- wholescape
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すると間もなくまた投げ出された。吾輩は投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。その時に営業課長と云う者はつくづくいやになった。この間営業課長のお得意先を盗んでこの返報をしてやってから、やっと胸のツカエが下りた。
2023-06-16 20:43:48吾輩が最後につまみ出されようとしたときに、支店長が騒々しい何だといいながら出て来た。副支店長は吾輩をぶら下げて支店長の方へ向けてこの手に職なしの行員がいくら出しても出しても材料会議へ来て困りますという。主人は鼻の下の黒い毛を撚りながら吾輩の顔をしばらく眺めておったが、やがて
2023-06-16 20:43:48そんなら内へ置いてやれといったまま奥へ這入ってしまった。支店長はあまり口を聞かぬ人と見えた。副支店長は口惜しそうに吾輩を材料会議へ放り出した。かくして吾輩はついにこの支店を自分の職場と決める事にしたのである。
2023-06-16 20:43:48吾輩の支店長は滅多に吾輩と顔を合せる事がない。得意は相続案件だそうだ。得意先廻りから帰ると終日支店長室に這入ったぎりほとんど出て来る事がない。支店のものは大変な勉強家だと思っている。当人も勉強家であるかのごとく見せている。しかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。
2023-06-16 20:43:49吾輩は時々忍び足に彼の支店長室を覗いて見るが、彼はよく昼寝をしている事がある。時々読みかけてある本の上に涎をたらしている。彼は胃弱で皮膚の色が淡黄色を帯びて弾力のない不活溌な徴候をあらわしている。その癖に早飯を食う。早飯を食った後で太田胃酸を飲む。飲んだ後で書物をひろげる。
2023-06-16 20:43:49二三ページ読むと眠くなる。涎を本の上へ垂らす。これが彼の毎夜繰り返す日課である。吾輩は平行員ながら時々考える事がある。支店長というものは実に楽なものだ。行員と生まれたら支店長となるに限る。こんなに寝ていて勤まるものなら平行員にでも出来ぬ事はないと。
2023-06-16 20:43:49そう思ったのに、たまちゃんは支店長にはなれず、永年の支店長代理です。 旧アカウントが乗っ取られてしまったので再掲します。 よろしくお願いします🥺
2023-06-16 20:43:50