四の舟×おろし丸によるスケッチブックリレー小説 ~ひだまり荘と美術部編~
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@oroshiwanko 「宮ちゃーん。あとどのくらいで着けるのー?」 「んーっ。もう少し~。そろそろ小高い山の上にある学校が見えてくるから~」 「ちょっと、市街地から離れてるんだね。ヒロ、疲れてない?」 「大丈夫よ。いい運動になるわ」 「あっ、見えた。あれが太宰府高校だよ~」
2012-01-24 22:00:30@YOTSUnoFUNE 春休みも半分ぐらいを過ぎたある日、私達は宮ちゃんの地元に遊びに行くことになりました。宮ちゃんの地元は福岡です。そこで宮ちゃんは、久しぶりに会いたい友達がいると言いました。なんでもその友達も美術部なのだとか。
2012-01-24 22:02:05@oroshiwanko やっと見えてきたその学校は福岡県で唯一美術科を持つ学校だそう。もし宮ちゃんがやまぶき高校を落ちていたら、この高校を目指していたそうです。宮ちゃんの福岡のお友達に会うなんて、ちょっぴりドキドキしています。
2012-01-24 22:06:46@YOTSUnoFUNE 「で、その宮子の友達ってのはどんな人なの?」「えーっとね、明るくて爽やかでエネルギッシュな人かな。」「そうなんだ~」「あ、あとマペットをしてる事が多いかな。」「え?」 …どんな人なのか、ちょっぴり不安です。
2012-01-24 22:09:52@oroshiwanko 宮ちゃんは守衛のおじさんに話をつけて、まるで自分の家に上がるかのように軽やかな足取りで校舎の中に入っていきます。「宮子、すごいはしゃいでるね」 「やっぱり、ひさしぶりにお友達に会うのが嬉しいのね」 沙英さんとヒロさんと私も宮ちゃんに続いて校舎に入ります。
2012-01-24 22:13:57@YOTSUnoFUNE 学校の中は落ち着いた雰囲気でやまぶき高校ともまた違った趣があります。宮ちゃんを先頭に歩いて行くと、ありました。美術室です。「夏海いるかなー、いるかなー。」 なんだか宮ちゃんがいつも以上に嬉しそうに見えます。
2012-01-24 22:16:29@oroshiwanko 「こんにちわー!おじゃましまーす!」 宮ちゃんが勢いよく扉を開けて中に入ります。「おーっ!宮子、ほんとに来てくれたんね~!」 美術室の中にいたツインテールの女の子が宮ちゃんの姿を見るやこっちに近付いてきました。その手には、本当にマペットをつけていました。
2012-01-24 22:20:32@YOTSUnoFUNE 「あ、こ、こんにちは。」「おお、この人たちが宮子の友達と先輩方?」「そだよ~、それにしても夏海かわっとらんねー。」 宮ちゃんが方言を使うのを聞くのは初めてかもしれません。
2012-01-24 22:24:24@oroshiwanko 「まあ、立ち話もなんやけん、美術室入りなよ」 夏海、と宮ちゃんの呼んだ女の子は、私たちを教室の中に入れてくれました。中には、ショートヘアーの女の子と、金髪の女の子がいました。「あっ。麻生さん、その人たちが・・・」 「夏海ノお友達デスカー?」
2012-01-24 22:28:03@YOTSUnoFUNE 「そげよー、中学まで同じだった宮子。」「よろしく~。」 こうして私達はお互いに自己紹介を交わしました。ショートヘアーの女の子は鳥飼葉月さん、金髪の女の子はカナダからの留学生、ケイトさん。そして一年生はもう一人いるのだそうだけどまだ来ていないそうです。
2012-01-24 22:32:12@oroshiwanko 「トコロデー、ヒロさんデシタッケ?」 「ええ、そうよ。ケイトちゃん」 「アナター、私と一度ドコカでお会いシマセンデシタカー?」 「えっ。私たち、初対面のはずだけど・・・」ヒロさんとケイトさんは不思議なやり取りをしていました。
2012-01-24 22:39:55@YOTSUnoFUNE 「ところで夏海、他の部員さんはどげんしたと?」「んー、出席率が高かないんはいつもの事やけんど空が来んのはおかしかね、今日夏海達が来るの楽しみにしとったばってん…」 やっぱりまだ、私はこっちの方言に慣れていません。
2012-01-24 22:44:32@oroshiwanko 「まあ、のんびりしとる部活やけん、宮子たちものんびりしとってや~」 「そうね。はるばる東京から来てくれたんだもの」 「美術部ハミナサンヲ歓迎シマース!」 夏海さんも、鳥飼さんも、ケイトさんも、とても良い方たちです。やっぱり、宮ちゃんの友達なんだなぁ・・・
2012-01-24 22:48:02@YOTSUnoFUNE なんだかここだけ時間の進み方がゆっくりな感じがする、そんな気分になって行くような不思議な空間だと感じていた。ヒロさんと沙英さんはケイトさんと一緒に作品を眺めていた。その表情はまるでひだまり荘での表情のようだった。
2012-01-24 22:51:18@oroshiwanko 「あの、夏海さん!」私はこの高校でやってみたかったことを夏海さんに打診してみることにしました。「ん~?ゆのっちどげしたと~?」夏海さんは私のことを早くもゆのっちと呼んでくれて、少し照れました。「ええと、この高校をスケッチしたいなーと思いまして…」
2012-01-24 22:55:22@YOTSUnoFUNE 「おー、さすがゆのっち、目のつけどころが違う!」「そう言えば私達もこの高校自体をスケッチした事はなかったわね。」「大賛成デース!」「それじゃスケッチブックとか用意しないとね。」 こうして私達は外に出ました。
2012-01-24 22:58:12@oroshiwanko 外に出た私たちは、夏海さんと宮ちゃんを除いて、各自バラバラに散ってスケッチすることになりました。こういう風に自分の描きたいものを探すときは、みんな自発的に探しにいきます。「ゆのっちはどうするの?」尋ねてきた宮ちゃんに、私は校舎の中歩いてみると伝えました。
2012-01-24 23:03:43@YOTSUnoFUNE こうしてよその学校の中を歩くという行為の新鮮さに、なんだか胸が高鳴ります。穏やかな春の日差しは温かく自分を包み込んでくれるようです。すると 「んみゃあ」 ……なんというか、顔の中心にパーツがよった大きな猫がこっちを向いていました。
2012-01-24 23:06:43@oroshiwanko 近付いてきた不思議な猫さんを撫でていると、(ニャン太を大きくすると、こんな感じになるかな…) なんて考えてしまいました。「君はどこから来たのかな?」猫さんに尋ねてみると、付いて来いといわんばかりの様子でのそのそと歩いて行きます。私も付いていってみよう!
2012-01-24 23:11:26@YOTSUnoFUNE この猫さん、ゆっくりと歩いているのになんだか近寄りがたいオーラを発しているようにも見えます。この辺りのボス猫なのかな?そう思いながら歩いていると目の前には三毛猫とサバトラ猫、そしてその猫二匹をスケッチしている髪の長い女の子がいました。
2012-01-24 23:13:34@oroshiwanko 「こんにちわ」 私が話しかけると、髪の長い女の子はびくっと体をふるわせました。あれ、わたしなんか気に障る事言っちゃったかな? 「この子たちをスケッチしてたの?」 尋ねてみると、女の子はスケッチブックで顔をガードしながらも、(うん)と小さな声で答えました。
2012-01-24 23:16:48@YOTSUnoFUNE 「となり、座っても良い?」彼女は小さく二度頷きました。私はそっと座るとベンチの前にいる三匹の猫を眺めていました。(……あの)「え?」(猫…好きなんですか?)「うん、猫好きだよ。」その私の言葉に、彼女はほうっと笑顔を見せました。
2012-01-24 23:19:15@oroshiwanko (私、梶原空…) 「梶原空さん、きれいな名前だね!よろしく!私は、ゆのって言います」 (…何年生?) 「高一だよ。でも、高校はここじゃなくて、東京の学校に通ってるの」 (…私も、高一。…一緒だね) 「うん!」
2012-01-24 23:23:54@YOTSUnoFUNE おずおずと、梶原さんはスケッチブックの新しいページを開きました。「空さんも絵、描くの?」(え?)「私、美術科に通ってるんだ。良かったら一緒に描かない?」少し嬉しそうに、空さんが頷きました。
2012-01-24 23:25:55@oroshiwanko 私と空さんは、こうしてにゃんこたちの絵を描き始めました。描きながら私がこの子たちの名前を聞くと、ミケ猫がミケさん、サバトラの子が「ハーッ」と鳴くからハーさん。そして、私をここまで連れて来てくれた子がクマさんという名前なんだと、空さんは教えてくれました。
2012-01-24 23:30:12