性犯罪の被害者やその支援者を相手にしたとたん、攻撃的な言葉を選びたくなるのだとすれば、そこに「主張する女性」を嫌悪するミソジニー的な感覚がないのか、自ら問うてみる必要がある【19/】

2021-07-18 17:07:12
野村健太郎 @hokorimura

【承前】ように思います。そもそも、性犯罪はもちろんのこと、およそ犯罪や刑罰について考えるに際して、ジェンダーの視点が不可欠であること(そして、これまでの議論でそれが不十分であったこと)は、否定できません。刑事法の基本原則と整合し得るしかたでフェミニズム等の知見を【20/】

2021-07-18 17:07:12
野村健太郎 @hokorimura

【承前】採り入れることは可能なはずであり、また必要なことだと思います。また、性犯罪の法規制を考えるうえで、被害の実態を知ることも必要であり、そのために被害者やその支援者の話を聞くことも大切です。ただ、それらの人々の主張をそのまま立法に結び付けるのが危険であることも、【21/】

2021-07-18 17:07:13
野村健太郎 @hokorimura

【承前】また確かだと思います。前述のように、被害者も含め、あらゆる人は「一般市民バイアス」から自由ではない以上、あえて被害者の主張とも距離を置いた議論が必要です。それは、場合によっては被害者やその支援者の意に沿わない結果をもたらし、それらの人々を再び傷つけることに【22/】

2021-07-18 17:07:13
野村健太郎 @hokorimura

【承前】なるかも知れません。これは、刑事立法(あるいは司法)において避けられない葛藤です。立法府のメンバーには、そのような当事者の傷つきにもできるかぎり配慮しながら、丁寧な説明をすることが望まれます。もし議員たちが、刑事法の原則を被害者や支援者に理解してもらうことを【23/】

2021-07-18 17:07:14
野村健太郎 @hokorimura

【承前】早々に諦め、安易に被害者の主張を立法に直結させようとするのであれば、それは、被害者を理性的な対話が不可能な相手として扱うものであり、それらの人々をかえって馬鹿にする態度とも言い得るように思います。【24/】

2021-07-18 17:07:14
野村健太郎 @hokorimura

【承前】ところで、本多議員の発言に対しては、「14歳の少年(女子を含む)による真正の同意はおよそあり得ない」という批判も見られますが、これを事実の問題として考えるならば、本当にそう言い切れるかについては、疑問も覚えます。性的な判断能力は個人によって様々であり、【25/】 twitter.com/otsujikanako/s…

2021-07-18 17:09:38
野村健太郎 @hokorimura

【承前】例えば16歳でも判断能力が十分とはいえない人もいれば、13歳でもそれなりの判断が可能な人いるかも知れない、というのが、実態ではないでしょうか。そのような前提で、青少年に対する性的な搾取を防ぐために、どこに線を引き、どの範囲で真正な同意とみなすか、【26/】

2021-07-18 17:09:39