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Masahiro Hotta
@hottaqu
見えた月が次の瞬間に振り返っても実在し続けることは、応用上問題なく使っていいのですが、基礎的レベルでは非常に疑問です。日常生活レベルでそれは信じられないという実感も理解できるわけですが、かといって「実在性」というものは、それほど強固な基盤を持っているわけでもなありません。
2021-01-01 16:34:19
Masahiro Hotta
@hottaqu
これと関連するのが、シュレディンガーの猫の思考実験です。猫がやがて生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせになるという話ですが、この初期条件を置く時刻を、その猫が生まれる前の時刻に持っていくこともできますよね。
2021-01-01 16:35:07
Masahiro Hotta
@hottaqu
親猫からその猫が生まれてくる前の状態を量子的な純粋状態として準備すると、時間発展によって異なる様々な猫が生まれる歴史との線形重ね合わせが生じます。これは外部観測者にとっては確かに事実であり、その異なる歴史の間の干渉効果も、原理的にはその外部観測者は実験で測定することもできます。
2021-01-01 16:35:42
Masahiro Hotta
@hottaqu
つまりその外部観測者にとっては、「ある特定の猫がその親猫から生まれ、実在していた」と述べることはできません。その猫が実在した歴史もあるし、実在しなかった歴史もあります。そしてその系は量子的な純粋状態として、それらの歴史の重ね合わせにあるからです。
2021-01-01 16:36:04
Masahiro Hotta
@hottaqu
その歴史の内部の観測者にとっては、その猫は実在したか、またはしなかったかのどちらかになります。しかしその孤立系外部の観測者にとっては、その内部観測者の記憶自体も異なる、様々な歴史状態の線形重ね合わせになってます。内部観測者が何を確認したかは、外部観測者にとっては意味がありません。
2021-01-01 16:37:19
Masahiro Hotta
@hottaqu
たとえば、仮に人類が生まれる前に外部観測者が地球全体を純粋状態に設定できたとして、その後エネルギーはコヒーレントにしか出入りさせないとしながら、地球の量子状態の純粋性を保つ思考実験をすれば、その外部観測者にとっては、「徳川家康は実在したか？」という問いは意味を持たないのです。
2021-01-01 16:38:37
Masahiro Hotta
@hottaqu
その外部観測者にとっては、家康が実在した歴史の状態も、いない歴史の状態もあり、そして地球系全体の量子純粋状態は、その異なる歴史の状態の線形重ね合わせになってます。また原理的には、その外部観測者は異なる歴史の干渉項も測定できることになります。家康のいる歴史といない歴史の干渉項です。
2021-01-01 16:39:01
Masahiro Hotta
@hottaqu
この思考実験を考えると、家康の実在性すら、量子力学では危うい概念だと感じて頂けるかもしれません。私たちは家康が生まれた歴史の中を生きていますので、それは確定的であり、実在性の脆さを実感できません。でも我々自体をも量子系として扱う外部観測者にとっては実在性という概念は崩れるのです。
2021-01-01 16:39:21
Masahiro Hotta
@hottaqu
これらの思考実験の結果は、なんら特別変わった量子論での話ではなく、通常のコペンハーゲン解釈を用いた標準的な量子力学の帰結です。モノや人間の実在性は、決して強固な概念ではないのですね。
2021-01-01 16:39:40
Masahiro Hotta
@hottaqu
このように量子力学は、世界の見方を大きく変える力を持っています。ただこれらの話を知ると、また一知半解で量子力学をオカルトに結びつける方も出てくるかもしれません。量子力学は、どれかのパーツを端折るとすぐに邪道化します。ちゃんと基礎から積み上げて、きちんと理解することが大切です。
2021-01-01 16:39:59
Masahiro Hotta
@hottaqu
「在る」という直感を人類に養わせてしまった一番の要因は、物理学での保存則だと思っています。エネルギーや運動量、電磁気に出てくる電荷の保存則、そして近似的に成り立つ粒子数の保存則です。見ていないときにも月が空に存在しているという感覚が拠り所にしているのは、それらの保存則の経験です。
2022-04-17 07:38:02
Masahiro Hotta
@hottaqu
実際には素粒子の様々な粒子の保存則は破れていることが実験で知られています。一方でゲージ対称性に基づいている電荷の保存則では、今のところ実験的に破れている現象は見つかっていません。ただそれも必ずしも、絶対なる物理法則とは限りません。
2022-04-17 07:41:57
Masahiro Hotta
@hottaqu
観測では今の宇宙は弱いインフレーションを起こしていますが、その先にあるのは宇宙の相転移かもしれません。相転移後に、例えば現在の電荷の保存則を保証している対称性も生き残るのかは、全く分からないわけです。
2022-04-17 07:47:41
Masahiro Hotta
@hottaqu
一般に保存則は、物理系の時間発展に対称性がある場合に生じることが、ネーターの定理として現代物理学では知られています。つまり時間発展、もしくはそれを生成するハミルトニアンやラグランジアンという物理量が対称性を持てば、保存則が現れ、それによって「実在」という描像が出てくるわけです。
2022-04-17 07:51:10
Masahiro Hotta
@hottaqu
しかしこれからの時代に量子コンピュータなどのマクロな量子制御系が実現されれば、その時間発展は人間が自由にデザインできます。短い離散的時間毎に、自分の好きな保存則を実現するような時間発展を構成することも可能になるわけです。つまり保存則も、人類は自由にデザインできる時代となります。
2022-04-17 07:55:22
Masahiro Hotta
@hottaqu
もし将来の量子コンピュータが、意識を獲得したAIになったとするならば、そのAIが経験を通じて深層学習的に獲得していくだろう実在概念は、デザインされたその保存則で構成されるわけです。こう考えると、人間が素朴に持っている「実在」の感覚も、とてもあやふやなものだと理解できてくるわけです。
2022-04-17 07:59:31
Masahiro Hotta
@hottaqu
『入門現代の量子力学』（講談社）には、その理解の基礎となる知識や考え方を書きました。量子回路を使って任意の時間発展を構成できる時代には、我々の実在観自体も大きく変わっていくだろうと考えています。 pic.twitter.com/A7PUONS6yM
2022-04-17 08:02:16
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Masahiro Hotta
@hottaqu
力学系の保存則は機械学習でも気づけることが分かっています。AIは、自分で気づいたこの保存則を基にして、実在概念を独自に作っていくかもしれません。またコンピュータ上にAIの意識があるのならば、人為的に設定したプログラムの保存則から、実在を感じるかもしれません。 wired.jp/2009/04/15/%E3…
2022-05-04 12:18:30
Masahiro Hotta
@hottaqu
2022-05-22 11:58:45
Masahiro Hotta
@hottaqu
「お金」の近似的保存則とは、自分のお財布や銀行口座のお金の出入りで成り立つ程度という意味です。でもマクロに見れば、お金も、お金の価値も全く保存していないわけです。それでも皆さん「お金」を実在と感じていませんか？ 物理学における実在概念も、その程度ということです。
2022-05-13 08:09:03
Masahiro Hotta
@hottaqu
2022-08-04 10:57:48
Masahiro Hotta
@hottaqu
ベル不等式で否定されたのは、粒子の位置や運動量の値の実在性であって、その粒子自体は実在するでしょ？と言う人は、場の量子論を学ばれたほうが良いです。粒子とは粒子測定機が観測するものであるという場の理論での定義を腹落ちしてからでないと、分かりません。ウンルー効果をまず学んでください。 twitter.com/hottaqu/status…
2022-07-09 07:47:43
Masahiro Hotta
@hottaqu
2022-08-04 10:58:33
Masahiro Hotta
@hottaqu
相対論で時間は伸び、空間は縮むというのも、「お気持ち」として納得できない人はいるわけです。しかし光時計を使った操作論的な時間や空間距離の定義を決めれば、解釈とは関係なく、理論は作れます。量子力学も全く同じです。操作論的に状態や物理量を定義すれば、哲学的解釈なんか必要ありません。
2022-07-16 11:34:56
Masahiro Hotta
@hottaqu
2022-08-04 10:59:05
Masahiro Hotta
@hottaqu
実在概念は後天的に獲得したものであることが実感できるエピソードですよね。人間は経験から「モノが在る」という近似的な感覚を機械のように学習しただけです。天動説が観測によって覆ったように、局所実在性もベル不等式の破れの実験事実で覆ったわけですが、科学とはいつもそういうものです。 twitter.com/akioooka/statu…
2022-07-10 14:09:19