きゃりーぱみゅぱみゅが表現する日本の深部とかわいい

「つけまつける」という作品を通して見えてくる日本の全体像について解説しました。 「つけま」というアイコンに日本の少女性を見出した力作が、きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」という不気味かわいい作品だ、という話です。
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蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

ぼくがきゃりーぱみゅぱみゅ、特に「つけまつける」を評価しているのは、日本の深部を捉えているように見えるからだ。日本とはつまり「かわいい」であるという仮説を完全に表現しきるとああなる。あの不気味かわいいカオティックな感じは、日本人にしか表現できないだろう。

2012-03-17 20:38:58
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

とても大胆で野心的で壮大な試みである。そしてその試みは奏功し、海外で人気を博した。あれは日本なので、他の国の誰にも及びもつかない表現なので、日本人よりも外人にうけるはずである。日本というエートス(魂)を論理的に徹底して解体して表現すると、あのリズムとメロディーと衣装と映像になる。

2012-03-17 20:42:39
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

例えば、台湾や韓国が、きゃりーぱみゅぱみゅ的な表現を真似てみたり、欧米が真似てみたりする可能性はあるが、そのような表現が国際的に評価されることはないだろう。それこそただのものまねにすぎない。EXILEは日本ではうけるがインターナショナルにはならないだろうと思う。同じ事だ。

2012-03-17 20:44:37
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

では、作品の構成に分け入っていこう。「つけまつける」のPVは絵本を開くところから始まる。絵本が開かれるとそこには、一見不思議の国のアリス的な世界に、一人のお姫様が腰掛けている。その杖を合図に左右のプロフェッショナルのライオンの着ぐるみを着たダンサーが完璧だダンスを披露する。

2012-03-17 20:46:59
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

きゃりーぱみゅぱみゅは、イスに座ったまま杖をトントンしているだけだ。この構図がすでに「かわいい」なのである。主役は普通の読者モデルで特別な訓練を受けたプロではない。その脇にプロがいる。「かわいい」はプロではない素人的なものに宿るので、素人性を強調するための見事な構図になっている。

2012-03-17 20:53:07
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

きゃりーぱみゅぱみゅは、そのまま歌詞の2番までずっと動かない。このような振り付けを決断するのはとても勇気がいることで、中田ヤスタカの強いリーダーシップが伺われる。そして、歌も後半に入り、いよいよきゃりーぱみゅぱみゅがつけまをつけて変身する。

2012-03-17 20:55:42
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

解説するのを忘れていたが、歌詞を分析すれば、「つけま」というアイコンに少女性と「かわいい」、すなわち「日本」を見出し、「つけまつける」と繰り返すことで、このカオティックな日本社会の暗部を含めた全体像を捉えた上で、肯定的に生きようという応援歌になっている。

2012-03-17 21:00:33
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

♪同じ空がどう見えるかは、心の角度次第、だから〜♪ という歌詞には、とくに応援歌的な側面が伺われる。 さて、「つけま」をつけたきゃりーぱみゅぱみゅは、爆発する。背景の映像含めて、ものすごい情報量になる。この情報量の変化は、気が付きにくいが、それは振り付けを含めた緻密な計算による。

2012-03-17 21:03:57
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

そして、最後に絵本を閉じて、絵本の中のワンダーランドは幕を閉じるのだ。さまざまな社会問題を内包した不気味な日本社会の上で、何も知らずにかわいい女の子が歌い踊っている様は、まさに「日本」と言っていいだろう。あまりに皮肉で圧倒的な説得力と情報密度のこの作品に、めまいすら覚える。

2012-03-17 21:10:24
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

この不気味かわいい日本社会を、私たちは生きているのだなあと、きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」を観ると思い知らされるのだ。中田ヤスタカ恐るべしである。

2012-03-17 21:11:51
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

あ、レディーガガと対比するのを忘れていた。レディーガガは、彼女本人がどのような衣装を着て、どのようなメイクをしてどのような歌にするのか、事細かく主役である彼女が指示をしている。一方で、きゃりーぱみゅぱみゅは、御輿に乗っているので、レディーガガと比べれば指示量は少ないだろう。

2012-03-17 21:48:35
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

この二人を「強い主体」と「弱い主体」に、置き換えて考えればわかりやすい。日本は弱い主体の国なのだ。このような表現が成立するということは、そもそも私たちの中心が空疎であるということであり、空疎であるがゆえにきゃりーぱみゅぱみゅは成立している。

2012-03-17 21:50:19
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

だから、強い主体を前提とするコミュニケーションの国では、ぜったいきゃりーぱみゅぱみゅは生み出せない。逆にいうと、日本ではレディーガガ的なアーティストを生み出すことはやはり難しい。ビートルズ、マイケルジャクソン、レディーガガという流れに、日本人が簡単に乗れるとは思えない。

2012-03-17 21:53:45
蔭山洋介/スピーチライター @communisjp

先日の新聞社の座談会で「日本は何を売るべきか」という議論になったが、僕はきゃりーぱみゅぱみゅ的な表現は、他国では絶対に真似出来ないので、そういう表現や商品サービスを、弱い主体を中心としたマーケットを巨大化していくことで勝負すべきだと考えている。

2012-03-17 21:59:53