I am a DOG

マリエは俺のご主人様だ。幸か不幸かはわからない。 とある屋敷の執事となった俺の『普通』の日々。
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ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。「ポチ、散歩に行くわよ」俺の首輪にリードをつけながら、楽しそうに微笑むマリエ。お嬢様然とした白いワンピース。右手に日傘を差しながら、左手にスコップとビニール袋を…「待て」「何?」「犬の罰ゲームはともかくとして左手のは何だ」「飼い主の常識」

2011-08-12 23:09:01
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。俺の人生、最初から現在まで良かった事は一度も無い。不慮の事故で両親と死別。物心つく前から借金まみれの泥まみれ。恨まれ、謗られ、弄ばれが俺の日常。簡単には死んでやるものかと思うぐらいが精一杯の抵抗。…だった。マリエと出会ってしまうまでは。

2011-08-12 23:17:00
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。「…死ぬの?」マリエが最初に言った言葉。雨が降る路地裏。肺炎になりかけの俺は、ゴミ袋に埋もれながら答えた。「冗談じゃねえ。死ぬつもりはない」「でも、死にかけじゃない」「かけてるだけだ…死なねえ」「ひどい顔色。やっぱり死ぬ?」「だが断る」

2011-08-12 23:24:46
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。熱にうなされながらもマリエと会話を続ける。死ぬつもりはなかった。だが、医者にかかる金もなく、雨をさける体力もない俺は、残念ながら死に近づいていた。「泣いてるの?」「…俺が?」もはや手を動かして確認する力も無かった。「…かもな。悔しいな」

2011-08-12 23:28:40
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。「悔しい?」「ああ、もっとちゃんと生きたかった。普通に飯食って、普通に風呂に入って、普通に眠りたかった」俺は誰と話してるのか判らないまま呟いた。「普通に生きたかった。だけど、ダメみたいだ。それが悔しい」意識が薄れる。「じゃ、叶え…」暗転。

2011-08-12 23:33:11
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。そして目が覚めたら首輪がはまっていた。「…」「おはよう、ポチ」何ともいえない表情をしていると見知らぬ少女がいた。「ご主人様から挨拶したのよ、返事ぐらいしたらどう?」「首輪はずせ、馬鹿」「反抗的ね、ポチ」「誰がポチだ」「首輪に名前」まじか。

2011-08-12 23:39:26
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。それから俺の語るも涙、聞くも涙の大脱出劇が3週間に渡って繰り広げられたのであるがバッサリと割愛する。要約すると、ここはとある屋敷でメイドさんが冥土さんで超怖い。黒と白の悪魔だ、あいつら。

2011-08-12 23:44:10
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。「ポチ、どこ行ったのー?」「へいへい」執事姿に首輪。それが今の俺の姿だ。マリエが俺を見つけて笑う。「ポチ、お昼よ。ご飯食べましょう」『普通に飯食って、普通に風呂に入って、普通に眠りたかった』これが普通とは思わないが。「了解」笑って答えた。

2011-08-12 23:49:07
ハラヨシ @harayosy

#twnovel マリエは俺のご主人様だ。「ポチ、お年玉」ご丁寧にポチ袋に入っていたのは高級ドッグフードだった。「嬉しい?ねえ嬉しい?」悪意0%の笑顔でマリエが言う。「嬉しいわけあるか、このバ」叫ぼうとした俺は背後に迫る殺気(冥土)にごくりと喉を鳴らした。「…嬉しいです」

2012-01-02 13:33:59