デッド! デダー・ザン・デッド! 全セクション版
#1
【ニンジャスレイヤーとは】 宇宙開発が頓挫し、人々が電子ネットワークに耽溺する近未来。 平安時代のハラキリ儀式により姿を消した闇の支配者「ニンジャ」たちの魂が、今、無作為の人々に憑依融合し、恐るべき混沌の世界を作り出していた。 走れ! ニンジャスレイヤー! pic.twitter.com/Mws8969FxM
2023-07-27 21:37:18【夏!ニンジャ特別放送】 夏!ニンジャ特別放送では、「ニンジャスレイヤーPLUS」内に掲載されているエピソード2つを、Twitter連載します。#ニンジャスレイヤー タグで実況できる! 🍣そしてこちらのメンバーシップでぜひPLUSしてください🍣 diehardtales.com/m/m1d0f417d09bf ◆今から始まります◆
2023-07-27 21:40:42【このエピソードは】 ・フジキド・ケンジがニンジャスレイヤーとしての闘いを終えた後、そして、新たなニンジャスレイヤーが現れるより以前のサブストーリー ・舞台は第3部でアマクダリ・セクトが滅びてから、まださほど時が経っていない時期のネオサイタマ ・主人公はヤモト・コキ
2023-07-27 21:43:20重金属酸性雨降りしきるネオサイタマに雷鳴が轟き、廃東京タワーに落ちた雷がスモッグを白く照らした。 1
2023-07-27 21:48:30無数の広告ネオン看板が、自然現象に負けじと蛍光色のメッセージを滲ませる。「おマミ」「真剣者」「ピーチ桃」「夢子」「一杯やっちゃって」「電話王子様」。今夜のネオサイタマは重金属雲が濃く、2年前に割れた月も、見えはしない。 2
2023-07-27 21:51:13隣り合ったビルそれぞれの屋上にニンジャ同士が対峙し、激しい雷光を受けていた。まず一方、第三信頼銀行のビルには対照的な二人。桜色に燐光を発するマフラーを巻き、イアイ・カタナを携えた、小柄な黒髪の若い娘。その隣には、ズタズタのカソックコートの裾を風に揺らす不吉な大柄の怪人だ。 3
2023-07-27 21:54:21「ドーモ。ヤモト・コキです」「ジェノサイドです」彼らは対岸のビルの二人にむかってオジギした。アイサツは神聖不可侵の掟だ。古事記にも書かれている。 ふたりの敵意溢れる視線は、対岸の複合コケシ雑居ビルの屋上、ライトアップされたオイランバニーアニメ看板の上に直立する奇怪なニンジャ二名に向けられていた。 こちらの二名はヤモトらとは対照的に、余裕溢れる侮蔑の笑みを隠そうともしなかった。それでもアイサツには応じた。ニンジャの礼儀作法の掟だからだ。 「ドーモ。シュガーブライドです」「サッドネスです」 4
2023-07-27 21:56:34シュガーブライドはオイラン花嫁衣装を着た少女だった。血で汚れたバイオミンクの白いショールで首を覆い、両手それぞれに不気味な巨大鉈を掴んでいる。 鉈の柄は銃身である。つまり、銃身に物騒な分厚い刃が生えているのだ。顔には十字の縫い跡があり、ホチキス状のもので縫合されている。右目は縦に二つ配置されていた。つまり、目が三つだ。その胸は不自然なまでに豊満であった。 5
2023-07-27 22:00:34一方、サッドネスは紐のように痩せたニンジャで、拷問器具めいた不気味な黒いレザーの装束で全身を覆っている。頭頂部はジッパー式で開いており、ピンクの髪がモヒカンめいて飛び出し、逆立っている。 こめかみを貫いて小振りのカタナが。そして心臓を貫いてノダチ・ケン・カタナが突き刺さっている。どちらも明らかに致命傷である。だが、平気なのだ。なぜなら彼は死体だからだ。 否、彼だけではない。この場のニンジャ全四名のうち、三名が死者であった。死してなお動くニンジャ。即ち、ゾンビーニンジャである! 6
2023-07-27 22:02:26「アッハァー!よくまあアタシらの事、ここまで追いかけて……暇なの?ねえ、暇なんだねえ?今宵もいい夜だってのに……!」シュガーブライドが舌なめずりした。紫の舌だ。サッドネスは心臓に刺さったノダチ・ケンを無雑作に引き抜き、構えた。 「ま、そう言うなシュガー。まだちょっとだけ時間あるぜ! 相手してやろうじゃん!」 対峙する二者は無言。ジェノサイドのコートの中から鎖付きバズソーが足元に落ちた。ヤモトの目が桜色に燃えた。 KABOOOOM!稲妻がふたたび空を裂き、同時に飛んだ四者の影絵が乱れ飛んだ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」 第三信頼銀行!複合コケシ雑居ビル!残像とともにニンジャが行き来し、刃と刃が打ち合って、遥か下のストリートに火花やオリガミ残骸や腐肉が落ちていく。 7
2023-07-27 22:06:32「アンタ変なの!生きてやがってサ!」シュガーブライドが右手のショットガン鉈を空中のヤモトに向けた。BLAMN!ヤモトはオリガミを蹴り、空中で二段ジャンプして散弾を避け、キリモミ回転しながらシュガーブライドに斬りつけた。 8
2023-07-27 22:09:06「イヤーッ!」「アハーッ!」イアイ斬撃を左手のショットガン鉈で弾き返すと、シュガーブライドは三つの目を開き、耳まで裂けた口を笑顔に歪めた。ノコギリめいた歯の間から紫の舌がチロチロと揺れた。「なァーんだよォお前ェェーッ!」「お前こそ……何なんだ!」「死体に決まってンじゃんよォ!」9
2023-07-27 22:11:10ギュイイイ!そこへバズソーが襲う!シュガーブライドはバック転で回避!入れ替わりにサッドネス!バズソーがノダチを打ち返し、サッドネスをバラバラの肉片に変えるべく大蛇めいて跳ねる!サッドネスは踊るようにノダチを振り、バズソーの平面を蹴って跳躍、涎を撒いいて狂い笑う!「イヒヒーッ!」10
2023-07-27 22:14:44四者は激しい打ち合いを経て、お互いのもとの陣地に着地した。シュガーブライドはショットガン鉈をスピンさせて嘲笑い、サッドネスはこめかみの刃を抜き差しして挑発した。 「狙いは、何だ!」ヤモトが叫んだ。シュガーブライドは煩わしげに答えた。「だからァ……せっかく街が死にかけてきてるのに、あンたらみたいな生きた人間は、気持ち、悪、い!――終わらせてやンの。ネオサイタマを正しい形にしようッての!」 そしてジェノサイドに向かって言った。「だからアンタもこっち来なよ。一緒に、そこの女、フクロにしヨ。大歓迎だヨ!」「俺みてェなゾンビーが増えるのか?」「うん、要はね、全人口!皆んながなるンだゼ!楽しいヨ!」 11
2023-07-27 22:18:51「ロンドン、聞いた事あるか? あそこも生きた奴いねえって話じゃん。俺の街も、クールさで負けたくねェ!」サッドネスが付け加えた。「心残りは "垓大軒(ガイダイケン)" のラーメン……。いや違えな、ガイダイケンのおやじはゾンビーになってもラーメンくらい作れる。いや違えな、もっとクールなラーメンになるじゃん。ゾーンビーラーメン。ソー・クール。な!」 「俺みてェなゾンビーが増える。そりゃ、考え得る可能性の中で最低最悪の鬱陶しさだ」ジェノサイドは唾を吐いた。「てめェら構ってる時点で最低最悪に鬱陶しいが、輪をかけて最低最悪だ」 「Gee」シュガーブライドは顔をしかめ、サッドネスと目をみかわした。サッドネスは肩をすくめて言った。「アホはほっとけ」 12
2023-07-27 22:23:33「そンなら、もういい。所詮アンタら、準備も根性も足りなかったンだよねェ!」シュガーブライドは鉈であさっての方角を指し示した。ヤモトとジェノサイドはそちらを見た。それは……ナムサン! 表面に光学ステルスコートを施した黒いゴーストマグロツェッペリンであった! 「ンンー時間通り!」 サッドネスは芝居がかって感嘆したのち、ショールを掴んでシュガーブライドの小柄な体を持ち上げ、高速接近する機影めがけて放り投げた。そして自らも跳んだ。「イヤーッ!」 13
2023-07-27 22:26:36二人のゾンビーニンジャはゴーストマグロツェッペリンから垂らされたロープを掴み、あっという間に遠ざかる。シュガーブライドが舌を出し、サッドネスがファックサインを掲げた。 「……準備不足だと?」ジェノサイドは低く呟いた。ヤモトは後方を振り返り、近くもう一つのエンジン音を聴いた。「来た」 「おう」ジェノサイドは頷いた。「つくづく、死体が霊柩車たァ、笑えねェ」「中にカンオケもあるしね」「そういう事ァ言わなくていいんだ、別によ」 ――然り、霊柩車である。 14
2023-07-27 22:30:35瓦屋根シュラインを戴くクロームシルバー霊柩車が翼とロケットエンジンで空を駆け、第三信頼銀行の屋上に着地し、ドリフトし、落下すれすれの地点で停止した。ここは上空何メートル? ストリートは遥か下だ。だが、武装霊柩車ネズミハヤイDIIIには造作もない事だ! 助手席ドアとバックドアが開いた。ヤモトは助手席に、ジェノサイドはバックドアから滑り込んだ。 「道が混んでてな」逆モヒカンの運転手が言った。彼の名はデッドムーン。「行くぜ」「おう。行ってくれェ……」窮屈そうにジェノサイドが身じろぎした。ヤモトが頷き、デッドムーンはアクセルを踏み込んで、自殺行為めいてビルから飛び出した。 たちまちロケットエンジンが点火し、車体が加速しながら浮き上がった。 15
2023-07-27 22:33:25ヤモトは急加速のGに耐え、フロントガラス越しに夜空を睨んだ。ゴーストツェッペリンとぶら下がる二人のニンジャを、再び視界内に捉えた。奇怪なゾンビー達の余裕と侮蔑の笑みが、懸念と驚愕、敵意に歪んだ。ネズミハヤイDⅢは空を駆け、ゴーストツェッペリンを追う。 16
2023-07-27 22:37:29稲妻が重金属雲を照らし、眼下のネオサイタマの夜景が流れ過ぎてゆく。国家はもはやなく、警察機構ももはやなく、日夜、破壊と争いにまみれ、叫び声と火柱と広告ネオンに彩られる都、それでも生きて爆発的な破壊と再生を繰り返す都の様相が。 17
2023-07-27 22:39:50そして今こそ、カタストロフの傷跡も癒えぬ歴史転換の混乱期において、いかにして、後世に語られぬ「ネオサイタマ・ゾンビー事変」が幕を開けたか、そこでいかにしてジェノサイドとヤモトとデッドムーンが共同戦線を張るに至ったかを、あらためて振り返るとしよう……! 18
2023-07-27 22:42:14【デッド! デダー・ザン・デッド!】特別連載 #1 pic.twitter.com/7ftpBQdSoQ
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