- toluna_plus
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ダウナー気味の声による次女の挨拶が済むとソウは一度みなに礼をする。 「以上にございます。それでは私は歓迎の準備がございますのでこれにて失礼させていただきます。皆さまよいお時間を」 そういうと彼女はイッコウの元から離れ扉の前にいくと振り返り今一度礼をして部屋を出て扉を閉めていった。
2022-08-10 22:34:00「それではそろそろ……」 「始めようか」 家政婦の退出を合図に方舟市市長とウシワカ三兄妹による密談が始まったのである。 SHs大戦9-3 終
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♦ 密談は穏やかな雰囲気で開始した。 「鰻薔薇の売れ行きは最近どうだい?」 「好調ですよ。市外でも取り扱い店が加速度的に増加しています。この機を逃さぬべくより山椒の香りを強化した鰻薔薇の開発に取り掛かっていますよ。この後試作品をご覧いただこうかと」
2022-08-11 22:02:00「あら、試作品でしたらワタシのところも市長に試して頂きたいものが沢山ありますわ。市長の人気にあやかって市長をイメージした香水も開発しようかという話も上がっていますわ」 「おっとそれは楽しみだね。当然許可するよ」 「……なんすか。ウチはなんもないっすよ」
2022-08-11 22:04:00だが、穏やかだったのも最初の十分程だけだった。次女アマミの言をきっかけに会議室には徐々に暗雲が立ち込めていくことになる。 「おい、市長になんて口を利くんだ」 「は?兄貴に言葉遣い指摘される筋合いないし」 「ちょっと二人ともお客様の前よぉ?」
2022-08-11 22:06:00「うるさい。こいつはそろそろ社会性ってやつを押しえてやらないといかん」 「ほどほどにね~」 市長のやんわりとした静止も虚しく一度ついた火はそう簡単に消えはしない。どころか手が付けられない程にどんどん火勢を増してゆく。
2022-08-11 22:08:00「そもそもアマミちゃん市長やあの人が来るっていう日までお化粧なしはあり得ないわよ!後でワタシが化粧してあげるからね!」 「ウチは姉貴と違って自然派なの。つか兄貴の方がどうなの?普段以上にワックスつけ過ぎで髪の毛がキラッキラの刃物みたいになってんじゃん。人でも殺すわけ?」
2022-08-11 22:10:00「何をいう。これは市長とのあの方に私の気合と感謝を見せるための誠意の現れだぞ。人殺しなどと人聞きの悪……いたぁ!?指が切れたぞ!?おいオウカ、これお前のところの製品だろう。どうなっている!」 「ちゃんと適量は書いてるじゃない。用法用途を守らない子のことまで考えてられないわよ」
2022-08-11 22:12:00あまりの険悪さに、アークがこいつら大丈夫かよと呆れ始めたところで喧噪は断ち切られる。耳にやけに甲高く響く拍手の音。それはアトイの方から響いた。 「はいそこまでー。気の済むまでやらせてあげたいところだけどこの後予定もあるだろう?そろそろ本題に入ろうじゃないか」
2022-08-11 22:14:00アトイの言った”この後の予定”というフレーズで三兄妹たちは我に返ったように見え。 諍いの手を止めアトイに向き直った。 「申し訳ございませんでした。お見苦しいところを」 「あの人を待たせるわけにはいかないものね」 「本題に入るのはいいけど……ここからの話にその子たちいてもいいの?」
2022-08-11 22:16:00その子たちとはアークとメアのことだろう。アトイは振り返るとアークたちに申し訳なさそうに言った。 「すまないがこれからしばらく席を外してくれないか?」 「え?でもごえーはどうするのだ?」
2022-08-11 22:18:00「扉の前で怪しい者が入ってこないか見張っていてくれたまえ。もし仮に中で何か起こったらミニアーク君に合図を送るからその時は介入して欲しい。君なら一瞬で可能。そうだろう?」 「あ、ああ。わかった」 釈然としないものを感じながらもアークはメアを連れて部屋を出た。
2022-08-11 22:20:00「はーあ、あんな空気で大丈夫かよこの会議」 「家族なのに仲わるそうだったのだ~」 メアと共に扉の前で鰻薔薇コーラがいかに不味かったか。帰りにサンや家族に飲ませるように買って帰ろうなど他愛もない話をして小一時間ほど時間が経過した頃だった。
2022-08-11 22:22:00「あらアーク様、メア様。扉の前にたむろしていらっしゃるということは……追い出されてしまいましたか」 右手側の階段から降りてきたソウがアークたちに気付くとどこか嬉し気な軽い足取りで近寄ってきた。 「これはチョベリグ。折角ですので家事は休憩としてソロ語りの時間としましょうかね」
2022-08-11 22:24:00「チョベ?おいおい家政婦が仕事ほっぽらかしていいのかよ」 「ご主人様方は会議中ですしあなた方が話さなければちょんバレすることはございません。それに少々ブッチした程度のことでは仕事の出来は変わりませんよ」 「ソウの姉ちゃんは何言ってるかむずかしくてわからんのだ。それで何話すのだ?
2022-08-11 22:26:00「それって三兄妹のこと?」 「ええ」 淡々とした口調でソウは話す。だがそこから先は少し様子を異にした。アークたちを試すような、疑問を提示するような声色だ。
2022-08-11 22:28:00「あなた方は彼等の間柄についてどう思われましたか」 「えーっと……ひとことで言っちまうと」 「仲わるそ~だったのだ」 そこまで聞くとソウは固い表情を大きく崩した。 「ええ、ええ!実はそうなのでございます。ご主人様方の仲はチョベリバでございます!」
2022-08-11 22:30:01先ほどまでの奇妙な氷の彫像やバグの入った機械を思わせる雰囲気を微塵も感じさせない人懐っこい興奮気味の表情でソウは語った。その代わりようにアークもメアも困惑気味で応対するしかなかった。 「お……おお~。随分雰囲気変わったなアンタ」
2022-08-11 22:32:00「かせいふがお家のこと喋っちゃってだいじょうぶなのだ~?」 「はて?家政婦には守秘義務がございますが、私はただ休憩中にソロ語りをしているだけにございます。それをどこかの誰かがミミノキしていたとしても責任の範囲にございません」
2022-08-11 22:34:00さっきからめっちゃくちゃ会話成立してると思うんだけどよ……まあいいや、独り言続けてくれ」 微妙に、いやかなり納得していないながらもアークが促すとソウは弾む声色で語り始めた。 「ご主人様方は元々とある施設に預けられた孤児なのでございます。
2022-08-11 22:36:00それがさるお方に優れた素質を見出され、経済的な援助や英才教育などを受けたことで才能が開花。彼等は学生の内から各分野で目覚ましい実績を上げるようになりました。そうしてそれぞれが得た資金を持ちより孤島にここウシワカ館を建て家族で助け合いながら生活するようになったそうです」
2022-08-11 22:38:00「仲良しなのだ~?」 「ここまで聞く感じだとそうだな。でも今はとてもそんな感じには思えねえぞ」 どうしてか、過去のトモダチとの生活を思い返しつつもアークは疑問を呈した。ソウも れを待っていましたと言わんばかりに食い気味にソロで語っていく。
2022-08-11 22:40:00「始めの数年はよかったのでございます。ですがそれぞれが大人になるにつれ徐々にイタチっていくようになっていったのでございます」 「イタ……なんて?」
2022-08-11 22:42:00