バトル・オブ・フォート・ダイナソー 全セクション版
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【夏!ニンジャ特別放送】 夏!ニンジャ特別放送では、「ニンジャスレイヤーPLUS」内に掲載されているエピソード2つを、Twitter特別並行連載しています。#ニンジャスレイヤー タグで実況できる! 🍣メンバーシップでぜひPLUSして応援してね🍣 diehardtales.com/m/m1d0f417d09bf ◆今から始まるぞ◆
2023-08-01 21:29:29キャオキャオキャオキャオ……ワチャチャチャチャ……キャオキャオキャオキャオ……ワチャチャチャチャ……。 1
2023-08-01 21:34:56アマゾン河流域のジャングルに、トロピカルな鳥の声が響く。かわいらしいコアリクイが子供を背中に乗せ、蟻塚を探しながら、午後の木漏れ日の中を歩く。だが……その平穏は突如として破られた。上空から降り注ぐ何本ものクナイ・ダート! そして地鳴りのごとき恐竜の唸り声によって! 2
2023-08-01 21:37:41「GRRRRRRRRRRRRR!」「アイエエエエエ!?アイエーエエエエエエ!!」危険領域に迷い込んでしまった不運な男の絶叫が、ジャングルに響く!たちまち南国鳥もアリクイも震え上がって、空や茂みへと消え去った!だが人間はそうも行かぬ。この大自然の中で、人間はあまりにも無力だ! 3
2023-08-01 21:41:58しかも彼の周囲には、空から降り注いだ何本ものクナイが突き立っていた!「アイエエエエ!?クナイ!?恐竜!?」男はパニックに陥り、まるで理解が追いつかない!ZGOOOM!ZGOOOM!恐ろしい足音が近づく。そして密林の樹木をノーレンのように軽々と押し分け、へし折りながら……それは姿を現した! 4
2023-08-01 21:47:53「GRRRRRRR!」見よ!体高2メートル半を超える赤茶色の巨体と、それを包むニンジャ装束!巨大な顎を備えた頭部と鋭いカギ爪の手足、そして尻尾は完全に恐竜のそれである!……その名はヘルレックス!人間とニンジャと恐竜を混ぜ合わせたかのような獰猛な怪物、ダイナソーニンジャのひとりであった! 5
2023-08-01 21:51:13「アイエエエエエ!?」ナムサン!男はヘルレックスを見てひときわ大きな悲鳴をあげ、四つん這いになって、密林の奥へと必死に逃げ込もうとした。だが、その時……!木の影から黒いサスマタが突き出され、背後から彼の首をとらえて、その場に這いつくばらせたのである!「アイエッ!?」 6
2023-08-01 21:54:48「バカな人間め、逃げられるとでも思ったか」サスマタを構えていたのは、丈高い水色のダイナソーニンジャであった。直立歩行する雷竜のごとき首長のダイナソーニンジャ。彼の名は、ロングモーン。「おまえはどうせエル・キケンの奴だろう。だから殺す」 7
2023-08-01 21:59:59「GRRRRRRRR……さすがだ、ロングモーン=サン。ダイナソー・ニンジャクランの軍師にふさわしい賢さだ」ヘルレックスが唸るように笑った。この恐竜たちは、会話できるのだ。「……ま、待ってくれ!」男は死に物狂いで訴えた。「私はエル・キケンの者ではない!宣教師だ!食べないでくれ!」 8
2023-08-01 22:04:26「宣教師だと?」ヘルレックスは首をかしげて唸った。「宣教師とは何だ、ロングモーン=サン?」「わからない。やはり殺すしかない」ロングモーンは恐るべき水色の足を男の頭の上に持っていき、カイシャクしようとした。彼の体重は数トンある。男の頭は一瞬でトマトのように粉砕されるだろう。 9
2023-08-01 22:06:40「た、頼む!殺さないでくれ!宣教師とは、神の遣いのことだ!エル・キケンのようなコカイン麻薬組織とは関係ない!……いいか!君たちの噂は聞いていた!君たちのような強いニンジャが、誰かのために働いているだなんて、まるでおかしな話だ!そうだろう!?」宣教師は必死でまくしたてた! 10
2023-08-01 22:11:30「私は、君たちのような強いニンジャに真の自由を与えるために来たんだ!真の自由と解放を!!」 11
2023-08-01 22:13:26マナウス・シティから遥か西。アマゾン大密林内に隠されたそのコンクリート造りの廃工場は、天井や壁の所々が崩落してツタ植物が絡まり、小さな花をいくつも咲かせていた。その佇まいは、思わずポストアポカリプス・ハイクを詠みたくなるほどの風情とワビサビであった。 12
2023-08-01 22:19:31そして今、廃工場の廊下を騒々しく走る者あり!「た、た、大変だぜーッ!大将、緊急事態だーッ!」その細長い手足には、爬虫類のミイラじみた特徴!ニンジャ頭巾の下に隠されているのは、真っ赤な三つの眼!彼こそは、かつてヨロシサン製薬によって生み出されたバイオニンジャ「ハイドラ」であった。13
2023-08-01 22:25:23「うわッ!何だよセンパイ!」「あぶねェな!」物資コンテナを二人掛かりで運搬中だった少年型バイオニンジャK2とK3が、慌ててセンパイのために道を開けた。この双子は、かつてヨロシサンがカマイタチ伝説になぞらえ三体ひとセットで開発したバイオニンジャ・シリーズの、貴重な生き残りである。 14
2023-08-01 22:29:54「悪いな!緊急事態でよ!」ハイドラは先へと進んだ。「おっと、そうだ……!」少し走って振り返り、フードを脱いで、三個の赤い瞳でカマイタチ兄弟の顔を交互に見た。「おい!大将は何してる?お前ら、ずっとここにいただろ?」「社長?」「社長なら上の調合室」双子は肩をすくめ、上を指差した。 15
2023-08-01 22:35:27「よォし!」ハイドラは連続側転とトライアングルリープで方向転換し、階段へと向かった。「何だろうな?」「さあ……。オレらは仕事しようぜ」残されたK2とK3は金属製物資コンテナの取っ手に手をかけ、運搬を再開した。 16
2023-08-01 22:38:01「大将、大将ーッ!」階段を駆け上り、調剤室の前に到達したハイドラは、『作業中入室禁止』と紙の貼られたドアを右手でドンドンと叩きながら、左手で繰り返しインターホンを押した。だが、返事はない。「大将ーッ!いねえのか?緊急事態なんだよ!!」 17
2023-08-01 22:40:41ハイドラはドアを開け、中に入った。広さはタタミ百畳ほどの横長の実験室。部屋の壁には2ダース近い排気ファンが取り付けられ、有機溶剤臭や塩素ガスを屋外へと排出している。雑然と並ぶのは、型式もメーカーも様々のケミカル器具や培養機材や遠心分離機である。まるでケミカル器具の密林だ。 18
2023-08-01 22:44:08「大将ーッ!」ハイドラはこれらの器具に迂闊に触れないよう、細心の注意を払いながら先へと進んだ。机の上には立体交差ジェットコースターコースじみたガラス菅やフラスコのネットワークが構築され、フライパンや圧力鍋などの調理器具までもが組み合わされて、ゴムチューブで繋がれているのだ。 19
2023-08-01 22:49:10その先、中央壁際に、無骨な旧世紀型のバイオクリーンベンチが置かれていた。そして開襟ワイシャツの上から白衣を纏った男が一人、このクリーンベンチに向かい、調剤作業に没頭しているのだ。「いるじゃねえか!おい、大将、大将ーッ!」 20
2023-08-01 22:50:57「ム……?」大将と呼ばれたこの男こそは、サワタリ・カンパニーの大将にして代表取締役、そして主任技術者のフォレスト・サワタリ。彼はクリーンベンチの中に両手を差し入れてピペットを操作し、同時に、足元のガスバーナーペダルを巧みに操っていた。間違いなくニンジャ敏捷性のなせる技だ。 21
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