僕のカウントが０になる前に

ハラヨシ @harayosy

#twnovel ヒトのDNAが解析されて数世紀。容姿も体型もイジリ放題。神から貰ったカラダは人の思うがままのモノとなった。「コウスケ入ります」「ああ、良く来たな」「先生、何か？」「教育委員会から連絡が届いた。『予定日』まで自由だぞ」…ただし。『死』だけは今だ避ける事ができない。

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 医学の発達によりどんな難病も大怪我も乗り越えることが出来るようになった。自殺すら最早できない程に。金さえ積めば寿命も延ばすことができる。不老不死を手に入れたかと思った人類は、しかしそう上手くはいかなかった。『予定死』…いつからかDNAに現れた謎の因子。

ハラヨシ @harayosy

#twnovel その人間がいつ死ぬ予定なのかが時分秒まで分かる情報。どんな健康体であれその時間が来た時、突然死してしまう。どんな手術もきかず、どこに行こうとも逃げられない。やがて人類は『予定死』を受け入れ始めた。希望者は『予定死』を健康診断時に聞く事もできる。そう、僕のように。

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 「有難うございます。無理を言って」先生に頭を下げる。「いや。しかし、いいのか皆に内緒で」「ええ」僕は相談室の窓から外を見る。「説明は先生に任せる事になりますが」「お前が決めた事だ。いいさ」「すみません」「どこに行くんだ？『予定日』まで」「北、に行こうと思います」

ハラヨシ @harayosy

#twnovel 腕時計のアラームをセットする。このカウンタが０になった時が僕の終わりだ。最後の旅行。この為に買った自転車に跨る。早朝の太陽が旅立ちを祝福するかの様に明るい。「祝福か」苦笑いする。両親には挨拶は済ませた。「行ってきます」呟いて僕はペダルを踏んだ。僕の旅が始まる。