「ナナドラ」リアルタイムリプレイ -19- カザン奪還作戦・6
- imaitetsuya
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20名ほどの集団で城内を脱出してここまで逃れて来られたものの、フロワロの瘴気によって力つきたものであるらしい。みその君によれば、ここで倒れていた全員が彼女の同郷で、顔見知りであるという。
2010-02-16 22:09:10数が数であるうえ、この状況である。まことに申し訳ないが、彼らを埋葬することはあたわなかった。ご遺体を簡単に清めたのち、糧食と水を供えてせめてもの手向けとする。
2010-02-16 22:13:21なかむらがフロワロの下に僅かに咲いていた野花を見つけ、これを手折って供えようとしたがみその君に止められた。死者のためとはいえ、このような場所で気丈に生き残った花を摘み取ることは本意でないという。彼女は痛ましいほどにぼろぼろと涙を流したが、最後まで取り乱しはしなかった。健気である。
2010-02-16 22:17:13フロワロは瘴気で体力を奪うと同時に、踏んだ者の神経を麻痺せしめる。すがわらの見立てによれば、花の毒によって命を落すものは、最期は眠るように意識を失って果てるという。気休めにもならないが、死者の顔は一様に安らかであった。
2010-02-16 22:21:15その場をあとにして一時間。さらに道中、いくつもの避難民の集団を目にした。いずれもフロワロによって力を奪われ、あるいは竜によって傷を負わされて、道のそこここで息絶えていた。
2010-02-16 22:27:283年を過ぎてなお、その姿は当時のまま風雨に曝されている。蛮行まことに許し難い。すがわらもなかむらも先刻から終始無言、私自身も怒りで全身の毛が逆立つようだ。これほどの憤りを覚えたのは初めてである。
2010-02-16 22:33:23ただ、みその君だけが、穏やかな表情で時折、異国の耳慣れない歌を口ずさんでいる。言葉の意味はわからない。静かに心に染み渡るような、美しい旋律である。低い歌声は切れ切れになって、夜の闇に溶けて消えていく。死者の魂が、せめて今は安らかであらんことを祈る。
2010-02-16 22:37:14いよいよ、我々はカザン城壁にたどり着いた。あの質素ながら堅牢な石積みもそこかしこが破れ、見る影もない廃墟の様相を呈している。これがあの、かつて活気と喧噪に溢れた若い都の姿だろうか。
2010-02-16 22:41:12