創作:那春(正月)

那春・正月小噺。一番のご馳走は、あなた。
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ワトは歩く城 @watokadu

【那春】「僕もお節作るの手伝いたかったです…」立派な重箱に詰められたお節料理を前に那月はしゅんと寂しげに肩を落とした。「ご、ごめんなさい。那月くんよく眠っていたから起こすのが憚られて…」春歌は慌てて言い繕う。実際は那月に絶対料理をさせるなという仲間内からの忠告を受けて朝早くから→

2012-01-01 04:11:36
ワトは歩く城 @watokadu

→こっそり作っていたのだ。しかしここまでしょげられると良心の呵責に苛まれる。「そ、そうだ!味見、味見をして下さい!」春歌は菜箸できらきらと艶の出ている黒豆を一つ摘み那月に差し出す。那月はしょげた様子のまましかしぱくりと口に含んだ。「…美味しいです」ふわりと那月の表情が綻ぶ。→

2012-01-01 04:11:53
ワトは歩く城 @watokadu

→春歌はほっと胸を撫で下ろした。「…でも」那月は一転、さっと春歌の腰を攫い、そして徐に口付けた。ちゅ、というリップ音の後春歌は長く吐息を奪われる。ややあと離されたのは息が途切れそうな頃合いだった。いきなりどうしてと苦しさに潤んだ瞳で那月を見上げると那月はすっと目を細めて微笑う。→

2012-01-01 04:12:07
ワトは歩く城 @watokadu

→「うん、やっぱりこっちの方が甘くて美味しいです」そう言ってもう一度軽く唇を啄まれて初めて、春歌はそれが那月からの意趣返しだと気が付いた。

2012-01-01 04:12:30