ア・サイン・オブ・ハンザイ
「死ねば自ずと爆発四散し、塵すらも残さず、この世から消えるという」「その通り、古事記にも書かれている」「ああ、今この時ほど、自分がニンジャであればよかったと思える時はない。だが、私は悲しんでなどいないぞ、フジキド=サン。君と出会い、手がかりを引き継ぐことができたのだからな」 23
2024-04-09 22:29:56「……もう心残りは無い」ロベールは残された力を使い、自らの体を起こして横へ転がそうとしていた。その先には崖がある。彼が何をしようとしているのか、フジキドにはすぐに解った。そして、だからこそ、国際探偵ロベールの行いを止めようとはしなかった。代わりに無言で視線を交わし、頷いた。 24
2024-04-09 22:35:15「では、さらばだ、若き国際探偵……!精進したまえよ。あと三十年も頑張れば、私の栄光の爪先程度にはたどり着くかもしれんな……!」そのまま彼は、底知れぬ崖に向かって自ら身を投じ、落下していった。時折、岩肌への激突の火花を散らしながら、国際探偵ロベールは遠ざかってゆく。 25
2024-04-09 22:38:14やがて、その姿が米粒のように小さくなり、マッターホルンの谷間を包む灰色の霧の中に消え行こうとした時。「……オタッシャデ!」KA-DOOOM! ロベール・ムラカミは叫び、爆発四散した。彼はニンジャではない。自らのサイバネに備わった自爆装置を起動させたのだ。 26
2024-04-09 22:43:20「ロベール=サン、オタッシャデ」フジキドは崖の底から立ち上る煙に向かって手を合わせ、祈りを捧げ終えると、ロベールから託されたばかりの小さな封筒を開いた。そこには折り畳まれた羊皮紙の捜査メモが、そして、ドクロ模様の蜘蛛が刻まれた不気味な指輪がひとつ収められていた。 27
2024-04-09 22:47:47「これは、一体……!」彼はロベールが遺したその指輪から、ただならぬアトモスフィアを感じ取った。謎の国際ニンジャ犯罪組織、即ち『ハンザイ・コンスピラシー』と国際探偵フジキド・ケンジとの戦いは、まさにこの時、始まったのである! 28
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