ついのべまとめ

!)閲覧注意。140文字いっぱいいっぱいに作った短文まとめ。二次創作腐向け含む。おもにpkmnです
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黒焦 @96coge

旅先の見知らぬ町は、夜に顔を変える。気づけばピンク色のネオン街に踏み込んでいた己にグリーンは舌打ちした。背後から唐突に肩を捕まれる。すくむ肩と、耳元で囁かれた声。「まっすぐ歩いて。前だけ見て。俺達には目的地があるんだと示して」「……ヤスタカ」手を引いて歩く背中に、大人を痛感した。

2012-11-02 18:01:32
黒焦 @96coge

手を取り足を取り奉仕される。撫でられ舐められ至る所に口付けされる。数刻前己が組み敷いたはずの相手を睨み下ろしてグリーンは唸った。「お前、俺に攻めさせる気ねーだろ」「ご機嫌損ねてしまいましたか。御免なさい」困ったように微笑んで、ヤスタカはなおこう宣った。「では、更に配慮致しますね」

2012-11-02 17:38:55
黒焦 @96coge

「Trick or treat?」ジムの営業時間も終了し、菓子を全て使い切ったタイミングでこれを言うのは一体どういう了見なのだろう。「俺は察しの良い優秀な部下が好きだぜ、ヤスタカ君」ああ、反則だ、と思った。元より選択肢はない。ジムを閉めた後、ヤスタカは上司の待つ執務室へと向かう。

2012-11-01 00:08:29
黒焦 @96coge

ハロウィンの夜には魔が歩くという。サカキはそんなものを信じたことはないが、出遭ってしまったものは仕様がない。子供の姿をした赤い悪魔は、サカキを見るや否やにたと笑って決まり口上を口ずさむ。逃れられない、許されることはない。サカキはポケモンに与える菓子すら持たない人間だったのだから。

2012-10-31 23:27:32
黒焦 @96coge

レッドが訪ねた其処は魔女の屋敷と呼ばれていた。「こんな夜には奇妙な客が来るもんだねぇ」ゲンガーを従え老婆は嗤う。成程、魔女に相違ない。「ポケモン図鑑なんて集めてる餓鬼にゃくれてやるお菓子はないよ!」最後に戦った時から何年も経ってるのに、その魔女ときたらちっとも丸くなっちゃいない!

2012-10-31 22:29:01
黒焦 @96coge

「Trick or treat?」この人に悪戯されるのも悪くないが、ヤスタカはどちらかといえばサービスしたい方だ。「はい、あーん」南瓜のプリンを差し出せば、しまったそう来たかと言いたげな顔が可愛らしい。甘え下手なこの上司直々に強請られたとあっては、菓子より甘く甘やかす所存である。

2012-10-31 21:26:59
黒焦 @96coge

幼い頃、悪戯するぞ菓子をくれなんて言えるわけがなかった。そんなグリーンの祖父が、今晩は珍しいポケモンを居間に浮かべている。――悪戯していたら案外菓子が飛んできたのだろうか。そう思ったのは、“異国のシャンデリア”と称されたその子が奇しくも綺麗な南瓜色だったからだ。万聖節前夜である。

2012-10-31 00:04:14
黒焦 @96coge

「寒い」季節の変わり目。服選びを間違えたグリーンがぼやくと、ふと両手を握られた。そのまま導かれた先は、部下の首筋。「冷たいですね」ヤスタカの体温は高くない。グリーンに差し出せる温もりがそこにしかなかった、だから差し出した。それだけのことなのだろう。掌中の急所から、温もりが伝わる。

2012-10-25 00:09:10
黒焦 @96coge

あの人にふられたって平気だ。次を待てばいい。ただ今はそう、少し疲れただけだ。ふと響く足音に姿勢を直すと、そこには同僚がいた。「よう、ヨシノリ」いつもの笑顔、完璧な足取りで歩き出す。それなのにそいつは歌うように、こんなおかしなことを言う。「どこへ行くのヤスタカ。そんなにふらふらで」

2012-08-09 20:12:09
黒焦 @96coge

ぼくの人生最低の瞬間は、あのくそがきの人生最高の瞬間になった。ああ、何もかもが気に入らない。煌く瞳も、誰かを思わせる戦い方も、胸に輝く永遠色のジムバッジも。雪山を降りたぼくを、あいつは殴った。そして言った。「おかえり」それはぼくの人生最高にカッコ悪くて、最高に幸せな瞬間になった。

2012-08-09 01:00:00
黒焦 @96coge

鮮血を前に俺は膝をついた。このロケット団の首領サカキ、今更血ごときで動揺するような精神は持ち合わせていないはずだった。何度も人を害しポケモンを殺してきたのだから。それなのに。俺は視界を遮るために目を閉じた。――赤。赤。赤は嫌いだ。あの日から、瞼の裏に焦げ付いたあの赤色が剥れない。

2012-08-08 00:04:36
黒焦 @96coge

ヤスタカは怖い。俺に何でも許すものだから深みに嵌りそうになる。いや、既にそう誘導されているのかもしれない。こいつは俺を堕落させたいのかと時々本気でそう疑う。「我慢しなくていいんですよグリーンさん、ほら早く」甘ったるく囁かれて脳髄が痺れる。これではどちらが抱かれているのか判らない。

2012-08-08 00:03:36
黒焦 @96coge

ぼくの人生最高の瞬間は、グリーンの人生最低の瞬間だった。この勝利はぼく一人のものじゃない。知ってたから、ぼくは感謝の気持ちでいっぱいだった。けれどもう一人ぼくがいた。目の前で崩れ落ちうなだれる蜂蜜色の髪。世界のてっぺんでぼくは彼を見下ろしていた。ああなんて、きもちがいいんだろう。

2012-08-07 00:48:17
黒焦 @96coge

「抱いて下さい」何がまずかったのか。向けられた好意に気付きながらも放置し続けたことだろうか。「……おい」「限界なんですよね」「おい、待て」「どうかお情けを、リーダー」耳に囁かれたそのふざけた台詞と裏腹にグリーンを心底怯えさせたのは、ヤスタカのその見事に据わった瞳の本気具合だった。

2012-08-07 00:47:25
黒焦 @96coge

理性的に考えれば、どう見ても罰ゲームのようなことをやらされているに違いない。それなのに眼下の部下は陶然として楽しそうである。「もういいつってんのに……」気のつく部下はやはり聞こえない振りでちゃっかりと言う。「ほめてください?」躾が行き届いているのはよいことだ。グリーンは嘆息した。

2012-07-17 01:43:14
黒焦 @96coge

とんだ犬を拾ってしまった。躾けが大変どころの話ではない。もういい、やめろと暗に睨んでも見えない振りだし、口を開いたところで零れるのは叱責にならない嬌声でしかない。「ヤスタカ……お前って、ホント、……っ」躾けてみろとでも言いたげな手管に、乗せられていると察しながらも主人は煽られた。

2012-07-17 01:10:59
黒焦 @96coge

「確かにお前、なんでもするとは言ってたが」ソファに腰掛けたまま、グリーンは足元に跪く部下を見下ろす。「いつもこんなことさせられてたの?」「前の主人のことはもう忘れちゃいました」ケロリと言って、ヤスタカは上司の前を寛げた。微笑みは健気なようで毒々しい。「ね、がっかりさせませんから」

2012-07-17 00:43:16
黒焦 @96coge

3年前、お前の体からそんなきつい人工の香りは漂っていただろうか。お前の耳にそんな金属はついていただろうか。気がつけば体が動かない。どうやれば人間を抵抗させずに組み敷けるのか、知り尽くした乗り方だった。頭上でちろりと鮮やかな赤い舌が覗く。3年。ぼくは、こんなグリーンの顔は知らない。

2012-07-17 00:26:02
黒焦 @96coge

「ああ、勿体無い」熱を吐き出し肩で息するグリーンを組み敷き、夜の生き物は恍惚と呟いた。嫌な予感しかしない。「……なあヤスタカ? お前らって、人間のなら何でもいいわけ? その、……血以外でも?」「そんなまさか」いい笑顔で吸血鬼は言った。「人間なら誰でもいいってわけじゃないですよ!」

2012-06-05 23:21:50
黒焦 @96coge

「海の香りがしますね」と港の演出に一役買えば、フンと鼻で笑われてしまった。「プランクトンの死骸の匂いだろ?」ロマンも何もないことを言うリーダーはしかし、「海の匂いってのは、日焼け止めの匂いと、姉ちゃんが作ったカルピスの匂い」このヤスタカよりも余程かわいげのあるロマンチストである。

2012-05-31 14:53:59
黒焦 @96coge

異国の港でエビの腐ったような匂いを嗅いだ。「潮の良い香りがするでしょう?」レッドは首を横に振って宿屋の主人を不機嫌にさせた。海の匂いを知らなかった。それは透明だと思っていた。海から上がった幼馴染の、少し焼けた首筋と髪から香るしょっぱい太陽。それがレッドの知るこの惑星の匂いだった。

2012-05-31 00:26:47
黒焦 @96coge

来い、と言えば尻尾を振ってついてくる。待て、と言えば耳を垂らしてしょぼくれる。「一言頂ければいいんです」壁際でそんな男が囁いた。「許可か、禁止か」長い指が明らかな意図を持ってグリーンの肌を這う。答えなければ、この指がグリーンの熱を解放することはないだろう。可愛い部下は性質が悪い。

2012-04-26 22:57:19
黒焦 @96coge

突然レッドが言い出した。「ぼくもグリーンに突っ込みたい」グリーンは決めていた。尻の貞操だけは死守すると。自然の摂理に反しているからだ――イケメンと名高い己が掘られるなど! 「お前は恋人に、自分がされたら嫌なことをし続けてたの? そんなのイケメンて言わない」それは衝撃の一言だった。

2012-04-26 22:29:57
黒焦 @96coge

会うたび傷が増えている。責めるつもりはない。男の傷痕は勲章なのだから。――レッドの場合は、特に。汚れた靴、日焼け痕、ぼさぼさの髪。「お前はいつもきれいだね。捨てられてしまわないか不安だよ」そんなこと言うくらいなら、と喚こうとしてやめた。俺達はライバルだった。どうしようもない程に。

2012-04-26 17:08:23
黒焦 @96coge

「や」一瞬声が出てしまったのは反射だ。仕方ないだろう、体の芯が熱くて、頭ン中ぐちゃぐちゃで、訳がわからねーんだから。それなのにあっさりと退いた部下に殺意すら覚える。「嫌、ですか。グリーンさん」見上げた先、憐れなその様はまるで待てを食わされた犬のようだった。誰がその手に乗るものか。

2012-04-26 00:44:14
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