Sekkai氏による、5類分類以降の日本でのコロナの状況

sekkai @sekkai

2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に再分類された後、日本では感染の流行状態、感染についての基本的な情報などが手に入りにくくなってきました。少しでもお役に立てればと思い、備忘録がてら日頃まとめている情報から役立ちそうなものをピックアップして共有いたします。 (1/25)

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論文や報告に由来するものは平文で記し、それに基づく私個人の感想は [所感] に続けて記載します。 [目次] Q1. 2023年8月時点の日本で新型コロナウイルス感染症は流行しているのか。 Q2. 新型コロナウイルス感染症はオミクロン変異体で終わりなのか。 (2/25)

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Q3. マスクは新型コロナウイルス感染症を防ぐのに役立つか。 Q4. 新型コロナウイルス感染症に後遺症はあるのか、ワクチンで予防できるのか。 Q5. 新型コロナウイルス感染症後に他の疾患の発症リスクは増加するか。 Q6. 新型コロナウイルス感染症後に自己免疫疾患の発症リスクは増加するか。 (3/25)

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Q7. 過去に感染があれば再感染時の症状は軽く済むのか。 (4/25)

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Q1. 2023年8月時点の日本で新型コロナウイルス感染症は流行しているのか。 A1. 流行している。2023年8月時点で日本の新型コロナウイルス感染症入院者数はアメリカの2倍を超える2万人以上となっている。 (5/25) pic.twitter.com/YSWZcIUTCJ

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もともと日本は2022年2月頃まで新型コロナウイルス感染症での入院患者数を世界的にもかなり低く抑えていたが、2023年6月から世界に先駆けて入院患者が増加しており、現在アメリカの2倍近くの入院患者数となっている。 (6/25) pic.twitter.com/hKr2a2u6t8

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Q2. 新型コロナウイルス感染症はこのままただの風邪になっていくのか。 A2. 今なお変異を続けており、現時点では不明。現在日本の主系統 (主なウイルス) は米国同様 XBB.1.16 であるが、ヨーロッパや台湾などと同様に急速に EG.5 系統の割合が増加しており注視が必要。 (7/25) tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/world…

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EG.5 は2023年7月23日に WHO が VUM (要注視変異体) に指定している。8月9日時点での初期評価では、免疫回避能の向上が予想される一方で現時点で病原性は増えていないのではないかと考えられている。 (8/25) who.int/docs/default-s…

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また、7月末、デンマークとイスラエルから30箇所を超えるスパイクタンパク変異を持つ BA.2.86 が報告され、8月17日にWHO は新たな VUM に指定した。現時点で感染力や病原性は不明。 (9/25)

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Q3. マスクは新型コロナウイルス感染症防止に役立つか。 A3. 役立つ。アメリカ・マサチューセッツ州の幼小中高70校33,000人以上を対象にした検討で、双方がマスクをしていると非マスク時に比べ感染伝播が 0.12倍 [0.04-0.40] に減少 (感染 88% 減)。(10/25) jamanetwork.com/journals/jama-…

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同様の傾向は2022年にも報告されており、マスク着用ありの学校とそうでない学校を比較したところ1,000人当たりの感染者数はマスク着用なしの学校で 44.9 人 [32.6-57.1] 増え、特に教職者では 81.7 人 [59.3-104.1] 増とより強い影響を受けた。 (11/25) nejm.org/doi/full/10.10…

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[所感] 2023年に入り「子どもの笑顔を取り戻そう」というスローガンの元、教育現場からのマスクの取り上げが盛んに行われましたが、それによって感染が激増し学級閉鎖や休校、行事中止が相次いだのは既報の通りです。これも必要時のマスクで十分予防できていたのではないでしょうか。(12/25)

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Q4. 新型コロナウイルス感染症に後遺症はあるのか、ワクチンで予防できるのか。 A4. 多様な後遺症が報告されており、ワクチンでリスクが減少できると考えられる。COVID-19 の診断となった22,744名の中で、感染から90日後に症状が続いていたのは18.2% であった。 (13/25) medrxiv.org/content/10.110…

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後遺症患者のうち、最も多かった症状が倦怠感 (70.6%) 集中力の低下 (59.6%) であった。後遺症患者のうち15.6% が就労・就学時間の減少が必要で, 2.6% が休業・休学から復帰できていなかった。 (14/25)

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4回以上ワクチン接種をしている群と比較し、2回以下の接種群での後遺症リスクは 1.6 倍 [1.3-1.9] 3回の接種群では1.4 倍 [1.3-1.6] と回数に依存して後遺症リスクは低減していた。 (15/25)

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[所感] 上記は peer-review を経ていない preprint であるということに注意が必要です。一方で、登録患者の 94% で3回以上のワクチン接種を行っている群の20%近くで3ヶ月以上の後遺症が続くというのは少しショッキングで、後遺症予防という観点からも十分な回数のワクチン接種が望まれます。 (16/25)

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Q5. 新型コロナウイルス感染症後に他の疾患の発症リスクは増加するか。 A5. 心血管系疾患等や全死亡が増加する。535,186名を対象にした後方視コホート研究で、新型コロナウイルス感染後では心血管イベント死 2.86 倍 [1.25-6.51] 全死亡 4.16 倍 [2.11-8.21] (cont.) (17/25) thelancet.com/journals/eclin…

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心不全 1.82 倍 [1.65-2.01] 心房細動1.31倍 [1.16-1.48] 冠動脈疾患 1.32 倍 [1.07-1.63] 深部静脈血栓症 1.74倍 [1.27-2.37] 慢性肺疾患 1.61倍 [1.40-1.85] ARDS 1.89 倍 [1.04-3.43] 末期腎不全 1.76倍 [1.31-2.38] 急性腎障害 2.14 倍 [1.69-2.71] に増える。 (18/25)

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Q6. 新型コロナウイルス感染症後に自己免疫疾患の発症リスクは増加するか。 A6. 感染で自己免疫疾患のリスクは上昇し、ワクチン接種でリスクが低下する。2020年4月から2022年11月まで、香港の COVID-19 患者 1,028,721 名と非感染者 3,168,467 名を後方視で比較。 (19/25) thelancet.com/journals/eclin…

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COVID-19 は悪性貧血 1.72 倍 [1.12-2.64] 脊椎関節炎 1.32 倍 [1.03-1.69] 関節リウマチ 1.29倍 [1.09-1.54] 乾癬 1.42倍 [1.13-1.78] 天疱瘡 2.39 倍 [1.83-3.11] バセドウ病 1.30 倍 [1.10-1.54] 抗リン脂質抗体症候群 2.12 倍 [1.47-3.05] 免疫性血小板減少症 2.1 倍 [1.82-2.43] (cont.) (20/25)

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多発性硬化症 2.66 倍 [1.17-6.05] 血管炎 1.46 倍 [1.04-2.04] と各種自己免疫性疾患を増加させた。 (Cont.) (21/25)

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一方、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種は自己免疫性疾患リスクを低下させた。自己免疫性関節炎 0.74 倍 [0.65–0.84] 天疱瘡 0.45倍 [0.29–0.70] 免疫性血小板減少症 0.41倍 [0.33–0.52] バセドウ病 0.58倍 [0.43–0.77]抗リン脂質抗体症候群 0.55 倍 [0.31–0.99] SLE 0.29倍 [0.18–0.47] (22/25)

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[所感] 自己免疫性疾患と新型コロナウイルス感染症、そして mRNA ワクチンの関連については盛んに議論されていましたが、感染は数多くの自己免疫性疾患のトリガーになる可能性がある一方、ワクチン接種により自己免疫性疾患のリスクは低下しそうであるということがわかってきました。(23/25)

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Q7. 過去に感染があれば再感染時の症状は軽く済むのか。 A7. 必ずしもそうでなく、再感染で重症化する可能性がある。米国退役軍人コホートの解析では、再感染者の死亡リスクは非再感染と比較し 2.17 倍 [1.93-2.45] 入院リスクは 3.32 倍 [3.13-3.51] と上昇している。(24/25) nature.com/articles/s4159…