- mocharn3rd
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「何が"霞突き"や」 熹一は突きを打ち払っていく。 熹一の攻撃的捌きが、敵の突きをより遅くしていく。 「お前はその使い手のことを考えた事があるのか。技の名前に込められた意味・意図を考えているのか」 熹一は全く攻撃をしていないが、捌いた動きで敵の腕が脹れていた。
2021-11-18 06:02:17「ぐうっ」 一度、熹一は構えをフラットに解いた。 「見せたるわ。これが本物の"霞突き"や」 パパパパパパパパ、と肉が弾ける音がした。 熹一の拳が全てクリーンヒットしている。 膝から敵は崩れ落ちた。 適当な布で縛って身動きを封じる。 「灘神影流捕縛術、ってな」
2021-11-18 06:02:26熹一は酒場にいた。 ドクター、ブレイズ、ノイルホーン、といったロドスの古株と飲んでいたのだ。 それもブレイズが熹一とレッド・ライオットの闘いを見て惚れ惚れしたことと、派手に暴れる熹一の姿を見たノイルホーンがドクター経由で誘ったためである。
2021-11-18 06:02:50熹一はブレイズの姿を見ていた。ケルシーと同じく猫のような耳を持つが、ケルシーよりは頭頂の耳がやや長い。例えるならば、サーバルキャットを青黒くしたようなもので、そのまま長い髪を流していた。
2021-11-18 06:03:05対してノイルホーンは仮面をつけた高身長の男だ。筋肉質な重装オペレーター。日によっていろいろな仮面をつけており、金髪を割くように額から立派な角が生えている。 (鬼ってそんな多くないみたいやけど、ホシグマさんのも立派な角やったな)
2021-11-18 06:03:18まずはビールということで4人とも頼んでいた。 「そういや外でこうして飲むのも久しぶりだな」 ノイルホーンが口を開き、ブレイズが後を継ぐ。 「最近は忙しかったからねえ」 ドクターはお冷を傾けながら言った。 「ノイルホーンはちょくちょく出ていたようだが」
2021-11-18 06:03:38「ドクター、仮面のままで飲むんか……?」 食堂でノイルホーンが仮面のままで飲み食いしてるところは見たことがあるが、ドクターの食事シーンと立ち合ったことはなかった。 「こういうのは慣れだよ」 「慣れ」 そう言われると返す言葉もなくなる。
2021-11-18 06:03:48ビールで乾杯し、食事が出てきて、思い思いの注文をする。 熹一は酒にはゆっくり口をつけていた。 ロドスに来た直後は一文無しで、当座の服と食が保証された。住はロドスだ。しかし自由になる金がなかった。 それがこうして外飲みできる程度には懐が温まっている。
2021-11-18 06:04:01「ロドス様様やなあ」 「おっキー坊、しみじみしてどうしたの」 ブレイズがニヤニヤしながら訊いてくる。 「下手したら刑務所にでも入っとったところなのに、助けてもろた上に働けて衣食住が保証される。助かるな~と思ったんや」
2021-11-18 06:04:14ノイルホーンが度の高そうな茶色い酒の入ったグラスを上げ、ドクターはサボテンの麻辣炒めを口にしていた。 「水くせえよキー坊」 「うんうん」 「いやあ、ワシも酔いが回ったか」
2021-11-18 06:04:37「下戸には見えないけどな~?」 「ブレイズ、あんまり飲ませようとするのはアルハラだよ」 「そんなんじゃないよ~……って本当に呑んでる? 遠慮とかじゃなくて」
2021-11-18 06:04:42ブレイズは熹一のジョッキを指さした。ブレイズは1杯目が終わって2杯目に行こうとしていたが、熹一は半分にいったかどうかだった。 「遠慮とちゃうで。ワシはゆっくり派なんや」 熹一のジョッキのとなりにある、お冷の減りをブレイズは見ていた。 「健康的な飲み方だね」
2021-11-18 06:04:55「私も水分ちゃんととってるもん」 「ブレイズはそれくらいでいいのかもしれない」 「たくさん水飲んでも冷えには縁がないからね~」 ひらひらと周囲に手を振るブレイズから、熱気のようなものが熹一に届いた。ブレイズのアーツの、ちょっとした操作だった。
2021-11-18 06:05:15「ビールがぬるくなるからやめてェな」 「ごめんごめん。ホットドリンクが冷えたら温めてあげるよ」 「宴会芸のひとつなんだぜ」 「ひとつ、というと」 「あーノイルホーン! ネタばらししないでよね」 「わかってるって」
2021-11-18 06:05:26(ノリのいい二人なんやな。ドクターはしゃべらないわけやないが、ゆっくりする方が趣味らしい) 熹一は山や海、風景を見ながら飲んだり、風情を味わいながら飲むことがあった。祖父の金時は毎晩というわけではないが飲んでいて、父・静虎は飲まないが飲めないわけではなかった。
2021-11-18 06:05:42灘・真・神影流の特訓合宿のコースの時も、弟子によって飲める飲めないがあった。晩飯の際は飲む者が各自用意など色々工夫したものだ。
2021-11-18 06:05:48「ええな、ワシはビール瓶の首を指で切るとかそんくらいや」 ブレイズが目を大きくして。ノイルホーンが硬直して見てきた。ドクターは冷静に言った。 「キー坊、それは十分すごい芸だから」 「そ、そう?」 熹一は頭をかいた。
2021-11-18 06:06:01しばらく飲み食いしていると、熹一のズボンのポケットが振動した。最近購入した携帯だ。 断りを入れて席を外し、店外に出る。 「こちら熹一」 「こちらチェン、キー坊いまいいか?」 「酒入ってますけど、それでええなら」
2021-11-18 06:06:10「緊急性はそれほどではないがキミには重要度は高いと思う。灘を名乗るゴロツキが現れた」 「なんやて」 「そいつは大柄で、素早い拳と回し蹴りを得意としているという。心当たりは?」 「……それだけだとなんとも言えんな。モンタージュとかはないんか」
2021-11-18 06:06:19「画像をメールで送る。少し待ってくれ」 いったん電話が切られる。 「こんな時間まで仕事しとるんかチェンさんは……」 ぼやいているとメールが届いた。いくつか人相画がある。 「誰やこいつら……うちの親族にも弟子にもおらんわこんなん」
2021-11-18 06:06:36再度チェンからの着信が来る。 「はい熹一。……全然知らん連中や。あ! ワシが忘れとるだけかもしれんけどなっ」 「そうか。念のため後日うちに来てくれないか。監視カメラの映像など編集して用意しておくから」 うっかり自分が部分的記憶喪失設定なのを忘れるところで、慌てて演技した。
2021-11-18 06:06:53チェンはとくに気にもとめてないようだった。 「はいな。お疲れさん」 「こちらもお楽しみのところすまなかった。またな」 通話を切る。 「……すっかり酔いが冷めてもたわ」 さっさと店内に戻って、宴を再開した。
2021-11-18 06:07:07「すまないねキー坊、龍門とは協力関係で」 「構わへんで」 軽く頭を下げるドクターに、熹一は手をひらひらさせて応えた。 「飲みなおしだね! キー坊何頼む?」 席を外している間に、熹一の麦焼酎はカラになっていた。
2021-11-18 06:07:19「……」 「それはブレイズが飲んだ」 熹一はブレイズを見つめると、ブレイズは悪びれない笑顔で言った。 「居酒屋で席を外してる間に薬とか知らないうちに盛られることがあるからね、気を付けないと」 「それ普通女子が気を付ける側ちゃう?」
2021-11-18 06:07:29