茂木健一郎氏 @kenichiromogi 【やけぎょう焼経とスティーヴ・ジョブズ】連ツイまとめ
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「連続ツイート」第507回をお届けします。文章は、その場で組み立てながら即興的に書いています! 本日は、ちょっと(文脈が)高度な連ツイに挑戦してみようと思いますのだ!
2012-02-17 07:50:15やす(1)橋本麻里さん(@hashimoto_tokyo)と話していたとき、やけぎょう(焼経)の話になった。麻里さんの、こういう知識は深くて、広い。奈良時代などの貴重なお経が火事で焼けてしまったものを、たいせつに軸装したものが「やけぎょう(焼経)」である。
2012-02-17 07:54:23橋本 麻里(1972年 - )
日本の美術評論家、ライター、編集者。国際基督教大学卒業。 明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。 高等学校美術教科書の編集・執筆も手がける。父は小説家の高橋源一郎。出版社に勤務したのち、フリーのライター・編集者となる。評論では日本美術、工芸、現代美術、デザインなどを主題とする。『AERA』『BRUTUS』『Casa BRUTUS』『文藝春秋』『和樂』などで執筆や連載を持つ。ウィキペディア」より
やす(2)やけぎょうに限らず、日本人はこわれたものを大切にする。金継ぎなどもそうで、割れてしまった焼き物を丁寧に金で継いで、使い続ける。そのことによって新しい「景色」が見えてきたりするし、場合によっては価値が増すこともある。受け継いでいきたい感性であろう。
2012-02-17 07:56:07やす(3)それで、橋本麻里さんが「やけぎょう」の話をしていたときに、実はぼくの頭の中でよぎった考えがあるのだけれども、何しろその時は談笑が弾んでいたし、話の流れを途切れさせなかったし、何も言わなかったので、かわりに今朝の連続ツイートで世界に向かってさしだそうと思うのである。
2012-02-17 07:57:26やす(4)やけぎょうには、独特の風合いがある。しかし、あまり人気が出すぎると、困った現象が生じるだろう。そんなに求められるのならば、わざわざお経を焼いて、いい感じの焦げ目や欠落をつくってから軸装しようという輩も出てくるかもしれない。そうなると、やけぎょうの大切な何かが失われる。
2012-02-17 07:59:05やす(5)ぼくが橋本麻里さんに問いかけたかったのは、果たして、意図せずして焼けてしまったやけぎょうと、作為的に焼いたやけぎょうは美術品として、あるいは現象学的に違うのかということだったが、それについては今度機会があったら話してみたい。いつになるかわからないけれども。
2012-02-17 08:00:08やす(6)もう一つ連想したことがある。それは、スティーヴ・ジョブズのこと。周知のように、ジョブズの生みの親はジョブズが生まれてすぐに里子に出した。「ジョブズ」は養父母の名字である。そのことで、ジョブズは自分は求められなかったのだというトラウマを抱えることになる。
2012-02-17 08:01:07やす(7)発達心理学上の常識から言えば、親の「安全基地」があった方が子どもの成長にはいい。ジョブズにはそれがなかった。もっとも、養父母がとてもいい人で、かわりに「安全基地」を提供してくれた。しかし、生みの親に関するジョブズの心の傷は、一生彼を支配し続けることになる。
2012-02-17 08:02:51やす(8)つまり、スティーヴ・ジョブズの人生は、意図せずしてできた「やけぎょう」のようなものであった。そのことと、彼の天才はむろん関係していることだろう。欠落があっても、それを補う能力が、人間にはある。そのことで才能が開花することもある。だから、決めつけてはいけない。
2012-02-17 08:03:55やす(9)愛情はやはりあった方がいい。環境も整っていた方がいい。それでも、たまたま何かが欠落したとしても、素晴らしいやけぎょうになれるかもしれない。わざとお経を焼いてつくるのでは、やけぎょうはできぬ。整えようと懸命に生きてこそ、初めてやけぎょうへの道が開ける。
2012-02-17 08:05:42