アシッド・シグナル・トランザクション #7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバッ……アババッ……」痙攣するミスティカルをそのまま腕の力で吊り上げたニンジャスレイヤーはその場でキリモミ回転！「イイイイイヤアアーッ！」砲丸投げめいて斜め上に投げ上げた先には、空中から襲い来るモーブレイド！「イヤーッ！」モーブレイドは切り払った。「アバーッ！」　18

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

真っ二つになって吹き飛んだミスティカルの体表に、赤黒いノイズ幻影の片鱗がちらついた。腕を突き出すザナドゥの目鼻から過集中の血が流れ出した。モーブレイドは己が斬った相手がニンジャスレイヤーではない事実をコンマ１秒で悟りながら、淡々と二回転目の斬撃で襲いかかる！「イヤーッ！」　19

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは薙刀をブリッジ回避！地面に手をつき、逆立ちしながら蹴る！「イヤーッ！」モーブレイドは繰り出し終えた薙刀の柄の先端で突き返す！ニンジャスレイヤーは蹴り足の勢いに任せ、螺旋回転しながら薙刀のボー・ツキを絡みつくようにして回避！両者間合いを離す！　20

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハハハハッ！」モーブレイドは笑い、薙刀を斜めに下ろす。隙の生じぬ構えで間合いをじりじりと詰めにゆく。ニンジャスレイヤーは地面に爪を立て、モーブレイドを見上げる。マフラー布がブスブスと音を立てて沸騰し、燃え上がる。バスカヴィルは犬頭の火で遠隔射撃の構え！そこに桃の木が生える！　21

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チイーッ！またか！」バスカヴィルは困惑した。大輪の花を無数に咲かせ、ネオンの果実を無数に実らせる幻影が、彼の攻撃を阻むのだ。「アンタ、何をやってンだよ！」ザナドゥが声を飛ばした。「見た感じ、カネ目当ての雇われなんだろ？ナメやがって。ネオサイタマがこんなになってンのによ！」　22

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「落書き屋の分際で、ゴチャゴチャ命乞いをぬかすな」バスカヴィルは声の方向に腕を向け、撃った。BOOOOM！だがやや逸れた地点から再びザナドゥの声！「雇い主の狙いも知らねえクセしやがって。セトとかいう野郎の手下みてえに、お前も命かけられンのか？」BOOM！BOOM！バスカヴィルは射撃で応えた。23

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネオン桃が爆ぜ、光る果汁がヤナギ花火めいて飛び散り、踊る天女を幾つも作り出した。「俺は命賭けるぜ」ザナドゥは必死にペイントの幻影を生み出し、なお言葉を続けた。「俺がやる。やってやるよ。自分で決めた事、ビビって諦めるとか、ねえから。何だかわからねえ奴に雇われてるテメエと違うぞ！」24

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーハハハ……いい度胸だな！」バスカヴィルは腕の犬サイバネのエネルギーを充填し、不規則に生じる幻影に向けた。「お前を殺ればカネ！カネは簡単だ！イヤーッ！」BOOOM！BOOOM！BOOOM！BOOOOM！火球連射！連射！そして爆発を背後に、ニンジャスレイヤーとモーブレイドは再び切り結ぶ！　25

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」モーブレイドの薙刀攻撃は自在だ。長距離を薙刀刃、近距離を柄の打撃と蹴りでカバーし、ニンジャスレイヤーに絶え間なく仕掛ける。ニンジャスレイヤーはモーブレイドの動きにかろうじて対応する。かろうじてが、徐々に、確信的になる。　26

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BOOOM……BOOOM……バスカヴィルの火炎爆発の閃光と轟音を横に感じながら、ニンジャスレイヤーは今や、モーブレイド唯一人の動きに集中している。ザナドゥのジツ、力の程を、彼はだいたい理解した。ザナドゥがバスカヴィルを引き付けられる時間がそう長くないとしても、決めるには充分だ。　27

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」カラテの機が満ちた。モーブレイドが仕掛けた。頭上で振り回した薙刀で、踏み込みながら薙ぎ払う！ニンジャスレイヤーは上体をそらし、スレスレで回避する。眉間から数コンマ離れた空間を致死の刃が通り過ぎる。モーブレイドは手首を返し、そこからおもむろに突き攻撃を繰り出す！　28

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「……イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは致死のつきを、えびぞりになりながら躱し、右手を前に突き出した。放たれた黒炎の舌が、モーブレイドの薙刀の柄を、モーブレイドの腕を、這い登った。「……グ……」フックロープの鉤がモーブレイドのメンポに喰らいついた！「グワーッ！」29

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは決して致命の一撃たりえない。だがモーブレイドが怯んだ瞬間、メンポに喰らいついたフックロープは、瞬時にニンジャスレイヤー自身の身体を引き寄せていた……モーブレイドの眼前に……「イヤーッ！」「グワーッ！」頭突きがモーブレイドの顔面を割り、吹き飛ばす！　30

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

水平射出めいて吹き飛ぶモーブレイドが一瞬、空中で留まる！ナムサン、ニンジャスレイヤーが腕に力を込め、吹き飛ぶモーブレイドに喰らいついたままのフックロープを……引き寄せたのだ！「グワーッ！」戻ってくるモーブレイド！拳が……待ち構える！「イイイイヤアアアーッ！」「アバーッ！」　31

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツ！モーブレイドの頭部が拳を受けて吹き飛び、ハイクを詠んだ。「セト神よ、お膝元に参ります」そして爆発四散した。「サヨナラ！」ニンジャスレイヤーはザンシンする間もあらばこそ、すぐさま走り出し、犬の炎を撃ちまくるバスカヴィルのもとへ瞬時に到達した。「イヤーッ！」「グワーッ！」32

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

飛び膝蹴りを受けたバスカヴィルは、ニンジャスレイヤーの膝で地面に後頭部を押し付けられ、擦らされ、火の痕をまっすぐ生じながら滑った。ニンジャスレイヤーはバスカヴィルを押さえつけたまま、チョップを振り上げた。「貴様もハイクを詠むか」「……マッタ……！」バスカヴィルはもがいた。　33

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カ……カネで雇われた。俺は」バスカヴィルは犬の頭を畳み込み、手のひらを見せてマッタした。「カネは最高だ！他の事なんて知ったこっちゃねえ。俺はカネの為に戦う。だが……」「それが貴様のハイクだな」「だが、カネより大事なものがひとつある！俺の命よ！マッタだ！許してくれ！」　34

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー＝サン！」ザナドゥが駆け寄った。ニンジャスレイヤーはザナドゥを見た。バスカヴィルは呻いた。「恩には報いる。命があり、カネが入らんのならば、次に生きてくるのが恩だ。そうだろう」ザナドゥは顔をしかめ、首を振った。ニンジャスレイヤーは立ち上がり……「イヤーッ！」　35

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ！」ニンジャスレイヤーに蹴られたバスカヴィルは廃材の山に向かって吹き飛んだ。KRAAASH！ガラガラと廃材が崩れ、痙攣するバスカヴィルにのしかかった。ニンジャスレイヤーとザナドゥは互いを見た。ザナドゥは頷いた。先導するように走り出した彼を、ニンジャスレイヤーは追った。　36

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

緑に呑まれたネオサイタマのビルからビルへ飛び渡る、ふたつの色付きの影。輝く雲の尾を時折吐きながら。煌めく雲と桃の鱗。ポンポン・ビルディング上空のオリガミを中心にした、それは巨大な龍の構図だ。緑のネオサイタマは黄金立方体の支配下にあった。だが、巨大な龍が見上げるのはオリガミだ。　37

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「イヤーッ！」彼らはマネキネコ型ガスタンクの上に着地し、生まれたものを振り仰ぐ。龍の陰になった低層ビル群を覆っていた緑がほぐれ、萎び、後退してゆくさまが、遠目にもはっきりとわかった。ザナドゥは手を庇にそれを眺め、感嘆の声を上げた。「見ろよ……言った通りだろ……！」38

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザナドゥは遠く、ビル屋上でセイケン・ツキを繰り返していた市民が我に返り、おぼつかぬ足取りで屋内に帰ってゆくさまを見て、ニンジャスレイヤーの背中をドンと叩いた。「……そう……だな」ニンジャスレイヤーはほとんど呆然として、呟いた。「こんな事があるのか」「あるんだから、こうなんだろ」39

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザナドゥはニンジャスレイヤーを見た。「オリガミを、俺のペイントが拡張する。逆に言や、オリガミがなきゃ意味がねえんだよ。俺が考えてるのはよ……ネオサイタマに点在してるお前のオリガミを……うまく、こう……俺のペイントで繋いで……もっと広い地域に、構図が行き届くようにする。わかるか」40

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはザナドゥを見据えた。そして答えた。「わかる」ザナドゥは勢い込んだ。「わかるな？オリガミが遮られない場所にしか、力は届かねえ。だけど、オリガミはそうあちこちにねえ……だろ？」「ああ」「オリガミを作るには、どうすりゃいい？」　41

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは己の拳を見た。「カラテだ。さだめられた敵と戦う。その結果として、おれのオリガミが出来る……」彼は沈思黙考し、やがて言った。「……どこに作る」「作れるのか」「ああ。作る」「……」ザナドゥはネオサイタマを見渡す。緑の摩天楼群の向こう、なお高く突き出す巨大な影。　42