#hrakプラス 🎤 ダメ元でゆーえー高校に応募したら普通科教師として採用されたわけだけど、覚えることもやることも沢山で毎日が忙しい。でもこれはゆーえー高校だから、というよりも教師だから、だ。 「🌸先生、〇〇くん近くにきたら教えて!」 「はいはい。もうすぐ来るよ」 「さっすがー!」
2023-04-24 21:25:30〇〇くんの誕生日をクラスでサプライズするらしく、昼休みに恒例のサッカーから戻ってくる前にどうにか準備を終えたいらしい。青春だなーなんて思いながら手助けをする。 「サプライズ成功ー!さすが🌸先生、地獄耳!」 「はいはい。午後の授業始まるから用意しなさい」
2023-04-24 21:25:31そう言い残して教室を後にする。生憎、今日はあと6時間目の授業のみだから時間には余裕がある。廊下をかける生徒を注意しながらのんびりと歩く。 “🌸先生、地獄耳!” 「…地獄耳なんて次元じゃないと思うけどね」 耳につけたワイヤレスイヤホンに見えるそれを触りながら呟く。
2023-04-24 21:25:31私の個性は“聴覚”。かなり広範囲の音を拾えるが、普段生活するのに不便なことも多い。そのためにノイズキャンセリング機能のある特注の機械をつけ、髪の毛で耳をかくしている。ワイヤレスイヤホンとしての機能もある。 「お、🌸〜!お前も授業なし組かー」 金髪をバッチリとセットした🎤先生が
2023-04-24 21:25:32渡り廊下で私を見つけるや、通る声で名前を呼びながら手を振ってくる。 「推しと同じ職場…幸」 高鳴る鼓動を落ち着かせながら挨拶をする。声に敏感な私は🎤先生の大ファンだ。ラジオは欠かさず聞いてるし、なんならこの高校に応募したのも🎤先生がいるからだったりする。欲望のままに生きてる
2023-04-24 21:25:32自覚はあるけど、私の人生だから誰にも文句は言わせない。本当はイヤホンをとって聴きたいけど、これがなくなったら直で届くから失神する気がする。いい声すぎて。 「前から思ってたんだけどよー」 「はい?」 「お前、個性持ちよな?」 その言葉にびくりと方が揺れた。応募する書類に個性申請の欄が
2023-04-24 21:25:33あったんだけど、実は記入し忘れて無個性ということになっているのだ。訂正するのも面倒だし、戦闘系の個性でもないからまぁいいかと放置していたのである。 「あー…書き忘れちゃって」 「haha!ゆーえー高校に応募すんのに書き忘れるやつなんていんのなー」 ゲラゲラと笑う🎤先生。
2023-04-24 21:25:33推しが、推しが笑ってます。しかも隣で!隣でー!!!バレたことよりもそっちの方が重要で、許されるなら今すぐ倒れこんでジタバタしたい。今日はいい日だな、とルンルン気分だったので反応が遅れたのが良くなかった。 「俺と話すなら、これない方がいいんじゃねーの?」
2023-04-24 21:25:34髪の毛を耳にかけられ、イヤホンを外された。直で聞く🎤先生の破壊力は噴火並だし、わざとなのか周りの音が気にならないぐらい至近距離だ。バレるのが面倒でアップスタイルにしたり、髪をかけたりしないよう意識していたのにどこで気づいたのだろうか。いや、そんなことよりもこの距離はなんだ?
2023-04-24 21:25:34目の前に金髪とサングラス?耳元には推しの口?え? 「hahaha!まるで茹でたオクトパスだな!」 「っ!!!🎤先生!」 「おっと、悪いのはお前だぜー?俺の声ききたーいって顔に書いてあるんだからなー」 「か、書いてません!」 「嘘はよくねーなー」
2023-04-24 21:25:34絶対の自信があるのか、至近距離の顔には怪しい笑みを浮かべてて、わざとこの距離なんだな?と思ったら余計に恥ずかしい。 「と、とりあえず離れてくだ、」 「ファンとしてじゃなくて、男として見てくれんなら考えるぜ」 「えっ」 イヤホンを持ったてで頬を撫でられる。誰もいない渡り廊下。
2023-04-24 21:25:35サングラス越しに見えた🎤先生の目は、普段遠くから見ていたものではなく、欲に満ちた雄の目をしている。 「ちゃんと考えとけよー」 唖然と立ち尽くす私の頭を撫で、手のひらにイヤホンを握らせて去っていった。
2023-04-24 21:25:35これは一体…どういうことだろうか。そのままで受け取るなら、推しではなく異性として見てくれ、ということになる。そんな夢みたいなことがあるのだろうか? 「とりあえず…死にそう」 現実味は全くないですが、どうやら推しが噛み付いてきたようです。
2023-04-24 21:29:05〜 一方で 〜 「〜🎵〜🎵」 「ご機嫌だな」 「可愛い顔見れたからなー。バイブスぶち上がりだぜ!」 「…ほどほどにな」 前から可愛いと思ってたけど推しとしてしか見られてないことに気づいて、たまたま風で靡いて見えたイヤホンで個性に気づき、強硬手段に出た🎤
2023-04-24 21:30:17#hrakプラス 🦅 ⚠️ネタバレっぽいかも…。 「今度ここ行きましょう」 ニコニコしながらスマホを見せてくる🦅その笑みを見ていると心がざわついた。気づかないふりをしていればいい。それが最善だとわかっているのに、私はバカだから。 「けいご。私に何か言うことない?」 「…え、どうしたと?」
2023-04-30 23:49:51ソファに座る🦅の側に行き、見下ろしながら前髪を撫で付ける。 「危ないこと、してない?」 「ヒーローは危なか仕事ばい。しっとーやろ?」 「知ってる。でも、そう言うんじゃなくて…」 どう伝えたらいいのかわからなくて口を閉ざす。困惑する私の顔を見て、🦅は割り込まずにじっと待っていてくれる
2023-04-30 23:49:51「よくわかんないけど、けいごが瀬戸際にいる気がするの。踏み出したら行けないラインを行ったり来たりしてるような、そんな感じ」 形のない不安を言葉にするのはやはり難しくて、曖昧な表現になってしまった。だけど、それが一番しっくりきた。 「…そんなことなかよ」 「…そっか」
2023-04-30 23:49:52目を逸らす🦅。それが嘘だって、長く一緒にいる私にはわかるし、彼だってバレているのに気づいているはず。でも、口にしない。それが答えだった。 「けいごが決めたなら文句言わない。でも、必ず私のところに帰ってきて。必ず」 「……はい」 逸らされた顔を無理やりこちらに向け、唇にキスをする。
2023-04-30 23:49:52帰ってくる場所はここなんだと、私の側なんだと、そう訴えるように。 「無事に…帰ってきて」 両頬を掴んで見下ろした🦅の瞳は、ユラユラと揺れていた。苦しみを分かち合えなくても、共に戦えなくても、もしもの時、私があなたのストッパーになれれば…。その思いを込めて、もう一度キスをした。
2023-04-30 23:49:53#hrakプラス 🎤 ⚠️個性申請を忘れた“聴覚”個性持ちの普通科教師🌸と🎤の続き。 〜♪〜〜♪ お風呂上がり、髪を乾かし終えてもう寝るだけという状態でスマホがなった。誰だろう?と画面を覗くと“推し様”の文字。 「うぇっ!?」 慌てて応答ボタンを押した。
2023-05-05 22:05:22「お疲れーい。夜遅くに悪いなー」 電話口からは緩い口調の推し様こと🎤が控えめな声量で言う。あの日以来すれ違った時や教員室で構ってくれるようになり、つい先日連絡先まで交換してしまった。推しと繋がれるなんて夢のようで、その日はアカウント名を変えたりアイコンの写真を眺めてニヤニヤした。
2023-05-05 22:05:23まさか電話が来ると思ってなくて、慌てて「だ、大丈夫です」と返す。すると嬉しそうに「そーか」って囁くから耳が死にそうになる。 「こないだラジオ収録したんだけどよー、未公開シーンの動画あるけど観るかー?」 「えぇ!?それって観ていいやつなんですか!?」 「Yeah!許可貰ってるぜ〜」
2023-05-05 22:05:24なんて言って誰に許可貰ったの?とか何で私に観せてくれるんですか?とか聞きたいこと沢山あるけど、それよりも欲が勝ってしまって「…観たいです」と気づいたら口にしていた。 「OK!今部屋出れそうか?」 「え、あ、いや…スッピンでして」 「へー。興味あるなぁー」 「…興味持たないでください」
2023-05-05 22:05:24推しの前では可愛くいたいもの。化粧は武装だ。スッピン見られるなんて心が抉られてしまう。そう思っていたのに「んー。俺ぁ会いてーなー」とか言われたら揺らいじゃうに決まってる。 「それにこの話聞いてこの後寝れんの?」 「…寝れません」 「気になるだろ?未公開シーン」 「とっっっっっても」
2023-05-05 22:05:25「食い気味だな」と笑われてしまうけどそんなことどうでもよくて。スッピン見られたくないっていう感情よりも推しに会える方を優先した方が良くない?と自分の中で出かける選択肢に気持ちが向いていた。 「俺の部屋とお前の部屋、どっちがいい?」 お互い寮生活だからこの時間だとそうなるのは当然で
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