アシッド・シグナル・トランザクション #8
互いのフックロープは互いの手首に絡みつき、互いを引き寄せあった。「「イヤーッ!」」彼らは切り結んだ。X字の炎痕を空中に焼きつけ、ジグラットの斜面に着地した。『カスミガセキ・ジグラット!』サツバツナイトを通し、セトが声を発した。『カリュドーンの獣よ!あの胡乱者と何を企んでおる!』 44
2022-07-29 00:02:24「貴様がセトだな」ニンジャスレイヤーはサツバツナイト越しに答えた。「ここまでおれをナメくさった奴に、おれが何をするか。できない想像でもしておけ。遠くから見下ろしている貴様に出来る事は、それがせいぜいだろう」『……!』第三の目が燃え上がった。サツバツナイトは頭を押さえた。 45
2022-07-29 00:09:08「セト=サン。オヌシの企みは必ず潰す。どんな手を使おうともだ」サツバツナイトは全身にカラテを漲らせ、己を支配するセトに向かって言った。セトは呪印に力を注ぐことで応えた。サツバツナイトはしかし、悲鳴ひとつ上げなかった。……その時、鐘が鳴った。 46
2022-07-29 00:16:15「時間切れのようだな……セト=サン……!」サツバツナイトが低く言った。そしてニンジャスレイヤーからフックロープを剥がし、ジグラットの斜面を、一歩後退した。然り。この鐘の音は、狩りの開始時間だ。カリュドーンの掟は、当事者ではない狩人が領域に居残る事を許していない。 47
2022-07-29 00:20:12獣たるニンジャスレイヤーを狩る資格を有するのは、狩人メイヘム。サツバツナイトは額を押さえ、もう一度ニンジャスレイヤーを見る。ニンジャスレイヤーは短く頷き、踵を返した。彼はジグラットの斜面を昇り始めた。 48
2022-07-29 00:25:10ジグラットは極めて巨大な建造物だ。それは複合建築の化け物であり、フジサンじみた斜面は幾つもの踊り場を有し、誰も機能停止させられないホロ旗が蛍光色の痕跡をいまだ閃かせる。異色の空には01の風が吹き、超自然の黒い稲妻が閃く。そして黄金立方体はひときわ輝きを強めて自転する。 49
2022-07-29 00:32:50一歩一歩、ニンジャスレイヤーは、己のカラテを確かめるように、着実に、ジグラットの斜面に築かれた階段をあがってゆく。黒い稲妻が閃くたびに、過去、ここで行われたイクサの痕跡が網膜に焼きつく。殺し合い、爆発四散していったニンジャ達の。 50
2022-07-29 00:37:04ザナドゥも、このジグラットの何処かに来ている筈だ。彼は彼自身の身を守らねばならない。今からニンジャスレイヤーがすべき事は、敵を倒すこと。挑んでくる狩人を返り討ちにし、オリガミを生み出すこと。そして最終的にはカリュドーンの儀式をくじくことだ。全ては繋がっている筈。 51
2022-07-29 00:39:59KA-DOOOM……。近くに黒い稲妻が落ちた。照り返しを受けて、ジグラット上方の踊り場のひとつに影が映えた。銀河めいた眼差しで物憂く見据える男は、シナリイ。ニンジャスレイヤーにオーパーツを渡し、セプク手段を示唆した、反ダークカラテエンパイアのリアルニンジャ。今回も一挙一動を見守るか。 52
2022-07-29 00:42:26そして今、ニンジャスレイヤーはジグラット反対側の斜面を上がってくる存在を、はっきりと感じ取っている。狩人メイヘム。相手もまた、彼の存在を感じているだろう。イクサが始まろうとしている。ニンジャスレイヤーは標高の高さを感じる。決闘の舞台としては、そう悪くない場所ではある。 53
2022-07-29 00:46:10階段を上がりきり、踊り場に立ったニンジャスレイヤーは、まさにそのタイミングで踊り場の反対にあらわれたニンジャを見据えた。身を覆う濃紺のマントを脱ぎ捨てると、彼女の装束には、神秘的なコブラの刺繍が施されていた。ドクノキバ。メイヘムは蛇の目を光らせ、ニンジャスレイヤーと対峙した。 54
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