しろちち氏による「ミラルパに仕える僧会の内実と限界」について

しろちち＠C102日曜東ヒ14b @shirochichi0707

先週の漫画版 #ナウシカ で取り上げた、皇弟ミラルパを通じた土鬼帝国の「問題」について、今回はまた別の角度から検証してみましょう。今回取り上げるのは、ミラルパに仕える「僧会」の内実とその限界―せいぜいミラルパの秘書集団どまりで官僚機構とは言い難かった点―についてです。 twitter.com/shirochichi070…

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漫画版の ＃ナウシカ の中でひときわ強烈な敵役として土鬼神聖皇弟ミラルパが登場しますが、実は彼の行動にはおよそ皇帝らしからぬ、或いは帝国の「問題」を浮き彫りにする側面があります。以下、順に見ていきましょう。 pic.twitter.com/PMSME9JvLM

2023-08-16 19:50:37

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まず作中での描写をおさらいすると、僧会とは、土鬼帝国の統治と民衆教化のためミラルパにより創設された、帝国の軍行政・宗教を担う僧侶の集団となります。同時にまた僧会は僧兵や「戦艦」などの軍事力を有しますが、こちらは対外より対内＝諸部族統制の為のものであることは以前論じた通りです。 pic.twitter.com/X5gWDAQU3H

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以上からは僧会は、ソ連共産党のような、国を支配するあるいは国そのものとも言える強力な官僚集団に見えます。しかし、よくよく実態を見ると、僧会には組織としてかなり脆弱な面が見られます。 https://t.co/sAQq1HE794

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例えば地方統治。土鬼は51もの大小部族国家の集合体で、その族長には僧会に従う僧侶が就きます。が、彼らは僧会本部派遣というより、寧ろ族長が僧侶に「なった」感じです。おまけにマニはともかく、サパタなど皇帝がいる戦場でその側近(チヤルカ）に皇帝批判を叫ぶなど、およそ従順とは言い難い。 https://t.co/C67NJCTyh7

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民衆レベルは更に辛辣で、部族兵は僧兵を「威張り腐るだけの役立たず」とバカにし、農民たちも僧会の面々を「人を奴隷扱いするクセに！」と罵るなど、その心証は最悪に近いといえます。 pic.twitter.com/jPvyEI3HhB

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そんな僧会が力を振るえるのは偏にミラルパの力あってのことです。実際ミラルパはその「超常の力」によりケチャのような市井の民にまで畏怖されており、僧会はそのミラルパの「耳目・手足」だからこそ恐れられていると言えます。要はミラルパ無しでは烏合の衆です。 pic.twitter.com/tQx5KV2AVO

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このことに関連して気になるのは、僧会における「序列」です。実は作中では、チヤルカがサパタ包囲軍司令官に任命されている以外、僧会各員の序列・位階は明らかにされておらず、僅かに「長老院」なる幹部会らしきものの存在が伺われるだけです。 pic.twitter.com/UmQsAV83yr

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この「長老院」も議決機関なのか諮問機関かも定かならず、まして部門毎の責任者となると影形も見えません。そのせいか土鬼大海嘯とミラルパ重篤という一大事に、シュワの僧会の面々は何も決められず、みすみすナムリスによる簒奪を許し、更にはヴ王による侵攻にも殆ど抵抗できない為体。 https://t.co/ewFI4EY3Eq

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そうして蔓延る責任回避と事なかれ主義。これはナムリスならずとも「クソ坊主共」とウンザリしてくるわけです。てかミラルパも、言い訳ばかりする部下を何かゴミを見るような冷たい目（笑）で見てますね。 pic.twitter.com/tRAJTWd3Px

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こうした末期的な組織では忖度がトップに入る情報を歪ませ、それがトップ含めた組織全体を現実から遊離させ瓦解させていく…というのが地下壕のチョビ髭やクレムリンの主含めお決まりのパターンです。ではミラルパはどうか…というと、僧会を手足・道具としてしか見ず、「超常の力」で自分で（続く） pic.twitter.com/lmRDQyHIGW

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なんでもこなしてしまう分、「裸の王様」的な組織諸共の劣化はあまり見られません（というよりここまで見てきたように僧会が組織の体をなしていない）。ですがミラルパにも「僧会から毒された」歪みといえるものが一点あります。それは病的なまでの「青き衣の者」への恐怖とそれによる暴走です。

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即ち兄ナムリスが語るには、ミラルパは「青き衣の者」ー土着の民の救世主にして帝国の敵ーと思われる者が現れたと聞くたびに取り乱し、容疑者を捕えては八つ裂きにしてきました。では、なにゆえミラルパはナウシカ含めた「青き衣の者」をそこまで恐れたのでしょうか。 pic.twitter.com/Zt2anMDdsx

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実はここに「僧会を通じた歪み」が入り込みます。即ち、サパタでミラルパが語るところでは、彼にとって「青き衣の者」とは、僧会が土鬼の民から邪教(神聖皇帝が滅ぼした先代クルバルカ王朝が奉じた信仰）を十分払拭できていないがゆえに生じる「危険な芽」でした。 https://t.co/tJNxoXtszB

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ですが、先に見たように実際の「不満の種」は教化の不足ではなく、僧会による暴政にあり、「青き衣の者」はその不満への旗頭でした。更に言えば、僧会の教義と「邪教の教え」は民衆レベルではゴチャゴチャに混淆しており、その点でもミラルパの「不安」は主客が転倒していたと言えます。 https://t.co/HLRI6fALZY

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即ち、ミラルパはこの期に及んで「僧会による教化が十分行き届けば帝国は平和になる→不十分だから「青き衣の者」等が出てくる、もっと厳しくせねば」という、「僧会を通じた平和」を無意識的にとはいえ無邪気に信じていたことになります。正に「嘘も百年続ければ本人まで信じだす」有様ですね。 pic.twitter.com/uKH7SMSrS2

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