ゴルゴの手を、「彼」がいちいち握らない本当の理由

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uroak_miku @Uroak_Miku

頭の整理も兼ねてまんがキャラクターとは何かを語ってみます。

2021-09-30 13:04:01
uroak_miku @Uroak_Miku

手短にいきます。19世紀末、アメリカ・ニューヨークでは二大通信社ハーストとピューリッツアが激しい部数争いを繰り広げていました。移民がニューヨークに押し寄せ人口がどんどん膨らむなか、英語の読めない一世たちにも買われるような紙面が工夫された。カラー印刷技術を駆使して日曜版を派手にした。

2021-09-30 13:35:15
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まんがは字が読めなくても楽しめる。それでいろいろ掲載された。人気まんがについてはライヴァル通信社より作者の引き抜きまであって、同じ主人公のまんがが異なる系列の紙に異なるまんが家によって連載される事態まで発生。それで裁判がいくつか起きて、やがて「主人公の帰属を定めるべし」と発展。

2021-09-30 13:38:46
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まんが主人公の扱いを、芸能人の所属事務所はどこだってノリで処理するやり方が提唱され、実用性が高いこともあってアメリカでは新聞まんがの定番的考え方になっていった。

2021-09-30 13:40:38
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架空の人物に自律した人格を認めるのは、小説中の人物に実在感を覚える19世紀的感性の延長であると同時に、それ以上のものとなった。シャーロックは(挿絵はあれど)絵ではなかったけれどイエローキッドは挿絵こそが主となった。 pic.twitter.com/wLAEbixI4Y

2021-09-30 13:45:44
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今見ると文字情報がぎっしりなのが印象的です。テキストが主体で絵は従だったのです。少なくとも英語の読めるひとたちはそうやってこれを楽しんだ。一方で英語のわからない移民一世たちはこれらの英文字を飾りとして眺め、イエローくんを主としてこれを眺めた。

2021-09-30 13:48:08
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字が読めないぶん、この変な子の感情を読み取ろうとした。 今の私たちだってそうではないかな?外国のまんがをひとから貰って、字が読めないので主人公たちの表情や行動から感情の変化と持続を推測して物語を読み取っていくの。

2021-09-30 13:51:41
uroak_miku @Uroak_Miku

ニューヨークで二大通信社がまんが連載の排他的権利をめぐって法廷闘争を繰り広げるなか、主人公を「特許」と見立てて考えればきれいに処理できることに気が付き、以後、連載開始前に必ず作者と「作品とともに登場人物たちも弊社に帰属する」と書面を交わす慣習ができあがった。

2021-09-30 13:54:14
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この考え方はやがてアニメーションにも拡張された。何しろアメリカンアニメーションは新聞まんがの人気主人公を登場させることで発展した。スタジオ設立には通信社が出資し、興行での儲けはスタジオ社長にすえられた原作者のものとなり、社員たちには給与以上の配分なし。

2021-09-30 13:58:08
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新聞連載まんがへの宣伝効果以上のものを通信社は期待していなかった。映画の力で自社系列紙の購買部数が増えてくれるならば、映画館からの収入なんてうちの関与することやおまへんと鷹揚に構えた。そもそもろくに考えなかった。そういう考え方はもっともっと後世のものだった。

2021-09-30 14:01:11
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登場キャラクターは特許であり芸能人であると見たてる商習慣は法理論的には危ういところがあった。しかし便利ではあった。新聞まんが、劇場アニメーションの両方で定着していった。

2021-09-30 14:03:25
uroak_miku @Uroak_Miku

まんがキャラクターが特許だとするならば、それを象った商品を開発して商売する際にも特許使用許諾が要るってことになります。

2021-09-30 14:04:55
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この理論を明確に打ち出したのがこのひと。 pic.twitter.com/LSI4LFALyd

2021-09-30 14:05:57
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「ミッキーマウスは私の特許だよーん」

2021-09-30 14:06:21
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同時にミッキーくんは芸能人、映画スター。自分自身の人格を有する。だから手を握っていないと特許所有者のもとを勝手に立ち去ってしまう。 pic.twitter.com/ob4u9coUZ1

2021-09-30 14:08:13
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特許は売り買い可能。発明者でありながら特許を他者に奪われてしまうことだってザラ。ミッキーくんだってデザインしたのは本当はウォルトではなく腹心アニメーターのアブさんでした。 pic.twitter.com/coH9M5GVia

2021-09-30 14:12:30
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見方によってはウォルトはアブからミッキーの特許を「取り上げた」といえる。そういう後ろめたさというか危うさがあったからこそウォルトはミッキーが誰かほかのひとに手を握られるのを恐れた。

2021-09-30 14:14:13
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東京ディズニーランドにて。左の人物はウォルトの兄ロイ。ミニーマウスの手を握ることを許された稀有な人物。 pic.twitter.com/toKWDcB4Jj

2021-09-30 14:16:21
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しかしミッキーの手を握っていいのは、世界でこのひとのみ。 pic.twitter.com/eBUWnb9PLS

2021-09-30 14:17:12
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生涯の盟友で、天才ウォルトを経営面で支え続けた賢兄ロイ。しかしミッキーに触れることは許されなかったのでした。 pic.twitter.com/qziHV7TBMJ

2021-09-30 14:18:52
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「人格を有する特許」となったことで、まんが→アニメーション→キャラクター商品 への理論化が容易になった。

2021-09-30 14:21:29
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もうひとついうと「人格を有する特許」となったことで、キャラクターはコミックストリップにおけるコマからコマへの連続性を保証するものとなった。 pic.twitter.com/4ZaPLbXp1Y

2021-09-30 14:23:30
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本格的に論ずると長い長いお話になってしまうので今はここで切り上げますが、この流れを理解できれば、ゴルゴじゅうぞうの正体もよくわかるようになるのです。

2021-09-30 14:24:43
uroak_miku @Uroak_Miku

さいとう先生はアメリカンなキャラクター理論を、理解はしていなくても使いこなしてはいたのですよ。しかし軸足は日本国内法や判例に置いていて、ゴルゴをよその誰かに連れ去られる恐れがないこともわかっていた。

2021-09-30 14:33:57