ステップス・オン・ザ・グリッチ #3
【当アカウントは】 ・極めて強力なニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の最新話を連載している。 ・連載中の最新話は新シーズンの第1話である。 ・連載のまとめは下記のサイトで読む事ができる。 diehardtales.com/n/n40a3d12b1e96
2024-02-02 21:40:01【これまでのあらすじ】 アルカナム社のネオサイタマ支店に勤める若きカチグミ・サラリマンであるイサムラは、ある日の夜、同社の尋問官によって制圧され、厳しい尋問を受ける。 自分は何をやったのか?社内UNIX端末への不正アクセスの咎を着せられたイサムラだが、いっさい覚えがない。
2024-02-02 21:46:37【これまでのあらすじ】 危険なライトを網膜に照射され、自宅から有無を言わさず連行されるイサムラ。 そして30分後、無人の彼の部屋の防犯カメラには、赤黒のニンジャの映像が焼きつく。皆さんがご存知のニンジャスレイヤーであった。 だが今は再び現時点に時間を戻し、イサムラを追っていこう。
2024-02-02 21:50:48【ステップス・オン・ザ・グリッチ】#3 pic.twitter.com/ygOYcx1GXu
2024-02-02 21:52:06「アイエエエエ!」薄暗い地下駐車場を引きずられたイサムラは、尻を蹴られるようにして、マッシヴな走行車輌の後部に叩き込まれた。「何もやっていないんです!本当です!」「口頭による君の主張は問題ではない」ルシンダ尋問官は隣に乗り込む。向かい合わせの席に二人のクローンヤクザが座る。 1
2024-02-02 21:55:05鼻詰まりのベヒモスじみた駆動音が車内に響き、装甲ビークルが走り出した。スロープを上り、夜のネオサイタマへ走り出す。「ど……何処へ向かうんですか」「社の施設だ」「なぜ、僕はこんな目に遭わされているんですか?これはUCL(ユニバーサル・シティ法)に反する扱いで……!」「法だと?」 2
2024-02-02 21:59:35ルシンダ尋問官の口角が動いた。「我が社の社内規約は、あらゆる都市法に優先する。そんな事ではコンプライアンス意識が思いやられるな、イサムラ=サン。情報漏洩の容疑が実際、真実味を帯びてきたことだ」「アイエエエエ……!」ビークルは早々にハイウェイに入った。 3
2024-02-02 22:03:25安い。安い。実際安い。上空を飛ぶマグロツェッペリンの広告音声が、この移動牢獄の中にも微かに届く。なんと隔てられてしまった事だろう。ハイウェイの隔壁の向こうには夜のネオサイタマが広がる。毒々しくも美しい。数時間前は、イサムラもあの中でノミカイしていたというのに……。 4
2024-02-02 22:07:20「本当に僕は何も……アイエッ!?」イサムラは怯んだ。ルシンダ尋問官はイサムラを押さえると、車内UNIXのケーブルを引き出し、彼の首筋のLAN端子に接続した。ブフーン。ノイズが鳴り、小型車載モニタに【システム総じ緑な】のミンチョ文字が灯った。「先に済ませておくとしよう」彼女は呟いた。 5
2024-02-02 22:12:56画面にアルカナム社章が浮かび消え、01ノイズの中から居酒屋の光景が生じた。(アルカナム株を買おうと思うんだけど、今、買い時ですか?)(教えられないよ。コン……)(コンプライアンス!)(ちょっとノれてないでしょ、イサムラ=サン)マミコが隣に座り、小声で咎めた。(疲れてる?) 6
2024-02-02 22:19:50何故?どうして映像記憶が吸い出されている?「ア……ガ……ガ!」(ヤメテ!)イサムラは制止しようとするが、口も身体もうまく動かない。さらにはルシンダ尋問官は再び例のライトを網膜に照射する!サイバネ・アイがハレーションを起こす!「アバーッ!?ナニ……コレ……!」「マスターキーだ」 7
2024-02-02 22:22:17「ナニ……ソレ……」「知らんものか。末端社員はそういうものなのか?まあいい」ルシンダは少し考え、結局、説明した。「我が社の社員はサイバネ・アイを通じ、24時間、そのライフログを社内システムに共有している。有事においてはセキュリティを解放し、任意にログ解析を行う。このライトは鍵だ」8
2024-02-02 22:26:15「ソンナ……コトッテ……」「プライバシーが欲しければ上級社員を目指す事だ。モチベーションが湧いたか?どのみち、今後の君が出世できるかどうかは……フッ」面白くもなさそうに、ルシンダは鼻を鳴らし、キーをタイプした。映像が巻き戻しと早送りを往復する。イサムラの個人的な視聴覚体験だ。 9
2024-02-02 22:30:55(酔っ払って忘れちゃう前に連絡先交換、しよ)マミコが端末を差し出す。イサムラは咳払いし、力強く頷いた。(勿論、勿論だよ)恋の予感。「恋の予感。よかった事だな」ルシンダが淡々と呟いた。小窓にマミコの網膜クローズアップが映る。読み上げられる情報。「ヤシタ・マミコ。犯罪歴無し」 10
2024-02-02 22:36:02ニューロン反応から、イサムラの漠然とした心の動きも解析され、さらには会話した相手の情報すらも何らかのデータベース参照されている。朦朧としながらイサムラは震えた。何たる容赦なき解析か。だがルシンダは「違うな」と言った。「この女はシロだ。情報漏洩の意志も確認できない……」11
2024-02-02 22:38:51ルシンダは時間を巻き戻す。解析に時間を要する。もう一度彼女は「マスターキー」を網膜に照射した。イサムラは痙攣した。そしてルシンダは確かめるように言った。「オペレイション・ムーンチャイルド」「……!」「オペレイション・ムーンチャイルド」「……!」「……陽性反応を確認。深いな」 12
2024-02-02 22:42:51ルシンダは嘆息した。「まったく面倒をかけさせる……洗い直しだ」ギュイイイイ!脳が絞られ、引き伸ばされるような感覚に、イサムラは声にならない悲鳴をあげた。やがて視覚映像はタタミ敷きのザゼンルームに辿り着く。見事な枝ぶりのトショウ・ボンサイ。笙リードの音が不協和音となった。 13
2024-02-02 22:51:39「なん、がッ、なにコレ、さっきよりも……」イサムラは譫言を発し、激しく痙攣する。ルシンダは答えた。「死にはしない。心を強く持て。君の陽性反応を提出し、本社からの承認を得た。深く探る」「アババババーッ……!」(そこ、あいていますか?ドーモ)UCA本社001001他部署の男0101。 14
2024-02-02 22:56:45ジュー・ウェアの襟元を正す01001自分はまさにカチグミ・サラリマン10011アルカナムは右肩上がりの01001「アババーッ!」01001「来た」ルシンダは身を乗り出した。モニタには、ザゼン状態で意識不明瞭であった筈のイサムラの視覚情報が、ノイズと共に映し出されていた。イサムラは朦朧と訝しんだ。 15
2024-02-02 23:01:06「記憶にすら残らぬ記憶か。だが妙だな……電子的なハッキングの痕跡を確認できない」痙攣しながら、イサムラはルシンダの言葉を反芻する。映像。ザゼン・ルーム。イサムラはゆっくりと010010立ち上がり、他部署の男を0101見る。男はイサムラ同様、ボンサイを見ながらゼン仮眠状態にある。 16
2024-02-02 23:06:00男の着慣れないジュー・ウェアの懐が膨らんでいる。ゼンの境地を迎える瞬間においてすら手放さぬ重要文書だ。イサムラは手を動かし……抜き取った。マキモノを。その場でイサムラはマキモノの紐をほどき、開いた。ホロ文書が眼前に照射された。イサムラの焦点が凄まじい速度で文字の上を滑った。 17
2024-02-02 23:10:02数秒。イサムラはホロ・マキモノを閉じ、他部署の男の懐に再び戻した。そして座り直し0100101001「アバーッ!」イサムラは仰け反り、目鼻から出血!ルシンダはケーブルをイサムラの首から引き抜き、ログ・オフさせた。「アバババーッ!」「蘇生させろ」「ハイヨロコンデー!」クローンヤクザAED! 18
2024-02-02 23:14:05「グワーッ!」イサムラは意識を取り戻す!ルシンダはその様子をじっと見た。クローンヤクザは丁寧にAEDを元の位置に戻している。「安心しろ。車内尋問はここまでだ。これ以上は専用設備を用いて精査する必要がある」「ア、アイエエエ……?」「君は……平たく言うなら、ラジコンにされていた」 19
2024-02-02 23:18:24