二本松市のマンション室内での高線量について、今更ながら

まだひと月くらいしか経っていないのにすっかり忘れ去られた感がありますが、汚染された砕石を使ったコンクリートのために二本松市の新築マンションで線量が高かったという話がありました。当時疑問に感じていた事のほとんどは未だに自分の中で解決していません。既に関心が失われて十分な検証が今後もされないかもしれないので、記録として残しておきます。
14
Flying Zebra @f_zebra

二本松市のマンションに始まる、汚染砕石の問題について。元土木技術者(今はプラント屋)として、一連の報道にずっと違和感を持っています。続報あるいは専門家の解説を待っているのですが、なかなか出てこないので現時点での考えを整理しておきます。

2012-01-25 22:49:23
Flying Zebra @f_zebra

マンションの線量が高めの原因がコンクリートの骨材(砕石)と明らかになったとき、砕石業者の「砕石が危険だとは思わなかった」という意見が紹介され、またぞろ「想定外」か、と激しく非難されました。実は、私の感覚はこの砕石業者に近く、未だに納得できていません。

2012-01-25 22:50:09
Flying Zebra @f_zebra

コンクリートはセメントに骨材を混ぜ、水を加えて練り混ぜたものです。骨材は粗骨材と細骨材があり、粒径でおおむね5mmで分かれています。砕石は加工のしかたで色々なグレードがありますが、粒径は主に数mm程度で、一般的には粗骨材となります。

2012-01-25 22:50:53
Flying Zebra @f_zebra

セシウムは土壌に吸着されやすいと言われていますが、これは重金属などにも共通する特徴です。土なら何でもいいわけではなく、粘土はよく吸着し、砂はあまり吸着しません。粘土は細粒で反応性が高く、一般に負に帯電しているため陽イオンである金属イオンを吸着しやすいのです。

2012-01-25 22:51:43
Flying Zebra @f_zebra

土の分類は粒径が小さい方から粘土、シルト、砂、礫(れき)となっていて、粘土は2.0μm以下、砂は20μm~2.0mmです。砕石は礫に分類されます。つまり、放射性降下物の下で野晒しになっていて周囲の線量が高いところでも、砕石が高濃度に汚染されることは考えにくいのです。

2012-01-25 22:52:27
Flying Zebra @f_zebra

電気化学的な性質を無視したとしても、セシウムは石の粒の中まで浸透するわけではなく表面に付着しているだけなので、重量あたりの汚染(Bq/kg)が粒径の大きな石では高くなりにくいことは理解しやすいでしょう。

2012-01-25 22:53:17
Flying Zebra @f_zebra

なので、どんな環境に置かれたにせよ粒径数mmの砕石がそれほど多くのセシウムを持ってこられるわけではないというのが第一の違和感です。ちなみに、コンクリート中の祖骨材の重量比は半分程度なので、コンクリートになった時点で重量あたりの汚染も半分程度になります。

2012-01-25 22:53:57
Flying Zebra @f_zebra

問題の採石場に置いてある状態での砕石の汚染がどの程度なのか非常に興味があるのですが、探し方が悪いのかデータを見つけることができません。測定は難しくないし、影響を考える上で最もクリティカルなパラメータのはずですが、メディアを含めそこには興味のある人は少ないのでしょうか。

2012-01-25 22:55:00
Flying Zebra @f_zebra

もう一つの違和感は、基礎コンクリートの汚染が室内の線量にそれほど影響を与えるものだろうか、というものです。実際に生活している学生のガラスバッジの値が高かったことで判明したのですから、室内の線量が高いのは間違いないでしょう。問題は、どの程度かです。

2012-01-25 22:56:31
Flying Zebra @f_zebra

原因が基礎のコンクリートと特定したからには、室内の空間、壁面、床面、そしてアクセスできる部分の基礎表面くらいは線量を計っているはずです。実際の影響や対策を考える上でも不可欠な情報ですが、これもニュース価値がないのか報道では触れられません。

2012-01-25 22:57:06
Flying Zebra @f_zebra

「室内で何μSv/hでした」みたいな情報はありますが、正確な測定位置と条件が分からなければ役に立ちません。例えば、床上1m程度の空間での線量と床面での線量では意味が異なります。

2012-01-25 22:57:26
Flying Zebra @f_zebra

なお、線源が基礎のコンクリートだけなのであれば、対策は比較的容易だと思うのです。例えば表面に5cm程の鉛を敷き詰めればガンマ線は99%くらい遮へいできます。そこまでしなくても、基礎コンクリートから室内に到達するガンマ線を1割程度に減らすのは難しくないはずです。

2012-01-25 22:57:43
Flying Zebra @f_zebra

コンクリートに閉じ込められたセシウムはガンマ線を出しますが、飛び散ったり移動したりはしないので扱いは比較的簡単です。ガンマ線の遮へいは質量の大きなものほど有効ですが、土でも50cmほどもあれば数%まで下がります。地中に埋設される構造物だとほぼ気にする必要はないでしょう。

2012-01-25 22:58:49
Flying Zebra @f_zebra

骨材の汚染が本当に人間の居住空間の線量率に有意な影響を与えるのであれば、定量的に評価した上でしかるべき対策を取る必要があります。単純なメカニズムなので評価も簡単なはずですが、定量的な話が全く聞こえてこないことに何よりも違和感を感じます。

2012-01-25 22:59:00
Flying Zebra @f_zebra

国交省あたりで検討していないはずはないと思うのですが、政治家がどこかで止めているのでしょうか。「安心」のためという名目で「安全」とは無関係な意味のない規制を行うことは誰の為にもならないのですが、ポピュリズムしか依って立つもののない政治家は得てしてそういう施策を取りがちです。

2012-01-25 22:59:11
Flying Zebra @f_zebra

食品中の放射性物質についても「安全」とは関係のないところで新基準が定められようとしているので、少し心配です。

2012-01-25 22:59:20