世界銀行研究所業務担当局長と学生との懇談会

世界銀行研究所業務担当局長の西尾昭彦さんと学生の懇談会の様子です。国際機関でのキャリアに興味のある方、ぜひご覧下さい。 今年10月には東京で、世界銀行・IMF年次総会が開催されます。
1
YDP Japan Network @ydpjapan

今日から新年度。入学や入社など、新しい環境でスタートを切った方も多いのではないでしょうか。また就職活動も本格化し、キャリアについて考える機会の増える季節ですね。

2012-04-02 19:57:39
YDP Japan Network @ydpjapan

先日、世界銀行研究所業務担当局長の西尾昭彦さんと学生の懇談会があり、YDP Japan Network事務局員も参加しました。西尾さんのキャリアや世界銀行の活動について、伺った話の一部をご紹介します。少し長くなりますが、国際機関で働くことに関心のある方、ぜひおつきあいください。

2012-04-02 19:59:09
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「こんにちは。私は24年前から世界銀行で仕事をしており、現在は世界銀行研究所業務担当局長を務めています。簡単な自己紹介と、現在の仕事をするようになった経緯について、まずお話しします。」

2012-04-02 20:00:25
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「神奈川県出身。一橋大学に入学したころは外交官になりたかったが、次第にその将来像にもやもやした思いを抱くように。在学中にヨーロッパを6週間放浪した経験に大きな影響を受けた。世界には自分が思っていたよりはるかに面白くて色々なことがあることを知った」

2012-04-02 20:01:24
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「その後、外交官ではなく、物を書く仕事につきたいと思うようになり、フランスの大学に1年弱留学。異なる文化を背景に持つ人たちと出会い、国際的な舞台で仕事をすることに憧れを抱くように。留学中に出会った友人たちとは30年経った今でもつながりがある」

2012-04-02 20:02:18
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「帰国後、アメリカの雑誌の東京事務所でアルバイトをしたが、いろんな人が取材したものを継ぎ接ぎして記事を作るアメリカ式のジャーナリズムに幻滅を感じた。そこで、途上国の開発に携わる政府系機関(海外経済協力基金)への就職を決め、そこでビルマと韓国を担当した」

2012-04-02 20:03:10
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「開発の仕事をもっとつっこんで取り組みたいと思い、ケンブリッジ大学の大学院で開発経済学を修了。その後、世界銀行に入行した。初めは仕事が難しく感じられ、自分の能力が通用するだろうか、と悩んだ。しかし運良くハードルを一つずつ越えることができた」

2012-04-02 20:05:28
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「入行後、インドネシアの農村開発の仕事を9年、中国における世銀の事業を統括する仕事を5年、国際開発協会(IDA)で途上国に対する無利子融資のための資金源を確保・配分を担当する仕事を5年、その後現職に。」

2012-04-02 20:07:19
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「今は、250名ほどのスタッフを抱える世界銀行研究所(WBI)の中で、予算・計画などを担当する部署の局長として、実質的にWBIの運営を統括する仕事をしています。」

2012-04-02 20:08:29
YDP Japan Network @ydpjapan

-----(ここからは質疑応答です)-----

2012-04-02 20:09:47
YDP Japan Network @ydpjapan

Q:世銀に入行時、どのような難しさを感じたか? 西尾「最前線の貸付業務は、途上国のインフラの整っていない地域に冒険家のように分け入って調査・交渉をする。一方、オフィスでは膨大な文書や数字を分析しながら学者のようにペーパーを書く。その二つの両立を求められるのが世銀の特色」

2012-04-02 20:13:15
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「もう一つは常に個人として勝負しなくてはならないこと。日本で働いていた頃は会社や部署などの組織ごとに勝負していたが、世銀では職員一人ひとりがそれぞれプロジェクトを担っている。うかうかしていてると、同僚に自分の仕事を狙われ、奪われてしまうことさえある。最初はぎょっとした」

2012-04-02 20:15:21
YDP Japan Network @ydpjapan

Q:キャリアを振り返って良かったことは? 西尾「私は、農業や環境といった開発の特定の分野の大家ではない。世銀にはPhDがごろごろいるなかで私の学歴はかなり低いほう。しかし、そうした専門家たちをまとめて、複雑なプロジェクトを回していくような仕事は得意だし、面白いと思っている」

2012-04-02 20:16:43
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「二つめに、上司に恵まれたこと。自分の長所短所を見極めてヒントを与えてくれる人が多かった。三つめに、さまざまな国籍・人種の人間の中で、日本人として、アジアを代表してがんばらなくてはならないという気持ちが励みになった」

2012-04-02 20:17:41
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「四つめに、くよくよしない性格であること。会議での発言にぴしゃっと反論されることもあるが、くよくよしてる間に次の仕事がやってくる。失敗しても気持ちを切り替えられることが大事」

2012-04-02 20:18:35
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「世銀研究所にはユニークなバックグラウンドを持った人が多い。エコノミストの他にITの専門家などもいる。世銀で仕事をしたいなら、専門性を磨くことが重要。」

2012-04-02 20:21:16
YDP Japan Network @ydpjapan

Q:市民社会は世銀の意思決定にどのような影響を及ぼしているか? 西尾「この1年で大きな変化があった。SNSを通じて革命が広がったアラブの春以降、途上国政府は市民社会を無視できなくなった。世銀はこれまでもプロジェクト単位でNGOと連携してきたが、さらなる協力のあり方を議論中」

2012-04-02 20:23:05
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「例えばWBIはITを使った市民社会との協力を推進中。コンゴ民主共和国では州政府の予算の使途について住民が携帯電話を通じて投票した。フィリピンでは学校運営をモニターするウェブサイトが立ち上がった。ITの活用によって透明性が高まり、住民が開発プロセスに積極的に関与するように」

2012-04-02 20:29:07
YDP Japan Network @ydpjapan

Q:世銀が融資業務だけでなく、知識の蓄積を重視しているのはなぜか? 西尾「知識という意味で世銀には比較優位が3つある。一つは、融資業務との両立によって相乗効果を生むことができる点。二つ目は世銀が持つ分析能力。」

2012-04-02 20:30:18
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「たとえばConditional Cash Transfer という途上国の社会保障の仕組みがある。その好例、メキシコのOportunidadesという制度はニューヨーク市長が視察に訪れ同市に導入するほどの成果を挙げた」

2012-04-02 20:31:52
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「この制度を研究している人はたくさんいるが、世銀なら政策枠組みの分析もできるし、お金を出してプロジェクトを拡大することもできる。実際、Oportunidadesの分析から教訓を洗い出し、その拡充のため多額の融資を行った」

2012-04-02 20:32:54
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「三つ目の強みは、グローバルな機関であること。その結果、たとえばラテンアメリカでの成功事例をアジアやアフリカに適用することができる。以前は先進国から途上国に専門家を呼ぶことが多かったが、最近の強い潮流として、途上国どうしでの知識共有が盛ん。『南南知識共有』と呼ばれている」

2012-04-02 20:34:17
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「さらに、Oportunidadesの例のように「南」の事例に「北」が学ぼうとする動きもある。金融危機以降、先進国のパラダイムが説得力を失っている印象が強い」

2012-04-02 20:35:52
YDP Japan Network @ydpjapan

Q:今までの形の開発は、国家レベルの政策と地域社会の要求のズレが目立つのでは? 西尾「世銀は1990年代初めからミクロなレベルの要求を汲み上げる取り組みをしている。それをさらに推し進めて、CDD(Community Driven Development)という手法を開発した」

2012-04-02 20:38:09
YDP Japan Network @ydpjapan

西尾「従来、世銀は中央政府に対して融資していたが、それが中央政府→地方政府と流れる中で腐敗や非効率性により失われ、コミュニティまで十分お金が届かない。そこで、CDDでは融資を村の銀行口座に直接振り込み、住民自身が資材を使って、道路建設や井戸掘りなど必要に応じた作業を行う」

2012-04-02 20:39:48