✂️まとめ

レダ @Le___da

#hrakプラス　✂️ 「切島ってさ、いい奴だよね」 同じ事務所で働く彼にそう言えば、パチパチと目を瞬かせた。パトロールの報告書や事件の後処理の書類を作成していた手を止めてこちらを見る。 「なんだよ急に」 その言葉はごもっともで、なんでこのタイミングなんだろうって自分でも思った。

レダ @Le___da

お酒の席でもないし、ましてや仕事中だ。でもさっき見た光景を思い出していたら無意識に言葉が出ていた。 「仕事で困ってる子がいたら一緒にやるし、飲みの席では率先して話しかけにいくし、先輩の恋愛相談にのったりさ。いい奴だよね、ほんと」 「…よくわかんねーけど、ありがとな？」

レダ @Le___da

戸惑いながらもお礼を口にする✂️ 突拍子のない話もさ、そういう風にちゃん聞くところも素敵なんだよね。 「でも、心配になる」 「ん？」 「先輩のこと、好きでしょ切島」 まとめた報告書を見直しながら言えば、グシャリと何かを握りしめる音が聞こえた。動揺して完成間近の書類でも掴んだのかな。

レダ @Le___da

✂️の顔を見る勇気がない私には、少し前の情報から想像するしかない。 「好きな人の恋愛相談乗ってさ、辛くないわけ？」 この言葉が彼の心を抉ると知っていながらそう口にする。好きな人の役に立ちたいという純粋な親切心からか、それとも上手くいかずにこっちを振り向いて欲しいという打算からか。

レダ @Le___da

✂️の場合は確実に前者だろうな。だからこそ、辛い。本人に聞いてないけど、先輩はきっと✂️の気持ちに気付いてる。気付いていて利用してる。あんな熱のこもった目で見つめられて気づかない女なんていないよ。それぐらいあからさまだ。

レダ @Le___da

「…私だったらよかったのにな」 視線の先にいるのが自分だったらどれだけよかったか。混乱している✂️に私の言葉は届いていなくて、「いや、そんなこと…」なんて口にしている。その後にどう続けるべきか迷っているのは、先輩に気持ちが伝わる事を恐れているから？好きな人の邪魔はしたくないから？

レダ @Le___da

綺麗な言葉で表せば健気で潔い。でも、哀れだ。そんな彼を好きな私も、ね。 「切島」 「何だ？」 「私、切島の事すきだよ」 「…はぁ！？」 「先、所長の所いくね」 「ちょ、おい！」 “いい奴”と最初に口にしたのは無意識だったけど、踏み込んではいけないとわかっていて踏み込んだのはワザとで。

レダ @Le___da

いい奴だってわかっているからこそ、好きだからこそ、少しでも自分のことを見て欲しい。そんな自己中心的な思いをぶつけたくなった。 「…最低な女」 出来上がった書類を片手に天井を仰ぐ。✂️みたいに相手の幸せを願うとか、そんな綺麗なこと私にはできない。 「でも好きなんだよな」

レダ @Le___da

手に入れたいと、そう思ってしまう。先輩と私で揺れ動けばいいと考えてしまう。✂️の好意を知りながら利用している先輩が憎い。そんな彼女を好きな✂️は見る目がない。つきたくもない悪態が心の中でぐるぐる駆け回る。

レダ @Le___da

そんな日から数日。私はできるだけ✂️と今まで通り過ごした。何事もなかったように。そして先輩と✂️が二人で人気のない場所へと移動していく。いけないとわかっていても追いたくなるのが人間で、声は聞こえないけど真っ赤な顔した✂️が必死に何かを言っている。告白だとすぐにわかった。

レダ @Le___da

驚いた顔をする先輩。その表情さえもわざとらしく思えた。知っていたくせに。壁にもたれながらあの日と同じように天井を仰ぐ。私が✂️に好きな人がいると知りながら告白したように、好きなら好きって言うべきだ！とか思ったのかな。漢を重んじる✂️ならありえるな。先輩断るのかな。それとも受けるのかな

レダ @Le___da

恋愛相談してるうちに、その人のこと好きになるなんてざらにあるもんね。あー…辛いな。恋愛ってこんなに心身ともに疲れる事だったっけ？今日も喋れた！とか小さなことにキュンとしたりする可愛らしいものじゃなかったっけ？ 「あー…しんど」 今の私には電気さえも眩しくて、項垂れるように下を向く

レダ @Le___da

「🌸？具合悪いのか？」 視界に入った靴は見覚えのあるもので、今一番会いたくない人だった。顔を上げればどこかスッキリした表情をしていて、うまくいったのかななんて想像して余計に落ち込んだ。 「告白、したの？」 「…あぁ」 「そっか」 態々確認して傷つきにいくなんてどうかしてる。

レダ @Le___da

泣きそうだなと思っていた所で、両肩を掴まれた。 「俺さ、先輩のことマジで好きだった」 「…知ってる」 何？傷口に塩塗るタイプですか？このツンツン頭め。睨み上げれば困ったように笑う✂️話はそれだけじゃないみたいで、続けて口を開いた。

レダ @Le___da

「でもさ、ここ最近相談乗ってる時とか世間話してる時とか全然普通でさ、なんでだろって思ってたんだよ。そんな時にお前から告白されて、あ！こいつの事好きだからだって気付いた」 「………は？」 何を…言ってるの？その言葉だけ聞いたら✂️が私のこと好きみたいじゃん。先輩告白したんでしょ？

レダ @Le___da

「さっき、先輩に告白したって」 「おう。けじめつけとかねーとと思って！今は🌸のことが好きだから、今までみたいに相談には乗れねーわって伝えた」 お前に先輩のこと好きだって勘違いされたくねーし、と赤い顔で頬をかく。 「う、そ」 「嘘じゃねーって。マジ！ほんと！」

レダ @Le___da

視界が滲む。そんなことって…そんなことってある？ 「嘘だぁ〜…」 「泣くなよー。嘘じゃねーってば」 大人気なく涙を流す私を優しく抱きしめた。ここが事務所だなんて、そんなことを考える余裕はなかった。 「🌸が好きだ。嘘じゃねーよ。ちゃんと証明するから、返事は後でちょうだい」

レダ @Le___da

ポンポンとあやすように背中を叩かれる。私が好きだって知っているのに、すぐ付き合おうって言わないところが✂️らしい気がした。 「…わかった」 「ありがとな、俺のわがままに付き合ってくれて」 「…好きっていっぱい言ってくれなきゃわからないから」 「はははっ！もちろんたくさん言うぜ！」

レダ @Le___da

私の涙を親指で拭いながら豪快に笑う。先輩に向けられていた熱がこっちに向くのだと、そう考えただけで心が躍った。 「早く証明してよね」 「…おう。任せとけ」 人気のない廊下で、二人だけの約束をした。

レダ @Le___da

#hrakプラス　✂️ 「切島のそいうとこ好き」 「おう！ありがとな！」 共スペで女子三人で話していた時、明日でもいいのに落とした髪留めを届けにきてくれた切島にいえば、素敵な笑顔で返された。 「こんなにアピールしてるのに気付かれないことある？」 「あー。まぁ…切島やもんなー」

レダ @Le___da

苦笑いのおちょこ。 「さっきのもお礼の前に“友達としてだよな？”ってのが入ってた感じだよねー」 ゲラゲラ笑うミナちゃん。 「笑い事じゃないよー…」 「あはは。ごめんごめん！」 「先は長そうやね？」 「…はぁ」 私を慰めるように肩を叩いてくれるおちょこに寄りかかった。

レダ @Le___da

「どうしたらいいのかな」 重いはずなのにどかそうとせず、そのまま話を聞いてくれる。切島に意識して欲しくて、さっきみたいに“好き”ってワードを使ったり、些細なことで褒めたりしてるのに、さっきみたいに曇りなき純粋な笑顔を返される。脈なしな気がするけど、どうしても諦めらめることができない

レダ @Le___da

だからこうして二人に相談しているけどいい案は浮かばない。距離感を近付けても頬を染めたりしない。玉砕といっても過言ではない。 「んー…もう告白すればええんちゃう？流石にそこまでされれば気付くやろ」 「それは…そうだけど」 「てか、今だって告白してるのに近いし普通に告ればいいじゃーん」

レダ @Le___da

呼び出して“切島が好きです！付き合ってください！”って言うのと、今みたいに会話の流れでいうことでは訳が違う。 「告白しないんやったらまぁ…地道にアピールするしかないね」 「だねー」 「…はーい」 告白しないとなると結局それしかないのでめげずに頑張るしかない。自分を鼓舞して部屋に戻る。

レダ @Le___da

「…今日もダメだったか」 寮に戻り、手を洗いながら弱音を吐く。洗うと言ったけど蛇口から出るお湯に手を突っ込んでぼーっとしてるから、濡らしていると言う方が正しい。もう告白してしまおうか。そう考えた時、「🌸〜」と名前を呼ばれた。 「何？きりし、」 「袖、濡れんぞ」