ミスティア 愛の歌

最初の一文だけで終わるはずだった物語。 ミスティアはみすちーと表記されております。 主犯:鯵 実行犯:龍泡 感想、クレーム、アドバイスなどありましたらご自由にどうぞ。 続きを読む
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東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 屋台で歌っているところを妹紅に見られ、慌てふためくみすちー。 「続けてくれや・・・」と男前妹紅に顔を真っ赤にし、歌おうとするものの緊張で声が枯れ、どもってしまうみすちー。

2012-01-28 18:55:14

一文で終わるはずだったが、なんやかんやで続いてしまった。

東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ そこにへべれけになった魔理沙が登場。吐いた息から酒ができそうな状態で「おー、みすちー、いい歌が聞こえたもんだからつい寄っちまった。もっと歌ってくれや」と歌のリクエストをする。しかし、妹紅のいる手前、緊張で口からいつもの音色が出てくる自信がない。

2012-01-28 21:12:05
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ しかし、妹紅もリクエストしているから、歌わないと妹紅に対しても失礼になってしまう、と思ってしまっているみすちー。歌いたいけれど歌えない状況の中、妹紅と魔理沙が今か今かと待っている。今まで屋台を見守っていた鈴虫たちの音も消え、まるでみすちーの歌を待っているようだ。

2012-01-28 21:22:51
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__そんな中、 突如としてみすちーが妹紅のために出そうとしていた徳利を掴み、中身の酒を一気に飲み干した。唖然とする妹紅と魔理沙。それを横目に、気恥ずかしさでいっぱいだったみすちーの顔がさらに赤くなり、首まで赤くなった。

2012-01-28 21:23:51
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ お、おい大丈夫か、と心配そうに声をかける妹紅。だが、みすちーはまるで妹紅の声が届いていないようで、視線を宙に向けたまま、ぴくりとも動かない。そんなみすちーを見て、魔理沙も心配になり、みすちーの肩を掴もうとした瞬間、屋台から周囲の森にまでみすちーの歌声が響いた。

2012-01-28 21:32:05
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ それは、妹紅が始めて聞いた歌だった。慈愛に満ちた、どこまでも透き通った歌声。聴く者の心を惑わすのではなく、歌声のように清々しい気持ちにさせてくれるような歌だった。

2012-01-28 21:37:31
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ どのぐらいの時間が経ったのだろうか。みすちーの歌を聞いていた妹紅は、とても穏やかそうな顔で彼女を見つめ、面白半分で乱入してきた魔理沙は酔いは彼女の歌声を聴いた瞬間に醒めていた。それどころか、足を閉じたまま座り、手を前に組み、姿勢を正したまま聴いていた。

2012-01-28 21:45:10
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 歌声が静まり、ふぅ、とみすちーが息を吐いたのを合図に、魔理沙の大きな拍手が屋台に響いた。歌い終わり、我に返ったみすちーは酔ってはいなかったが、顔は酔う前とひけをとらないぐらい赤かった。そして、こんな事になった原因である徳利を複雑な表情で見つめ続けていた。

2012-01-28 21:56:51
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ いきなり酒を飲み干し、歌いだしたから、彼女はどんな顔をしているのだろうかと心配になっている。恐る恐る妹紅のほうへ視線を向けてみると、彼女はとても穏やかな表情だった。しかし、一筋の涙が頬を伝っていた。

2012-01-28 22:07:59
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ あわてて妹紅に大丈夫かと尋ねると、彼女は不思議そうな顔をしていた。どうやら無意識のうちに涙が流れていたらしい。横にいる魔理沙は不思議そうな顔で、妹紅に泣いていることを伝えた。彼女はそっと涙を拭い、手の甲に残った涙を見つめ続けていた。

2012-01-28 22:15:21
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 「まだ、こんな感情が残っていたんだな」と、感慨深くつぶやく妹紅。それを心配そうに見守るみすちー。自分の歌が原因で過去の辛い記憶を思い出してしまったのだろうか、やはり自分は歌わなかったほうが良かったのだろうか。

2012-01-28 22:29:12
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 穏やかな空気が包み込んでいた屋台は、徐々に重くなっていった。そんな空気に耐え切れなくなったのか、申し訳なさそうな顔をしながら魔理沙が屋台から出て行ってしまった。

2012-01-28 22:37:17
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 屋台に残ったみすちーと妹紅。妹紅の涙があってか、どちらが話かけようとも、話しづらかった。とりあえず妹紅に八目鰻を出そうと用意をするものの、手元が震えてうまく鰻をさばくことができなかった。一方、妹紅も視線を机を向けたまま、みすちーのほうを見ることがなかった。

2012-01-28 22:43:24
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ ハッとして妹紅のほうへ顔をむけてみると、そこにはいつもみすちーに向ける穏やかな妹紅の顔だった。「あの・・・先ほどは大丈夫でしたか・・・?」自分のせいで妹紅に辛い思いをさせてしまったのではないか、みすちーにとってそれが一番の心配だった。

2012-01-28 22:52:17
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 安住の地を求め、様々な場所を転々とし続けてきた彼女にとって、安らげる場所の一つとしてここがあってほしい。もし私の歌で彼女が苦しんでしまうというのならば、私は二度と歌わないと誓える。それほど私にとって、彼女の存在はとても大きなものになっていた。

2012-01-28 22:56:08
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ しばらく屋台を休んでしまおうか、それとも店をたたんでしまおうかと考えていたときである。「大丈夫だ。それより・・・もう一度、歌ってくれないかな・・・」「え・・・」 妹紅の言葉はみすちーにとって衝撃だった。

2012-01-28 23:10:57
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 彼女は優しいから、歌わないでくれとは言わないだろう。そして、今度も来てくれるのだろう。しかし、彼女からもう一度歌ってくれないかと言われたことは、予想できなかった。いや、ほんの少しではあるけれど期待をしていた。しかし、期待よりも罪悪感のほうが大きかった。

2012-01-28 23:15:21
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ しかし、彼女は気にすることなく話を続けた。

2012-01-28 23:16:35
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 「いやさ、女将さんは悪くないよ。私が泣いていたが、純粋に女将さんの歌が素晴らしかったからさ」「私の歌で泣いてくれたのはとてもうれしいです。でも・・・でも、そのせいで妹紅さんに過去の辛い記憶も思い出させてしまったのではないかと・・・」

2012-01-28 23:19:52
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 「それは女将さんが気にすることじゃない。過去に色々なことはあった。でも、この幻想郷に住むようになり、女将さんに会っているうちにそんなことは些細なことでしかなくなった。だからさ、また、歌ってくれないかな・・・」

2012-01-28 23:24:13
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ 「妹紅さん・・・」「まぁ、いやだったらいいんだ。でも、女将さんの歌に純粋に感動できたんだ。何百年となかったが、私にもまだそんな感情が残っていたと感じることができたんだ・・・」その言葉が発せられてから、再び屋台に静けさが訪れた。しかし、先ほどの重い空気はなかった。

2012-01-28 23:30:52
東屋敷(献血ヒザゴリラ)@ @baburu27

@__azy__ そして、静まり返った屋台の様子を見るかのように鈴虫が再び鳴きだし頃、屋台から夜雀の歌声が響き始めた。 -完-

2012-01-28 23:32:37