｢ナナドラ｣リアルタイムリプレイ -20- カザン奪還作戦・7

くろえ @PrincessCroe

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くろえ @PrincessCroe

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くろえ @PrincessCroe

プリンセスがさいしょに教わることはふたつ。

くろえ @PrincessCroe

人をうらんではいけない。

くろえ @PrincessCroe

歌うのをやめてはいけない。

くろえ @PrincessCroe

プリンセスの歌は、人を支配することができる。心に静かにしみ込んで、力を与えることも、うばうこともできる。

くろえ @PrincessCroe

だから、プリンセスの歌をうたうものは、その力をぜったいに、うらみやにくしみのために使ってはいけない。

くろえ @PrincessCroe

人のために、誰かのために、優しく歌わなくてはいけない。

くろえ @PrincessCroe

そして、けっして折れてはいけない。つらいときも、苦しいときも、全部を歌にかえて、皆をはげまさなくてはいけない。

くろえ @PrincessCroe

それがプリンセスの使命。

くろえ @PrincessCroe

私はお母さまにそう教わった。

くろえ @PrincessCroe

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くろえ @PrincessCroe

こんなときにも私は、お母さまのお言いつけをまもらなくてはいけないんだろうか。

くろえ @PrincessCroe

目のまえにお母さまの死体がある。みそののお母さまも、村のやさしかったお医者のせんせいも、村に一軒しかない道具屋のおばさんも、通りの角に住んでいた馬車組合の親方も、そのおじいさんも、みんないてみんな死んでいる。

くろえ @PrincessCroe

悲しみさえわいてこない。私の心は、もうずいぶん前に、ゆれることも、うごくこともやめてしまった。

くろえ @PrincessCroe

なにもわからない。

くろえ @PrincessCroe

こんなとき、どんな歌をうたえばいいのか、思い出せない。

くろえ @PrincessCroe

みそのちゃんはうたっていた。涙をこぼしながら、とぎれそうな声で、でもけっしてやめずに、泣きながらうたっていた。

くろえ @PrincessCroe

みそのちゃんはいつもそうだ。

くろえ @PrincessCroe

どんなに自分がかなしくても、つらくても、いつもうたっている。いつもまわりには笑顔をふりまいている。

くろえ @PrincessCroe

そうして、いつも私を置いて、どこかへ行ってしまう。

くろえ @PrincessCroe

私は、3年前のあの日から、心も体もからっぽのまま、どうしていいかわからずに立ちつくしているのに、みそのちゃんはずんずん先へいってしまう。

くろえ @PrincessCroe

歌いたい。泣きたい。笑いたい。そうでないと、私は、お母さまのお言いつけが守れない子になってしまう。

くろえ @PrincessCroe

お母さまはもういないのに、おかあさまはもう私をみることができないのに、私はお母さまに嘘をつくことになってしまう。

くろえ @PrincessCroe

でも、こんなとき、どうやったら歌がうたえるのだろう。どんな歌をうたえばいいのだろう。