無題

モーニング52号ネタばれ注意 さくやさん、ありがとうございました!
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※注意書き※庚は丙に脳内変換して下さい。

ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ ずっとずっと昔、小さな村で男の子が生まれました。名前は「丁」。しかし彼が生まれた翌月、小さな村は干ばつに襲われ、食糧が枯渇し始めました。村人は占い師に原因を占うよう求めました。

2011-11-29 13:41:45
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 占いの結果は「ニ柱の炎が村に居るため」と出ました。よくわからない結果に村人は頭を傾げましたが、誰かがひらめきました。「もしかして「庚」と「丁」の事ではないか」と。

2011-11-29 13:46:08
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 丁には兄が居ました。名前を「庚」。庚も丁もどちらも炎を表す文字です。彼らがいるから干ばつになったのだと村人は彼らの家族の元へ行き、村を出るように訴え始めました。

2011-11-29 13:50:19
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 村の外は野犬がいたり死ぬ危険が高く、家族は出るのを渋りました。しかし村の干ばつは続きます。両親は占い師に助けを請いましたが、伝えられたのは残酷なものでした。「子供、二人のうち一人を村の外に捨てるのならば村にいる事を許可しましょう。」

2011-11-29 14:04:53
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ その夜両親は話し合いました。結論を急がねば、家族で村を追放されてしまいます。父親は言いました「丁を捨てよう。庚は働けるから残す」母親は反対しました「捨てるなら庚を!賢いあの子を捨てた方がまだ生きのびるはずだから」と。

2011-11-29 14:22:05
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 両親は悩みました。そして結論を出しました。「働き手がなくなるのはきついけれど」「生まれたばかりのこの子を捨てるのはしのびないけれど」村に残れるならまた子を作れば良いのだから。両親は"二人を捨てる"事にしました。

2011-11-29 14:33:37
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 庚は丁をあやしていました。身体を左右に揺らすと心地好いのか丁はよく眠ります。先程、母親の乳を飲んだので満足そうに眠っています。穏やかな寝息にこちらまで眠くなりそうです。眠気を堪えていると、母親に呼ばれました。

2011-11-29 14:43:56
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ さっきまでの眠気が嘘のように飛び、目が冴えました。自分達を取り巻く話しは庚も知っています。両親がどう言う結論を出すのか、庚はなんとなく察していました。伝えられた予想通りの両親の結論に庚は静かに頷きました。その日の昼前に村から二人の子供がいなくなりました。

2011-11-29 14:55:50
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

二人が村を出て山深くに迷い込みました。村がその後、豊かになったのは知りません。生き残るのに精一杯でした。野犬に襲われたりもしました。まだ赤ん坊だった丁がお腹をすかしてぐずると鹿の乳を飲ませたりして。必死に生き延びて、気づくと丁は一人で歩けるまでに成長していました。

2011-11-29 15:13:22
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 森の中を駆け回る事、数年。庚は他の村に出ようと思えば出れる道を知りました。丁を預けようとその村へ行こうとしましたが、その度に捨てられた時の記憶が蘇り、足がすくんで動けなくなりました。森に住み続けるの悪くないかもしれない。そう思い始めた時でした。

2011-11-29 15:28:30
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 森に男が迷い込みました。勝手に出ていくだろうと思い、数日ほって置いても男はぐるぐる迷うだけで、出れそうにありませんでした。丁が興味深げに男を見ています。男が迷っている間、庚は思いついた事を実行する事に決め、丁の手をしっかり握りました。

2011-11-29 15:35:39
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 丁はゆっくりと、ですが確実に不思議と病気もなく、教えた事をするすると覚える子供になりました。「丁」「なに?」「森に男が迷いこんだろう?」「うん。」「そいつと一緒に村に行きたいと思うか?」「にいさんと一緒がいい。」「そうか。」「うん。」

2011-11-29 15:55:09
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 「明日、あの男を村まで案内しようと思う。一緒にくるか?それとも・・・」「一緒に行く!」 言葉を遮る丁の瞳が輝く。「そうか。そうだ。明日、帰ったらひとつ魔法を教えようか。」庚が悪戯っぽく笑う。「ホント?」丁の瞳がさらにきらきらと輝く。

2011-11-29 16:06:08
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 「やくそくね!」丁がにぱっと笑う。「ああ。だから早く寝ろ」うながすと、丁は大きく頷きころりと寝床に横になる。「おやすみー」そう言うと丁はすぐに寝息をたてた。「おやすみ。丁。」庚は今、出来るだけの笑顔で、丁の頭を撫でた。

2011-11-29 16:18:50
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 男の前に人らしい生き物が立っていた。特徴的なのは大きな葉の面。その腕には2・3歳ほどの子供を抱いていた。「誰だ?」警戒しながら男は問う。「森の精!」あっけらかんとした答えが返る。「ね、迷ってるんでしょ?だったら取引をしよう!」朝の森に悪戯っぽい声が響いた

2011-11-29 16:38:02
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 森の夜が明ける。キンと冷えた寒さで男は目を覚ます。秋の森は食べ物が豊かで食うに困らなかったが、このまま迷い続けるのではとの不安が募る。また宛てもなくうろつこうかどうしようかと、一日の計画を立てている時に、ふいに話しかけられた。

2011-11-29 16:27:11
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 「あんたの村ってさぁどこ?こことか?」森の精と名乗った生き物は男の話しを聞かず、一方的に話しをつづける。簡単にまとめると帰り道を案内するから子供を連れていけとの事だ。「わ・・・わかった・・・」男がうなずくと。森の精はぐいっと子供を男に押し付けた。

2011-11-29 16:54:03
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 「こいつね、あんたみたいに森で迷ってさ、野垂れ死には別にいいんだけど。森を汚されるのは迷惑なんだよね」ざわりと木の葉が揺れ男はびくりと身を竦める。「聞くところ裕福な村みたいだし、子供一人増えた所で大丈夫だよね?」「ああ・・・」たじろぎながらも男は答えた。

2011-11-29 17:02:03
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 気づくと男は見慣れた道を子供を抱えて歩いていた。山菜を取りに行き、森で迷い、途中で・・・途中で・・・?思い返そうとしても頭が靄がかかったように思い出せない。抱えてる子供が「丁」と言うのだけは思い出せた。村に帰ると霊か何かに化かされたんだと男はからかわれた

2011-11-29 17:18:34
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 丁も丁で名前しか覚えてないらしく、出身の村も家族の事も聞いても頭を捻るか、覚えてない。としか答えなかった。男の母親が、頭の回る丁を気に入りそのまま男の所に住む事になった。

2011-11-29 17:32:40
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 無事、村に受け入れてもらえただろうか。星空をみながら庚は思う。丁は聡い子だし、村の働き手としても動けるからきっと大丈夫だろう。そう思いながらも、送り出した方角を気にかける自分がいる。(帰ってくる事はないのにな・・・)苦笑して持っている面に視線を落とした。

2011-11-29 17:45:39
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

「(もしも)明日、(丁が)帰っ(てきてしまっ)たらひとつ魔法を教えようか。」庚は目を細める。つまらない約束をしたと思う。「魔法はあるんだよ。丁。使い方を皆、忘れただけで。」ぽつりとこぼす言葉は闇に溶けていく。手にしている面がちりちりと煙りを立てずに燃えていた。

2011-11-29 18:02:53
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

庚は丁と男の記憶を燃やした。丁が過去に苦しまないように。男が余計な事を言わないように。「どうかその村では・・・」村の方角をじっと見る「幸せに・・・」庚の姿は夕闇の中に溶けた。森がざわりと闇の色を濃くした。丁の箸をぴたりと止める。「どうした?」男が問う。

2011-11-29 18:27:38
ちくま・たくあん牛乳@出現率低 @sakuyatikuma

@Hozuki_bot_ 「いえ何も」丁はふるふると頭をふった。(何か聞こえた気がしたのだけど・・・)考えても仕方ないので丁は箸を動かす事に集中した。世話になっている男は狩りが苦手らしい。狩りに行ってるはずなのに山菜や薬草ばかり採って帰ってくる。おかげで食事は肉よりも野菜が目立つ

2011-11-29 18:38:57