後ろの聖賢者

第十七回書き出し祭り(第二会場)に参加させていただいた作品の裏設定など。
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狭霧 創作垢 @asagirisousaku

#書き出し祭り 結果出てるっぽいので。 第二の後ろの聖賢者でした。 リプライで裏設定とかを。

2023-01-14 21:54:21
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

実は元々子世代が先にあった話で、こいつらの親ってどんな奴だって思ってできたのが今回の話だった。 ワタリドリ(主人公)はあの後色々あって旅を終え、そこそこ栄えた街で止まり木という宿屋を開く。 聖賢者とは結婚して、最終的に実子三人養子一人を育てる。

2023-01-14 21:56:51
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

ワタリドリは元々盗賊団で飼われてた子供だった。 どこの誰の子だったのかは本人も知らない。 盗賊の誰かが孕ませた女の子供だったのかもしれないし、どっかから拾ってきた子供だったのかもしれない。

2023-01-14 22:09:25
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

ただ盗賊団の奴らは元々情が湧いたとかそういう理由で育ててたわけじゃなかった。 盗賊達は主に街道とかで馬車とか旅人を襲って金目のものを奪ってたんだけど、そういうところには時々魔物が集団で出没するので、そういう時に囮にするように一時的に団に置いてた。

2023-01-14 22:09:25
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

それである日仕事帰りに魔物の群れが出没したから、盗賊団の奴らはワタリドリをその場に放り込んだ。 その時にある男が戯れにナイフを一本だけ持たせてこう言った「あの魔物の群れを全部殺してうちまで戻ってきたら、かたまり肉を食わせてやるよ」と。

2023-01-14 22:09:26
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

当然無理だと思ってそういったのに、ワタリドリは本当に全部の魔物を倒して盗賊団のアジトに戻ってきた、それで一言「かたまりにく」。

2023-01-14 22:09:26
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

盗賊団はちょっと恐れはしたものの、元々頭のネジが抜けてるような連中だったので面白がった。 それ以降、盗賊団は盗みの際に必ずワタリドリを連れて行くようになり、自分達ではどうしようもない量の魔物に遭遇したら「全部殺ったらかたまり肉」って言ってワタリドリをリリース。

2023-01-14 22:09:27
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

そんな生活がしばらく続いた。 盗賊団はワタリドリに人を襲わせることはなかった。 人を襲っていいものだと覚えさせたらいつか自分達にその刃が向けられかねないし、幼い子供に大量殺人をさせて笑い飛ばせるほど倫理観が壊れていたわけではなかったから。

2023-01-14 22:09:27
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

ある日盗賊は踊り子の一座を襲った。 けれど何かを奪う前に大量の魔物の群れがやってきたので、いつも通りワタリドリを置いてトンズラした。

2023-01-14 22:34:51
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

それを見た踊り子一座は「あいつらあんなちっちゃい子を囮にしやがった」と激怒するものの、ワタリドリがあまりにもあっさりと魔物の群れを殲滅したので呆気にとられる。

2023-01-14 22:34:51
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

肩に少しだけ怪我を負ったその子供は踊り子一座を一瞥してどこかに立ち去ろうとした。 魔物の群れを一人で殲滅したおそるべき子供が立ち去る姿を多くの人がただ見送ることしかできなかったが、一人だけ声を上げた者がいた。

2023-01-14 22:34:52
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

声を上げたのは一座の中でいちばんの踊り子だった。 どこに行くのかという踊り子に、子供は帰る、とだけ。 あなた一人をこんなところに捨て置いた奴らの元に戻るのか、という問いにもいつも通りだし、と。 どうしてと踊り子が問いかけると子供は一言、だってかたまりにくくれるから、と。

2023-01-14 22:34:52
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

踊り子は半ば勢いで「じゃあわたしがかたまり肉なんかよりももっともっと美味しいものを、たくさんたくさんご馳走してあげるから」と叫んだ。 動きを止めた子供に積荷に積んでいた焼き菓子を与えたらあっさりついてきたので、踊り子一座は子供を連れて目的地の街の宿屋に。

2023-01-14 22:34:53
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

その宿屋は一座がよく利用する宿屋だった。 踊り子は女主人に事情を話して、ご馳走をたくさん用意してもらった。 子供は目を輝かせながらそのご馳走を全部食べ尽くして、眠ってしまった。

2023-01-14 22:34:53
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

子供をベッドに寝かしつけた後、踊り子達と女主人は子供に関して話し合った。 それで話し合いの結果、子供は女主人が引き取って育てることになった。

2023-01-14 22:34:53
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

子供はかたまり肉のために盗賊団のところに帰ろうとしたが、女主人がここで働けば毎日毎食、かたまり肉なんかよりも美味いものを食わせてやると言うと、コロッと考えを変えた。

2023-01-14 22:34:54
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

その後子供は宿屋で下働きをしていた。 踊り子一座も子供の様子が気になったのでちょくちょく宿屋を訪れるようになった。

2023-01-14 22:34:54
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

子供は宿屋に引き取られてから二年ほど食欲の権化みたいな感じだったが、だんだん落ち着いていった。 食欲の権化やってる間に「べつのおしごとやればもっといっぱいたべられる」と勝手に魔物退治の仕事を始めて女主人から怒られたりもしてた。

2023-01-14 22:34:54
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

女主人は護身のために子供に戦い方を教えていたけど、異常なほど飲み込みがよく、大抵の武器を長くとも三日もあれば使いこなせるようになった。 なのである程度成長したら小遣い稼ぎ程度の魔物退治の仕事だけは許可するようになった。

2023-01-14 22:34:55
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

子供はすくすく成長していった。 将来を意識する頃にはかつての食欲の化身のような食への執着もなりをひそめていた。 子供は自分を育ててくれた女主人のように宿屋をやりたいと思い始めるが、同時に踊り子一座の話に聞く広い世界を旅してみたいとも思っていた。

2023-01-14 22:34:55
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

なので、旅をしていろんな国、さまざまな宿屋を訪れ、それらを参考にして最終的に宿屋を建てようと思いつく。 喧嘩には自信があるので、傭兵の真似事でもしていれば路銀は稼げるだろう、と。

2023-01-14 22:34:55
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

そんなわけで子供は旅立った。 傭兵として旅人の護衛をすることもあれば、訪れた村町を困らせる魔物を倒すこともあった。 子供はある日偶然古代文明の産物である魔神兵団をたった一人で木っ端微塵にした。

2023-01-14 22:34:56
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

もしもそれらが放置されていたら多くの国が滅んでいたのは明白だったので、子供は表彰されてついでに歴史上でも数人しかいない超越者に与えられる勲章ももらった。 表彰とか面倒くさいからバックれようとしたけど、踊り子達に見せたら喜びそうだから普通に表彰された。

2023-01-14 22:34:56
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

その辺りで一気に有名人になったけど、子供は気にかけなかった。 世界中を旅するその様子から子供はいつのまにかワタリドリと呼ばれるようになる。 そんなふうに旅をしていたある日、ワタリドリは邪竜に苦しめられている村に辿り着いた。

2023-01-14 23:04:58
狭霧 創作垢 @asagirisousaku

その村一番の宿屋を半額で泊まらせてもらう+邪竜から取れる素材は全部自分のものにする、という条件でワタリドリはその邪竜を倒した。 それで解体作業を行なっていたら、なんだか物々しい集団がやってきた。

2023-01-14 23:04:58