ゼファカナの小話まとめ2

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

「こっち向けよ」 「嫌よ、ゼファーの方を向くと見えなくなるんだもの」 あんなに綺麗なお月様、次はいつ見られるか分からないわ。と呟いたカナは、俺に背を向けて寝転んでいる。 こいつは誰かに背を向けることはしない。寝る時も、人の居る方を向いて寝るようなやつだ。なのに今はどうだ。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

月と俺を天秤にかけて、カナは月を取った。月と俺とどっちが大切かなんて女々しい事を言うつもりはないが、負けは負け、悔しくもなる。 「ゼファーも少しこっちに寄って見てみたらいいわ！とっても綺麗よ」 月の角度と窓の位置のせいで、俺の視界には月は映らない。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

「見える位置に行ったらベッドから落ちる。それに月なんていつも見慣れてるだろ…」 「もう！いつものお月様とは違うのよ。あのね、今日のはストロベリームーンって言ってね──」 今日見えている月がどんなに希少で美しいか、カナにしては珍しく難しい言葉を交えて力説している。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

「そんなにいいのか」 その月が。 俺よりも。 「うん！少し赤みかがっていてね、苺色で、とっても綺麗で…ふふっ。それにすごく美味しそうなのよ」 ずっと俺に背を向けて、月を褒め称えるカナを見ていたら、訳も分からず苛々が募る。 ──くそっ、いつもみたいに、こっちを見ろよ。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

苛々で混乱しかけた思考のまま、思わずその肩に手を伸ばしかけた時。 「ね、だからゼファーも、少しでいいからこっちに来て一緒に見ましょう？」 肩越しにこちらを振り向いて、月の光を浴びてきらきらしている瞳でそう言った。 「…………あー、……おう」その瞳を見た瞬間、何も言えなくなって、→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

伸ばした手も、喉まで出かかった嫌な言葉も、苛々も。何もかもが吹き飛んだ。代わりに出たのは、情けないくらい呆けた了承の言葉。 「じゃあ、はいっ。ここに寝転んで……、あ！でも明日早いから、ほんとに少しよ。ゼファーがお月様を堪能したらすぐ寝ましょ！」 自分のベッドの片側を空けながら、→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

同室で眠っている他の三人を起こさぬよう、ひそひそと約束を取り付ける。 「へいへい」 俺がいつにも増して気の無い返事をしても、今のこいつは怒らない。怒るどころか、先程よりもずっと沢山のきらきらを瞳に乗せ、月と俺を交互に見る。 「見える？」 「バッチリ」 「綺麗でしょう？」→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

期待のこもったきらきらの瞳が俺を見つめる。 「…そうだな」 その瞳の中に、ありもしない月を見つけた気がして。 「すごく綺麗だ」 口をついて出た俺らしからぬ台詞に、カナは月を宿した瞳を数秒きょとんとさせて──クスクスと小さな笑い声を上げた。 「…おい、何笑ってんだ」→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

「ふふっ。安心したのよ。ゼファーもそういう所あるんだなって」 「心外だな。俺だって景色を楽しむ余裕くらいあるぞ」 良かった、バレてない。 「そうかしら？道端に綺麗な花が咲いていても、ゼファーは真っ直ぐ前だけを見ているから、殆ど気付いてないじゃない？」 くそ、こいつよく見てんな。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

「ふふふ。けど、前を見てしっかり歩んでくれるゼファーがいるから、私は花に気付けるのかも知れないわね」 その発想はなかった。全く、こいつは人をノせるのが上手い。これで狙ってないとか、どんだけ純粋培養だっての。 「適材適所で良いじゃねぇか。お前が前に出たら、みんな揃って迷子だしな」→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

そう言って、フワフワしたピンクの髪をかき混ぜる。カナはきらきらの瞳のまま、頬を膨らませて睨んできた。ぼさぼさの髪、きらきらの瞳、膨らんだ頬。 「全然怖くない。」 「ゼファー！」 やべぇ口に出てた。俺は逃げるようにカナのベッドから降り、自分のベッドに潜り込む。 カナに目を向けると→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

大きな声を出してしまったからか、両手を口に当てて、まだ俺を睨んでいる。 「だから、そんな目したって怖くないって。満喫したら寝るんじゃなかったのか？」 「…ゼファーのごめんなさいを聞くまで寝ないわ」 ガキか。いや、まだガキだったか。 「………悪かった。ごめんなさい」 子供相手だ。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

ここは大人の俺が折れるべきだろう。何たって、そう、こいつはまだ子供なのだ。そんなこと言ったらますます怒りそうだが。 気が済んだのか、小さく「よし」と言う声が聞こえ、カナは掛け布団に埋もれて目を閉じる。 「おやすみなさい、ゼファー」 「ん、おやすみ」 つられて、俺も目を閉じる。→

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

月明かりのせいか、目を閉じても瞼越しに光を感じた。いつもなら煩わしいと感じる光だが、今日はそうは思わない。 瞼に浮かぶ優しい光に、向かい合って眠るカナの瞳のきらきらと、そこに見えた月を思い出す。 今夜は良い夢を見られそうだ。

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

おわり。 月に瞳を奪われるカナになんか苛々するゼファー、よそ見するカナに対してこっち見ろって思うゼファー、ゼファーにも自分が見た綺麗なものを見せたいカナ、ゼファーに甘えるカナ、なゼファカナ。ストロベリームーンは昨日だったけど、月明かりは今日の方が強い気がして書いた #TOLink

ホクギ °˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖° @hokugi

こっぱずかしいゼファカナ初めて書けた！恥ずかしい！主にゼファーがこっぱずかしいだけだけど。 同じ「月」という題材で去年書いたアレサラと対比させたかったけどそんな高等テクわたしにはなかった。 ゼファーは負けず嫌いで独占欲半端ないので、カナが自分を見てくれないと不機嫌になりそう。

高崎市少年科学館 @Takasaki_Kagaku

今夜は「ストロベリームーン」。ネイティブアメリカンがつけた『6月の満月』の俗称だそうです。この時期、太陽の高度が高いのに対して月は低く、大気の影響で月が赤みがかって見えることと、いちごの収穫時期が重なって名づけられたのだとか。恋愛成就の効果もささやかれています！お試しあれ？！

KAGAYA @KAGAYA_11949

今夜は十五夜満月。 明るい月が淡く色づいた光環のベールをまとっていました。 （写真は先ほど望遠鏡を使って撮影したものです） 今日もお疲れさまでした。 明日もおだやかな一日になりますように。 pic.twitter.com/X8KhLNqk3T

拡大