ビースト・オブ・マッポーカリプス 後編 #8

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【このアカウントは】 サイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の最新話をTwitterで連載しています。 どうやってやっているか？　Tweetを通し番号で連続させて小説が読める仕組みです。（最近はスレッド形式を試しています。今回は、スレッドは不使用でTweetします） pic.twitter.com/jBF3xcgPah

拡大

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【現在のニンジャスレイヤー】 ・ダークカラテエンパイアの邪悪なリアルニンジャの陰謀と戦っている。 ・リアルニンジャは平安時代以前の神話時代に世界を支配していた恐ろしい存在だ。 ・ネオサイタマに７人の狩人が送り込まれ、異変が起きた。 ・大詰め。第７の狩人「アヴァリス」に勝てるか。 pic.twitter.com/L4pRZ8DmXQ

拡大

拡大

拡大

拡大

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【状況】 ネオサイタマ、マルノウチ・スゴイタカイビル屋上で戦っているニンジャスレイヤーとアヴァリスは、垂直に伸びる妖樹ごと成層圏へ。 一方、特派員に変装したフジキド・ケンジはセトの支配するエネアド社に潜入したが、ネオサイタマ支社ではなくエジプトの本社だった。戦いが始まる。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

電子テクノロジーと古代神話、ニンジャとサイバネティクスと茶器が渾然一体となったニンジャスレイヤーの世界を知りたければ、とにかく全てまとめられた「ニンジャスレイヤーPLUS」でチェックしよう！ diehardtales.com/m/m1d0f417d09bf

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「ンアーッ！」ティアマトの蹴りがコトブキの膝を砕いた。コトブキは床を転がり、身を起こしながら、それでもカラテを構えた。小刻みなスパークが起こった。「これでもう、いたずらに時間を稼いで妾を苛立たせる事もできんの」ティアマトは冷たく鼻を鳴らした。「不愉快な人形じゃ」 1

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ガガ…ピガガッ」コトブキは激しく瞬きし、瞳の中で「戦闘用」「医療用」「緊急」の文字が目まぐるしく切り替わった。ティアマトは眉根を寄せた。「何を笑っている」「負けないからです」コトブキは答えた。「貴方は偉そうにしていますが、リアルニンジャだから何ですか？そういう話をしています」 2

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「減らず口を。まるでゴキブリじゃ」ティアマトは近づく。コトブキの腹には既に穴が空いている。初撃のダメージだ。コトブキは咄嗟に心臓部への打撃を逸らしたが、気休めにすぎなかった。「しぶといゆえ、脚を奪った。次で壊してやる。カイシャクと言うのも勿体なき事」　3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトブキの目に「通信」の文字。彼女は言った。「エネアド本社、セトのもとへ、サツバツナイト＝サンが辿り着いたそうです」「……サツバツナイト……？」「セトは、自分のもとに敵が直接やってくると考えていましたか？」「何？」「貴方達は全能ではないという事。今後も予期せぬ事が起こります」 4

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ティアマトは息を吸い、コトブキの言葉を吟味した。コトブキは続けた。「貴方達は、儀式を完遂し、自分たちの思い通りに事が進むと考えていた。そんなの思い込みに過ぎません。茶器は私達に盗まれた。ニンジャスレイヤー＝サンは狩人を倒す。貴方達は不完全です。全部、御破算にします！」 5

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キエーッ！」「ンアアアアーッ！」ティアマトは瞬間的な極限の無慈悲を見せた。バーニング・ハンド。カマキリの捕食めいてカラテを振るった彼女のチョップは、コトブキを真っ二つに……否、かろうじて正中線を逸れたチョップは、コトブキの左鎖骨から肩甲骨にかけてを断ち割っていた。「……異な」 6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

振り返ったティアマトと、襲撃者……リバティの目があった。こちらも満身創痍。だが闘志を絶やさず、なおも懐剣で襲いかかり、その切っ先をティアマトの背中に突き刺していた。「イヤーッ！」「グワーッ！」振り向きざまの蹴りが肋骨を砕き、リバティを吹き飛ばした！KRAASH！ショーウインドウ破砕！ 7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「人形の次は、偽チャドーか」ティアマトは舌打ちし、ジュー・ジツを構え直した。然り。リバティは震えながら再び起き上がり、不屈めいてカラテ姿勢。「スウーッ……ハアーッ！」英国式チャドー呼吸が美少年の全身を循環し、内より輝かせる。「ブザマで醜き亜流風情が、あにはからんや、この妾に！」 8

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ティアマトの身体にネザーの妖気が満ち溢れ、リバティの英国式チャドーが絞り出す生命エネルギーに呼応した。二者は同時に地を蹴った。色付きの風が躍り、ブティックの調度は竜巻犠牲じみて砕け散る。彼らの見えぬ動きをなお捉えようとするコトブキの視界にはノイズが混じり始めた。　9

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

0101。ノイズ・モザイクの中で、コトブキは己の後ろに、母なるオイランマインドの存在を強く感じた。ウキヨが死ねば、そこへ還るのか。だが彼女は振り返りたいと思わなかった。前には黄金の立方体。そしてそれに日蝕めいた影を落とす、赤黒のアブストラクト炎。そこに獣と狩人が相対していた。　10

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは喉を砕かれ、血を失い、なお瞳を燃やしてアヴァリスを睨んでいた。アヴァリスは微笑んでいた。その巨躯には奪った力が渾然一体となって溶け、クロヤギの加護が、ざわめくカラテの形を与えていた。（ニンジャスレイヤー＝サン。必ず勝ってください。わたしも、必ず持ち堪えます）11

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ビースト・オブ・マッポーカリプス後編】#8 pic.twitter.com/nt38fJD2RS

拡大

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。セト・ニンジャ＝サン。ダイ・ニンジャです」「ドーモ。ダイ・ニンジャ＝サン。セト・ニンジャです」サツバツナイトとセトはオジギから顔を上げた。セトの構えは古代エジプトカラテ。黒宝石めいた美しい肉体は、ブオン、ブオンと不穏な音を伴う。それは遅い手の動きに伴う残像の音だった。12

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セトは左手を、相手を試すように、あるいは祝福するように高く掲げ、右手は笏を持つように握り、腰の横に構えている。彼はサツバツナイトのカラテを吟味する。実際、セトの宮殿たるエネアド本社に入り込み、デスウイングやインヴィンシブルといった強大なガーディアンを打ち破ってきた事は事実。　13

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

大いなる古代神話ハッカーニンジャであるセトは、当然、このダイ・ニンジャたるサツバツナイトについて幾分かの情報を握ってはいる。サツバツナイトはドラゴン・ニンジャの弟子、あるいは従者として、岡山県のドージョーを出入りし、実際、セトの同胞とも事を構えている。 14

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

即ち、この新参のニンジャは、「惰弱なるハトリ者」の系譜にある。ハトリのニンジャ達は六騎士を筆頭に、始祖カツ・ワンソーに楯突き、まぐれ勝ちを拾ったものの、後に築いた文明は力弱い虚ろな夢に過ぎなかった。ハトリのニンジャは軟弱であるゆえ、イクサにおいて文明に従属し、社会に囚われる。　15

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツナイトが、文明社会の中でつまらぬ抗争に右往左往したらしき痕跡は幾つかある。その延長でダークカラテエンパイアの計画にあれこれ首を突っ込み、ムカデやドゥルジに追い払われている。カイデンしたニンジャといえど、モータルに近い。カイデン者がドラゴン・ニンジャであるならば尚の事だ。16

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ここまでは、いわば断片的事実と、その解釈に過ぎぬ。「真実」は今こうして彼の目の前に立つ黒装束のニンジャと、メンポに刻まれた「殺」「伐」の漢字、そして橙の火だ。セトはこの者について真実をはかる必要があった。直接この機にカラテを交える以外に、最適な方法はあるまい。　17

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブオン。ブオン。セトの腕が唸る。サツバツナイトが横に歩を動かす。翳した左手はそれに合わせ僅かずつ動く。残像が漏れ出て、唸りながら後を追う。「イ……」時間が圧縮し、サツバツナイトの殺気の迸りを、セトは肌で感じ取った。「ヤ…」セトは翳した左手を下ろし、サツバツナイトの額を押さえた。18

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

残像がサツバツナイトの顔面と胸に短打を打ち込んでいた。「イヤーッ！」「グワーッ！」サツバツナイトは爆発四散しなかった。チャドー呼吸を体内に循環させてセトのカラテに耐えたか。彼は膝に力を込め、セトの脇腹に拳を突き刺しそうとした。セトは右手を下ろし、添えるように拳をずらした。　19