バトル・オブ・フォート・ダイナソー #2 前編
【バトル・オブ・フォート・ダイナソー】 #2 pic.twitter.com/CRBBlU2Aef
2023-08-07 21:36:44「イヤーッ!」ハイドラは窓から外に飛び出し、サワタリ・カンパニーのビークル置き場に着地した。ここはシダ植物に囲まれた天然のガレージで、すぐ横にはアマゾン河の支流が流れている。 1
2023-08-07 21:39:10「ハン?どうしたのハイドラ=サン?」そこにはバイク整備中のモニカ・ヤシマがいた。モニカはサワタリ・カンパニーの紅一点であり、営業部所属のタフな女であり、マインドキルとバイオカエルの飼育係であり、モータルだ。「ちょっと大将に用があってよ!」ハイドラはフードを直しながら言った。 2
2023-08-07 21:44:06「もう用は済んだ? 俺たちこれからマナウス・シティに行って、ついでに一番でかいゲーセン寄るんだけどさ」「センパイも来る? 禅TANK5.22やるんだ」モニカの横には、K2とK3もいた。双子は上から運んできた重い物資コンテナを、マルミ・ウルティマUR-2の荷台に乗せて固定しているところだった。 3
2023-08-07 21:47:35「ヘッ、ガキと遊んでられッかよ。こっちはそれどころじゃねえんだ!緊急事態だって言ったろ?」ハイドラは鼻で笑った。この2人は出会った頃のピュアさを失い、マナウスの安っぽい若者文化にはまってしまった。最初は聞き分けもよく可愛かったが、こいつらはもうだめだな、とハイドラは考えていた。 4
2023-08-07 21:52:12「緊急事態?それ、シリアスなの……?」モニカは少し表情を曇らせた。ハイドラは彼女の暗い顔を見るのが好きではなかった。「大したことじゃねえよ!ダイナソーの連中がサボってるせいで大将が困ってるから、オレが直々にあいつらのフォートに行って、身の程を思い知らせてやることにしたのさ!」 5
2023-08-07 21:54:29ハイドラは左の拳を握ってカラテを構えたが、すぐに思い直し、両腕を広げてみせた。「おっと……話し合いでな!」「マジかよ!」「話し合えるのか!?」「スゴイ!」「ああ!オレが一発、ガツンと言ってやるぜ。じゃあ、急がねえとな!そっちもマナウスの仕事、頑張れよ!」 6
2023-08-07 21:59:08「キュキューン!」ハイドラを見送るように、アマゾン川からピンク色のイルカが高く跳ね上がり、手を振った。マインドキルだ。「キュキューン!」「じゃあな!行ってくるぜ、マインドキル!」仲間たちに見送られながら、ハイドラは意気揚々と密林を走った。そして次第に、冷静さを取り戻し始めた。 7
2023-08-07 22:02:41「待てよ、勢いで飛び出してきたが、さすがに兵力が足りねえか……?」ハイドラは密林の中を駆けながら、冷静に戦略的思考を行った。「向こうはヘルレックス、ロングモーン……それから空を飛ぶウイングドテラーだ。セントールのやつはろくにしゃべれねえから、オレが話をつけるしかねえな」 8
2023-08-07 22:05:53うまく話をつけられるだろうか? もし、話し合いの途中でついカッとなってヘルレックスと殴り合いを始め、それが殺し合いに発展してしまったらどうなる? ……今度こそ、ダイナソー・ニンジャクランとサワタリ・カンパニーの全面戦争だ。そうなったらどうなる。ハイドラは思案を続けた。 9
2023-08-07 22:08:49「チクショウ、やっぱりもう少し頭数がいるな……」その時!特徴的な羽音がどこからか聞こえた。ハイドラは空を仰ぎ、ジャングルの天蓋の上を飛ぶ人影を見た! それはクワガタめいた特徴を持つバイオニンジャであった。「おい、ローゼンベルグ! いい所にいるじゃねえか!」10
2023-08-07 22:13:28ハイドラは空に向かって手を振った。「一緒に行こうぜ、ローゼンベルグ! 緊急事態なんだ!」「どうしました、ハイドラ=サン」ブンブンと低い羽音を立てながら、身長2メートル超、迷彩ニンジャ装束を着た逞しいバイオニンジャが飛来し、ハイドラのすぐ横の茂みへと着地した。 11
2023-08-07 22:15:23「まァたダイナソーが問題行動だ!反乱を起こして、リオビオの砦を閉じちまいやがった!あいつら恐竜だから、まったくどうしようもねえぜ!」「……」ローゼンベルグは首を縦にも横にも振らず、オウゴンオニクワガタじみた黒く丸い目でハイドラを見つめ、次の言葉を待った。 12
2023-08-07 22:19:11「それでよ、これからダイナソーの奴らと話をつけに行くのさ! オレの責任でな!」ハイドラはドンと胸を叩いた。「ローゼンベルグ、お前もオレの部隊に入れてやるから、一緒に行こうぜ! 途中でセントールも合流するから、それで向こうと同じ3人だ! 殴り合いになっても何とかなるだろ!」 13
2023-08-07 22:22:20「役に立つかどうかはわかりませんが、自分でよければ、お供いたします」かくしてローゼンベルグはオジギをし、ハイドラの部隊に加わったのだ。2人のバイオニンジャはリオビオに向け、密林を進んだ。ホー、ホー、ホーというエキゾチックな猿の鳴き声が、どこか遠いところから聞こえていた。 14
2023-08-07 22:25:06樹から樹を蹴って飛び渡りながら、ローゼンベルグが呼びかけた。「ところでハイドラ=サン」「この作戦中、オレのことは隊長と呼べ!」「ハイドラ隊長」「何だ!?」「以前にも、ダイナソーとの衝突があったのですか?私は新参者なので、そのあたりの事情に疎く……」 15
2023-08-07 22:28:14「ああ、そうか。なら聞かせてやるぜ。あいつらが何者なのか、そして、なんであいつらがサワタリ・カンパニーに入ったのかをな! 最初の頃はひどかったぜ。お前がウチに来た頃には、もう落ち着いてたんだ……!」 16
2023-08-07 22:30:46かくしてハイドラは語り始めた。そもそもサヴァイヴァー・ドージョーが何故このアマゾン川流域の密林に定住するようになったのかについて。そしてその後に起こった、サワタリ・カンパニーとダイナソー・ニンジャクランとのファースト・コンタクトについて……。 17
2023-08-07 22:32:37「サワタリ・カンパニー」は、かつての名を「サヴァイヴァー・ドージョー」と言った。それは今から十五年近く前に、ネオサイタマで結成された。 18
2023-08-07 22:38:32当時のサヴァイヴァー・ドージョーはごく少数のバイオニンジャで構成され、現在のような定住拠点を持たず、ヨロシサン製薬のハンター部隊に追われながら、下水道や山野で過酷なサヴァイヴァル生活を行う毎日だった。 19
2023-08-07 22:40:57紆余曲折あり、彼らはネオサイタマを飛び出して、新天地を求めて世界各地を放浪。最終的に南米大陸へとやってきた。当初、チェ・ゲバラなる人物を探すためだとフォレスト・サワタリは言っていたが、現地での入念な調査の結果、その男はもう死んでいることが解った。 20
2023-08-07 22:44:07この時点でのメンバーは、サワタリ、ハイドラ、ディスカバリー、ファーリーマン、セントール、K2、K3、そしてバイオカエルであった。リオ・シティなどの大西洋沿岸の大都市周辺には、ヨロシサンの研究所やヨロシティが点在し、バイオインゴットも比較的容易に調達することができた。 21
2023-08-07 22:47:26無論、都市部ではなくジャングルでの生活が基本となる以上、危険なバイオ原生生物や麻薬組織との戦いは避けられなかった。それでも、ジャングルは隠れ場所を探すのが容易で、暗黒メガコーポの支配領域も少ないぶん、バイオニンジャたちはネオサイタマより遥かにのびのびと暮らすことができた。 22
2023-08-07 22:50:11