バトル・オブ・フォート・ダイナソー #1

公式note https://diehardtales.com/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サワタリは一旦作業を中断すると、ハイドラの側へと向かった。そして思い出す。前回ハイドラが報告しにきた「緊急事態」とは、河を上ってきた体長十メートル級のバイオネオンテトラの発見についてであった。「……それで、今回の緊急事態はいったい何だ?」 23

2023-08-01 23:00:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「リオビオ砦が乗っ取られちまったんだよ!」「何だと!?」思いがけぬ事態に、サワタリの目つきがおかしくなり始めた。「さてはベトコンの襲撃か!?」「いや、ベトコンはいないから安心してくれよ、大将!ここはアマゾンだ!」「アマゾン……!そうか、そうだった……」 24

2023-08-01 23:03:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ホーチミン陥落後、俺たちはチェ・ゲバラと共闘するためにアマゾンへ……」サワタリはすぐに狂気を制圧し、正気へと戻った。彼はもう以前のサワタリではないのだ!「だがリオビオ砦が本当に陥落したというのか!?ヘルレックスたち3人が守りを固めているはずだぞ?そう易々と陥落するはずが…」 25

2023-08-01 23:06:46
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サワタリ・カンパニーは、南米コカイン組織や暗黒メガコーポといった外敵の侵略に備えるべく、本社周辺にフォート・ハイドラなどの隠し砦を有していた。そのひとつ、通称フォート・ダイナソーと呼ばれるリオビオ砦は、その名の通り、ダイナソー・ニンジャクランの3人によって守られていたのだ。 26

2023-08-01 23:09:07
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「そのダイナソーの3人が裏切りやがったんだよ!IRCにも応答しねえし、セントールと営業が物資を届けに行ったら、隠し砦の門が閉まってて、壁には、あいつらが昔掲げてたダイナソーの紋章がスプレーペイントしてあったってよ!」「裏切った……?あの3人がか?」サワタリは怪訝な顔で返した。 27

2023-08-01 23:12:20
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「ああ、そう報告を受けてるぜ!それでセントールたちは、濁りエメツも回収できねえで、フォート・ハイドラに帰ってきたんだ!」ハイドラは出撃命令を待ちのぞむ戦闘機めいてまくし立てた。「ダイナソーの奴ら、いつかこうなると思ってたぜ!どうする大将!?やるか!?やるしかねえよな!?」 28

2023-08-01 23:18:45
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「フゥーム」だが、サワタリはすぐには返事をしなかった。興奮するハイドラを尻目に、顎をかきながら実験室を歩き、器具のチェックを行う。「ダイナソーの連中が……」サワタリは眉根を寄せ、思案しながら、ビーカーフラスコ複合体の目盛りを読み、その値をノートに書き記してゆく。 29

2023-08-01 23:23:29
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そのようにしてしばし思案した後、サワタリは言った。「ハイドラ、今回の件はお前に任せる。お前が解決しろ」「えッ?」「聞こえなかったか?全てお前に任せると言ったのだ!」「何でだよ、大将!ナメられたままでいいのか?カイシャやって、腑抜けになっちまったのかよ!?」 30

2023-08-01 23:26:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いいかよく聞けハイドラ。俺が動けん理由は、ブラックタイガーの合成が遅れているからだ」サワタリは、机の上に置かれた最新式遠心分離機と大型コーヒーサイフォンとの奇妙な複合体を指差す。そこにはポタポタと、美しい黒エメラルド色の液体が落ちてきていた。これがブラックタイガー原液である。31

2023-08-01 23:29:10
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この地で産出される濁った低純度黒エメツと、フロッグボーイのバイオカエルから分泌される神秘的な緑のガマ油、そして秘密のハーブ各種を混ぜ合わせて作られるブラックタイガー丸薬は、バイオインゴットなしでもバイオニンジャたちの生存を可能にする。いわばサワタリ・カンパニーの生命線なのだ。 32

2023-08-01 23:32:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この培養フェイズは絶対に中断できん」サワタリはハイドラを見て言った。「いま俺とフロッグボーイがこのキッチンを離れれば、2週間後にはブラックタイガーの貯蔵が枯渇するぞ。そうすれば、どうなる?」 33

2023-08-01 23:37:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブラックタイガーが、枯渇……」ハイドラは唾を呑み、表情を曇らせた。かつて自分がバイオインゴット欠乏症に陥って苦しんだ経験や、遺棄された研究施設のカプセル内で衰弱状態にあったK2、K3の姿が、脳裏をよぎった。バイオニンジャにとって、インゴット欠乏症ほど苦しく惨めなものはない。 34

2023-08-01 23:39:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかったな?では、とっとと行ってこい」「でもよ、オレ1人であいつらをブチのめせってのか?ヘルレックスひとりでも、大将と同じくらい強いんだぜ!?」「ブチのめすだけが解決策ではない。そもそも今回の件は何かの行き違いだろう……」サワタリはブツブツ呟きながら、原液の香りを確かめた。 35

2023-08-01 23:43:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ダイナソーの連中はプリミティブゆえ、時々そうした行き違いが起こる。これまでも全てそうだった……」「だからって反乱を起こされたら、たまったもんじゃねえぜ! あいつらきっと、リオビオを任されたもんだから調子に乗って、自分たちをこの密林の王か何かだと思い始めちまったんだよ!」 36

2023-08-01 23:47:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さっきから言っているそれは、本当に事実か?お前自身の目と耳で確認したのか?」「いや、セントールのやつが……」「それ見たことか。憶測でものを語るな!」「でもあいつら、恐竜だぜ!」「恐竜差別はやめろ。お前の悪い癖だ。恐竜でも何でも、今はカンパニーの一員だ!」「でもよ大将……!」37

2023-08-01 23:49:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイドラ、お前はカンパニーの最年長者だ!そろそろ俺なしでも、この程度の事態を解決する力を持て……」サワタリは背を向けて歩き、奥にある大型ガラスサウナ室の前に立った。そしてその中でガマ油成分を分泌するバイオカエルと、その背中で心地よさげに昼寝するフロッグボーイを見た。 38

2023-08-01 23:53:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

窓からは、シダ植物のブラインドによって切り取られた午後のアマゾンの日差しが差し込んでいた。サワタリは続けた。「覚えているな……?フロッグマンは、そうしていたぞ。分隊を率い、別動作戦も指揮することもできた……」それで十分だった。ハイドラは納得した顔を作り、深く頷いた。 39

2023-08-01 23:56:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかった。言いたいこと、全部わかったぜ、大将。ダイナソーの件は、オレが責任を持って解決してみせるからよ」ハイドラは、サウナ室で昼寝する身長1メートルほどの生意気そうなバイオニンジャに向かって、ガラス越しに小さく声をかけた。「じゃあな、フロッグボーイ。イヤーッ!」 40

2023-08-02 00:00:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハイドラは一刻も早くフォート・ダイナソーに向かうべく、全身にカラテをみなぎらせ、窓から外へと飛び出した。アマゾンの密林と熱気、そして極彩色の鳥の歌声がふたたび彼を包み込んだ。 41

2023-08-02 00:02:18