第四話『結婚式』

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葬式 @A__ICR

失われたものは返ってこない。

2021-12-04 22:01:42
葬式 @A__ICR

どれだけ対価を払おうと、決してすべてが元通りになるわけではない。

2021-12-04 22:02:13
葬式 @A__ICR

が、それを悲しむこともない。 むしろ好都合なのである。

2021-12-04 22:02:47
葬式 @A__ICR

叩きつけられた紙を雑に捲りながら、喉の奥でくつくつと笑う。こんなに愉快なことは未だ無かった、そんな心地だ。

2021-12-04 22:03:25
葬式 @A__ICR

……ほとほと愛想が尽きたのだ。 祈ることしか脳がない人間どもめ、まったく自分しか見えていないくせに、よくぬけぬけと愛がどうだのと述べられる。

2021-12-04 22:04:04
葬式 @A__ICR

そんな思いで仕返しを考えていたところの朗報だった。 だからぐらついたところを一思いにぶち壊した、それだけのこと。

2021-12-04 22:04:41
葬式 @A__ICR

責任はこのたなごころにあるだろうが、そんなもの今更どうでもいい。 どうせ終わるんだ、やり残したことをやりきって、あとは全員で寝てしまおう。

2021-12-04 22:05:16
葬式 @A__ICR

静かになった研究所がなんとも心地良い。 望んだ終末である。

2021-12-04 22:05:47
葬式 @A__ICR

しかし案じることはない。 いつか、必ず、

2021-12-04 22:06:20
葬式 @A__ICR

「──説明は以上です」

2021-12-04 22:07:30
葬式 @A__ICR

「え?みじか」 「結局ここってどこぉ……?」 ベンチにふたりで座らされ、話を聞かされること……わずか5分程度。

2021-12-04 22:08:11
葬式 @A__ICR

「これ以上の情報をお教えしたところで、意味がありませんので」

2021-12-04 22:09:02
葬式 @A__ICR

……もっと状況説明をされるかと思いきや、めぐみんから聞かされたのは、 「ちいちゃんは別の場所にいる・外は危ない・やりたいことやっときな」 の3つぐらいだった。 pic.twitter.com/6Iz6KmYR79

2021-12-04 22:09:58
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葬式 @A__ICR

そう、しゅーこ……もといねうちゃんについての説明がない、のだが──

2021-12-04 22:10:30
葬式 @A__ICR

あいにく、おれは色々知っているのだ。 なんでこの子が生きてるのか、とかは、思い当たる節まみれなのである。 ほんとう、節しかない。

2021-12-04 22:10:59
葬式 @A__ICR

むしろ、この状況に面してめぐみんが何を思っているのかが一番わからなかった。

2021-12-04 22:11:28
葬式 @A__ICR

で、当のねうちゃんの記憶は……だいぶ昔に戻っているらしい。ここがどこなのかわからないようだった。 ねうちゃんがしゅーことして生きていた期間、が抜け落ちているのだろうか。

2021-12-04 22:12:02
葬式 @A__ICR

それが蘇生ではない他の原因で引き起こされている可能性も、 ──まあぼくらのようなこともあるから切り捨てられないけれど。

2021-12-04 22:12:36
葬式 @A__ICR

「てか白衣どこやったの」 「今尋ねるのがそれですか……。……別の場所にあります、少し事情があったので」

2021-12-04 22:13:20
葬式 @A__ICR

適当に話を振れば、面倒くさそうに溜息をつかれた。調子はいつもと変わらないだろうか。 少し間を開けてから手に持った書類をぱらぱらと確認したのち、めぐみんはおれに手招きをした。

2021-12-04 22:13:56
葬式 @A__ICR

立ち上がりかけたねうちゃんに対してちがう、と言うふうに首を振り、そのまま部屋の端までスタスタと歩いて行ってしまった。 しかたがないのでぼくはその後ろをついて行く。

2021-12-04 22:14:28
葬式 @A__ICR

それなりに広い温室の隅っこ、黒く萎んだ花が顔を並べている花壇のそばでめぐみんは立ち止まった。 それを見て一緒に立ち止まるおれへずい、と何かを押し付ける。

2021-12-04 22:15:18
葬式 @A__ICR

「わ、なに、なに」 「……見てわからないか?」 真っ赤な液体の満ちた3本の注射器。 今のぼくには、それがなんなのか、彼の言う通りに見てわかる。

2021-12-04 22:15:50
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