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【ビースト・オブ・マッポーカリプス後編】#6

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BWAHAHAHA!破るか!愉快だ。ニンジャスレイヤーを薙ぎ払い、蹴り飛ばす。身体が燃えるようだ。亀裂に黒炎が注がれ、歪みがより強固なものとなる。全能のアヴァリスを阻害する矛盾だ。そこにサツガイを「塗りつけ」、矛盾などナシにしてしまう。苦しく、心地よい。傷ついた八芒星はクルクルと回る。 43

2023-04-30 15:21:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」衝突、キックバック。アヴァリスは変じ続ける。次のジツを引き出す。万彩の世界。齟齬、傷つき、硬直した部分を、キンカクが修復する。そのたび、ハッポースリケンで削られるように、アヴァリスの感覚は、記憶は、希薄になってゆく。記憶!それはごく些細なものだ。 44

2023-04-30 15:26:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BWAHAHAHA!そうだろ?俺や俺や俺は始祖の影。何を考えているかもわからぬ巨大な力が微睡みの中で寝返りを打った痕跡だ。平等に価値がない。そう、アヴァリスの地上の記憶は、ほんの僅か。ただの数年。サイベリアの暗黒のスラム。武装ヘリから見下ろす霧深き森。横には常にあれがいた。クロヤギが。 45

2023-04-30 15:32:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イバラの中、暗黒メガコーポの兵士どもが死んでゆく。論理聖教会の要塞が粉塵の中に沈み込む。オクダスカヤーノフ。その美しき湖畔の風景。傍らに立つのはヴァイン。アヴァリスを必要としていた。なぜ?さあ、知った事じゃない。始祖の顕現は誰にとってもありがたいものなのだから。そうだろ?  46

2023-04-30 15:37:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは体勢を立て直し、再び捨身のカラテ突撃!「BWAHAはHAHAハハハHAHAHA!」それを弾き、間髪入れず、逆の拳でディレイド・デトネイト・ジツ!KBAM!敵は咄嗟に飛び退き、遅発性の小爆発を躱す!カラテミサイルで追撃!獣は流れるような連続側転で対応する! 47

2023-04-30 15:39:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスは加速し続ける。コンマ1秒ごとに新たな姿がもたらされ、力が蘇り、流転する。亀裂だけが不変だが、そんなものに望みを繋いで。獣はやはり獣。無限に対抗する足掻き。愚直の極み。やがて押し潰される。ジツに対応し続ける限り、獣は先手を取れない。混沌の次の一手を読むことはできない。48

2023-04-30 15:44:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ライフスプリング・ジツ。無数の卵が割れ、羽の生えた生き物が羽化する。アヴァリスはそれらに興味がない。すぐに息絶える。コープスナパーム・ジツで爆破する。KBAM!「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは被弾。そう、全てに対応し続ける限り、一歩も先には進まない。 49

2023-04-30 15:51:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」燃えながら突っ込んできたニンジャスレイヤーが、アヴァリスの顔面に拳を叩きつける。アヴァリスは吹き飛び、受け身を取れず、叩きつけられ、転がる。BWAHAHAHA!無駄だ無駄!キンカクに繋がっている。カラテをひとつふたつ当てようと、「イヤーッ!」「グワーッ!」 50

2023-04-30 15:53:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

起き上がる……「イヤーッ!」「グワーッ!」シャチホコ・ガーゴイルに背中から叩きつけられる。ニンジャスレイヤーが向かってくる。無駄だ、無駄……やらせておけ。キンカクの流れ込む余地をもっと広げるんだ。もっと失えば、混沌が、無限が、そこに置き換わる。その先に勝利がある。「勝利とは?」51

2023-04-30 15:57:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

勝利ってのは、そりゃあ……ニンジャスレイヤーを叩きのめし、手足を順番にもいでやって、血を飲んで勝ち誇る……想像するだけで気持ちがいい……という感じだ。多分な。「成る程。よくわからんな」そう、その通り。意味がないから自由だし、縛られず、望んだ通り生まれ変わる。それが……「そうか」52

2023-04-30 16:01:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

わかったかね。「ああ。やるとする」そうか!なによりだ!BWAHAHAHA!楽しもうじゃないか!「イヤーッ!」眼前に再びニンジャスレイヤー!混じりけ無き殺意!「イヤーッ!」アヴァリスは拳を打ち返した!そしてブギー・ジツをはなつ!黒炎を纏ったニンジャスレイヤーのチョップが刳り抜ける! 53

2023-04-30 16:08:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」ニンジャスレイヤーは目を見開く。チョップにまとわりついた泥。アヴァリスはブギー・ジツによって肉体を暗い泥と化していた。コンマ1秒毎に泥のディテールを変じ続けながら、アヴァリスはよろめき、ニンジャスレイヤーを背後にしたまま歩を進め、やがて……己の胸に腕を差し込んだ。 54

2023-04-30 16:08:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハラキリ、否!アヴァリスは胸の内より、黒い脈動を引きずり出した。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが襲いかかった。アヴァリスは振り向き、黒い脈動を叩きつけた。KRAAASH……!再び両者は互いに弾かれた。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。アヴァリスは引きずり出した黒いマガタマを見た。 55

2023-04-30 16:11:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もっと早く、お前と出会っていればよかった」アヴァリスは呟いた。『何だって?』マガタマが震動した。『何をやってる?よせ。空っぽになっちまうだけだろ。このまま暴れていればいい。さもなきゃ……』アヴァリスは口の端を歪めて笑う。「いいや、勝てるのさ」彼はマガタマを無雑作に放り投げた。56

2023-04-30 16:18:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

時間が凍結めいて鈍化し、マガタマは空中に留まった。ニンジャスレイヤーは殺意を爆発させた。アヴァリスは両手を広げた。セトは訝しんだ。ギャラルホルンは歪んだ笑みを浮かべた。……時間が流れ出した。ニンジャスレイヤーは燃えるスリケンを投げた。マガタマはしかし、01ノイズを生じ、消えた。 57

2023-04-30 16:23:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

――(((ならぬ!身を守れマスラダ!))) スリケンが空を切り、奥歯を噛み締めたニンジャスレイヤーのニューロンに、切迫したナラクの声が響いた。尋常ではなかった。(((跳べ!)))「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳躍した。直後、マルノウチ・スゴイタカイビル屋上は緑がかった黒色に染まった。 58

2023-04-30 16:29:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

垂直に高く跳んだニンジャスレイヤーは、ネオサイタマをわずかに俯瞰した。黒い波がスゴイタカイビルに集まってくる。時間を早回しするような勢いで、あっという間に、それらが集まってくる。クロヤギ……クロヤギの群れ……埋め尽くす……アヴァリスはそれらを迎え入れる……黒い太陽めいた集積。 59

2023-04-30 16:34:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

01001……0101……視界がささくれ立ち、不明瞭な映像が重なり合う。マスラダはニューロンの灼ける苦痛の中、アヴァリスが感じるものを感じていた。アヴァリスが感じていたのは悲しみだった。崇めるべきカツ・ワンソーが不在の世界に落とされ、地を駆ける、クロヤギの悲しみだった。 60

2023-04-30 16:38:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カラテノミコンの魔術が、彼女をモータルに結びつけた。そうして、ヴァインが生まれた。オクダスカヤという企業体が贄として捧げられたのだ。やがてサイベリアの裏路地で、彼女は飢えたる少年に出会った。それが、アヴァリス。 61

2023-04-30 16:42:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

少年は眩しい黄金の光を内より放っていた。手を差し伸べたヴァインは少年に指を噛みちぎられた。ただのケジメではなかった。それを以て、彼女のクロヤギ・ニンジャとしての力の一部が奪われたのだ。だが、ヴァインは幸福だった。額(ぬか)ずき、己の力を捧げた。始祖の顕現。カワイラシヤ……。 62

2023-04-30 16:47:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうか」アヴァリスは微笑み、ヴァインの両頬に手で触れた。額をつけ、囁いた。「お前はいいやつだ」……010011……「応えてやろう」……010001……世界が戻ってきた。ネオサイタマの緑は枯れ果てた。その中心、スゴイタカイビル、全てを収穫し終えたアヴァリスが、ニンジャスレイヤーを見上げた。63

2023-04-30 16:55:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黒緑色の美しい大理石じみた肌、鍛え上げられた肉体を覆う装束は、ネオサイタマを侵食してきた緑の精髄だ。床が崩れた。コンクリートの下からのたうち現れたのは、世界の核に届いているかのような植物の、太い太い蔦たち。一つ、また一つと、屋上を囲んでいたシャチホコが押し出され、落下してゆく。64

2023-04-30 17:03:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは鉤爪を突き刺し、伸び続ける植物に取り付いて、落下を逃れた。頭上には成層圏。垂直に生育上昇し続ける蔦植物のもとでニンジャスレイヤーとアヴァリスは互いを見た。「さあやるぞ、ニンジャスレイヤー=サン。最後まで付き合ってもらう」「どのみち、貴様を逃がすつもりはない」65

2023-04-30 17:08:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「我が名はアヴァリス。誇り高きクロヤギ・ニンジャの仔にして、狩人。獣を喰らい、勝利の喜びを我らのものとする。それが俺のイサオシだ」アヴァリスは己の胸を拳で叩いた。荒れ狂う緑の装束が波打ち、蹄めいた音が応えた。伸び続ける巨大蔦の上、再びカリュドーンの対戦者はカラテを構えあった。 66

2023-04-30 17:15:27