ポエム24 4 『ラジオ』篇 (2011/9/4)
ヘッドフォン越しにおはようとおやすみを。くだらない話や今日あった嬉しかった事。すらすらと淀みなく耳を撫でる声。本をめくる指を止めて目を閉じれば世界にはふたりきり。電波の向こう側のあなたと溶けあうように同調していく。深夜0時スタート、あなたとぼくだけの秘密のラジオ。 #poem24
2011-09-05 00:00:09壊れたラジオは耳障りな高周波の音をただただ発する。少しだけ君に似ていると、貴方は嗤った。 壊れたわたしは不快な短い言葉をただただ発する。少しだけ僕を苦しめるんだと、貴方は泣いた。 (すきよ。)(その一言を繰り返しているうちに貴方を所有出来たような、気がした。) #poem24
2011-09-05 00:00:11ゆらゆらと水面のように揺れる画。 ざわざわと海鳴りのような音。 頭の中には壊れたラジオ。 「うるさいね」 「うるさいね」 「消しちゃおうか」 「消しちゃおうよ」 ―プツン。 チューニングの合わないノイズだらけの世界。 少女の世界を守る為、少女はラジオを叩き壊した。 #poem24
2011-09-05 00:00:13かけっぱなしのラジオから、 静かに流れる音。 (ああ、これ、きみのすきな、) 悲恋、報われぬ恋を唄う。まるで。 そう思うより先に、堕ちる涙。 いま、きみもどこかで、 この曲を聴いているのだろうか。 ならば、おねがい。 (この電波に、ぼくの想いをのせて、) #poem24
2011-09-05 00:00:12レディオヘッド流して朝の身仕度しましょ。規定の三つ編み。膝丈スカート。白のハイソックス。ローファーはピカピカで完璧でしょ?iPodにはパパの青春ニルヴァーナ。ねえママ彼ったら部屋にシドヴィシャスのポスターなんか貼って野暮過ぎで別れちゃった!これが清く正しい中学生。 #poem24
2011-09-05 00:00:13背格好の似た夜たちが夜行動物みたいに素早く駆けてくのを目撃した日。そいつは往年の名曲と草臥れたポップスをすり潰して調合して、眠りに落とすための魔法に混ぜて、そっと、神妙な面持ちでベールを被せたんだ。さあ、ラジオを消して。奴はそこからきみの寝顔を狙ってる。 #poem24
2011-09-05 00:00:15約束の時間、合わせても聞こえてくるのはノイズ。あなたは何処へ行ってしまったの?あの日なくした声も体温も、全部電波のせいにして。 #poem24
2011-09-05 00:00:17僕の電波はあの子には届かない。周波数が合わないから。周波数が分からないから。僕のとっておきの唄も、くだらないジョークも、必死の叫びも、雑音に掻き消される。ちょっとで良いから、僕の電波を届けたい。そう思いながらそっと、あの子の方を覗く。あの子とぴったり目が合った。 #poem24
2011-09-05 00:00:19ずっと前から置いてある古臭い機械。使い方なんてわからない、ただ電源らしきボタンを押してみる。ノイズに混じる「アイシテ」破壊までのカウントダウン。5、4、3、2… 最後のコールは僕の目の前で。 僕のラジオは電波を受け取れません。 #poem24
2011-09-05 00:00:20ふと目が覚めた午前3時。やりかけの課題で散らばる机上。小さな箱が音を発てる。ノイズ交じりのミュージック。好奇心から箱の前、リズムをとって。メロディーを口ずさむ。さぁ、踊れ。僕にしか見えぬ小さな仲間に命じる。楽しい楽しい宴の始まり。BGMはラジオと僕のデュエットで。 #poem24
2011-09-05 00:00:21沈黙にたえられずつけたラジオが歌い出すのは恋物語。浅はかだと笑えたらよかったのに歌われる少女はまるで貴方に出会った頃の私。フロントガラスにうちつける雨を凝視し涙は回避できたのに無意識に膝の上で握っていた手に貴方が触れたせいで視界がぼやけた、 ――どうしてくれるの #poem24
2011-09-05 00:00:21小島慶子キラ☆キラの詩。月曜日。慶子にビビるな!ビビる大木!火曜日。フリーダム過ぎ!ヒドカワこうたりん!水曜日。DJ頂上決戦!がなれ宇多丸!噛み付け慶子!木曜日。大人になっても小学生!職業はピエール滝!金曜日。最後にして唯一の良心!水道橋博士! #poem24 #kirakira
2011-09-05 00:00:21聞き取れないのは愛の形、赤く染まった頬を想いながら、狭い空間に反響する音に溺れた。ノイズの中に、君の温もりを手探りで辿る。指先が弾き出したメロディで、目蓋の裏側を彩るために。 #poem24
2011-09-05 00:00:23初めて親にねだって買って貰ったラジオ 今ではラジオよりも、もっと小さな機器で音楽が聞ける でも気づいたんだ このラジオが奏でる音楽が一番良い音 #poem24
2011-09-05 00:00:24田舎道を車で走らせ感傷的な気分に浸る。助手席に座る彼女が、いつもニコニコして聴いていたラジオが流れる。「あ…」突如流れ出した歌は、彼女との思い出の曲。その曲をBGMにパーソナリティーが読みだした手紙には、たくさんの愛を感じた。ラジオネームは彼女の名前と同じだった。 #poem24
2011-09-05 00:00:27@null 「入りが悪いな。」 何kHzに合わせれば、君の声が聞こえるのかな。 「聞こえていますか?」 何kHzで伝えれば、君の心に伝わるのかな。 僕らは「それ」で、同時にMC。 #poem24
2011-09-05 00:00:28もうずれてしまった2人の気持ちを合わせることは容易では無いのかな。ノイズに掻き消されたきみの声はもう僕には聴こえないんだ。だからあの日不意にきみが口ずさんでいた曲をリクエストするよ。この想いを電波に託すんだ。どうか届きますようにと。このジングルが鳴り終わったら。#poem24
2011-09-05 00:00:30狂ったビートでシスター踊り狂ってる。煙草を噴かしてタイガーリリィは媚を売ってる。ラジオは矛盾な憂いを怒鳴り続ける。黒いスリップの黒い羽根生えた君は鉄塔の上。此処から出たことない僕は悲劇なんて知らない。マダムの寝息を見計らってウィスキーかっぱらい君の横で欠伸する。 #poem24
2011-09-05 00:00:30砂嵐 ノイズ つまみを捻っていじってみても 聞こえてくるのは雑音で ぶん投げてぶち壊した。 「こんなものに頼るから 「いつまでたっても遠回り 走り出した深夜0時 君を抱き締めて言うんだ。 「ごめん、好き。」 #poem24
2011-09-05 00:00:34バラバラのラジオが目に映る。あぁ、直さなきゃ。ネジから順番にひとつずつ。赤く錆び付くネジ回しで回して廻してマワして。ほら、直ったよ。次は何にしよう。ぴちゃり、足に赤が付く。あぁ、先に君を直そう。用意する物は針と糸。さて始めよう。( 狂気の沙汰を見守る無音ラジオ ) #poem24
2011-09-05 00:00:34ドライバーでこじ開けた。ぐちゃぐちゃの配線は僕の頭の中みたいに絡み合う。飛び出たコイルは僕の頭の中みたいにぐるぐる回る。一つ一つに意味があるのだろう。どうでもいい。どうでもいい。 超短波は流れない #poem24
2011-09-05 00:00:35ラジオを聞くことを好んでいた頃が懐かしい。深夜ラジオを聞きながら勉強し、学校を休んで昼前のFMを聞くのが好きだった。あの頃私はもっと孤独で、もっと純粋で、もっと足掻いていた。濁った白は波打つのをやめ、泡すら立たない凪いだ海。でもラジオを聞くと少しだけ、波が戻るの。 #poem24
2011-09-05 00:00:38メーデーメーデー。思えば遠くへきてしまった。ここがどこなのかも分からない。君という太陽に近づきたくて、どこから昇るのか確かめたくて、船を進めてきたけれど、どうも遭難してしまったみたいだ。アテになりはしない羅針盤を捨て、僕はただ君の名を呼び始める。メーデーメーデー。 #poem24
2011-09-05 00:00:39上から下へ、下りて上ってそして上へ。人一倍波長の長いぼくは、ゆっくりゆったり飛んでいく。ゆるゆるするする人混みを通り抜けては、誰にも出会わずぶつからず。それでも誰かにこの声を聞いてほしいと、弱いエネルギーを吐き出し続けて。 ラジオ波に託した思い、いつ君に届くかな。 #poem24
2011-09-05 00:00:48