ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/01

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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山本アヒコ @lostoman

五月病の特効薬が開発される。効果は劇的で、これを処方された人はやる気に満ちあふれ、仕事や研究で普通の人より何倍もの活躍をした。それに危機感を持った普通の人たちは、五月病だと詐称して薬を手に入れるようになる。結果、データー上では全人類が五月病となった。 #twnovel

2012-05-01 00:20:05
layback @laybacks

彼女のカーディガンの右ポケットが僕の家だ。彼女に拾われて以来ずっと僕はこのポケットの中で暮らしている。彼女の右手は、僕を撫でて、握って、擦って、焦らして、最高に気持ちよくしてくれる。左手? 左手のことなんて知らないさ。左ポケットの中のことなんて考えたくもないよ! #twnovel

2012-05-01 02:06:35
あまたす @amatasu

毎晩、部屋に猫が来るようになった。仕事から帰ってくると、まるで僕を待っているみたいにベランダに座っている。なんだか猫を飼っている気分になって、ある日、餌をあげた。すると、猫は口を開けて「アンタね、そんな教科書通りの応対で女が喜ぶと思ってるの?」と、確かに言った。 #twnovel

2012-05-01 03:45:38
👶 @redgosho

人が死ぬ間際の光景が視える青年がいた。青年は同級生の女性を見て哀しそうな顔をした。青年の能力を知る友人が言った。「彼女は不慮の死を遂げるのかい?」「いや、天寿を全うするよ」「じゃあなぜそんな顔をしているんだい?」「彼女の最期を看取った老人が私ではなかったからさ」 #twnovel

2012-05-01 05:56:13
空間 @nyannyannyanno

茶碗の底に匂うばかりの美しい青年が映っていた。茶を捨てまた注ぐとやはりまた映る。構わず飲み干すと恨めしげな声が響いた。何という不躾な。今宵おのれの元に行く故覚悟しておれ。男は間違いなく幽的なのだろう。だがこんな美形が夜這いに来るなんてやれ胸が騒いで仕方ない。#twnovel

2012-05-01 07:23:45
🏳️‍🌈イチカワユウ🇺🇸 @yu_ichikawa

【暗号師の独白】 私は他の誰にもわからない君だけに伝わるメッセージを送ることができる。しかし、それだけじゃないぜ。私は他の皆にはわかるのに、君にとってだけは訳がわからない、そんな暗号だって書けるのだ。 …知識が常に自分の味方になってくれると思わない方がよい。 #twnovel

2012-05-01 12:59:46
ろばたにスエノ🦀 @robatani

「君の年と同じ十八輪の薔薇を捧げよう。どうか私の求婚を受け入れてはくれまいか」「嘘なんです。母曰く、年を聞かれたら曖昧に答えとけと」「ではただの十八輪の薔薇を。誠意として」「十九輪ありますわ、それ」娘の指摘に男は黙々と薔薇一輪を食した。「これで問題あるまい」  #twnovel

2012-05-01 20:43:54
喜多彌耶子(きたみやこ) @sakkuru1977

愚かだったのです。私が愚かだったのです。それでも恋い慕う思いをどうすればよいのでしょうか。豪奢な部屋と地位を与えられ傅かれる生活であっても、愛はそこにないのです。幸せとはなんなのでしょう。――残された日記に書かれた文字は、涙に濡れて滲んでいた。有る後宮での物語。 #twnovel

2012-05-01 20:50:59
茶屋 @chayakyu

核戦争で世界が滅びるのはありがちで、人類がまだ生きているのもありがち、んで、悪人はやっぱりいて、少年か少女がやっぱり旅に出る。でもその旅がありがちになるかどうかはあなたの想像次第。 #twnovel

2012-05-01 21:27:47
すわぞ @suwazo

#twnovel 猫森が増えた。今では田舎でも都会でもどこでもお構いなしに猫森がうろついている。見た目は猫だが実態は森だ。背中にふさふさと生えた緑の森が本体で、猫部分は移動のための擬態に過ぎない。大きさは本物の猫程度から街一つ分まで様々である。うかつに近づくと森に取り込まれる。

2012-05-01 21:31:23
☯️青山藍明&トトちゃんとラブちゃんとリズさん @rangming

大好きとか、大切だよとか、そばにいたいとか、飲み込んだ言葉は喉にひっかかって、胸の中が詰まってしまう。咳き込んだら、口から赤いビー玉が、たくさん転がってきた。彼女はそれを、ひとつずつ拾って、ありがとうと笑って耳を近づけた。「あなたの声が、たくさん聞こえる……」 #twnovel

2012-05-01 21:45:11
のろろ / Nororo Ghost @WhoGoesSlowly

街を歩くと道を訊かれ、観光先で写真を頼まれ、バスでは隣に人が座り、駅に行くとチラシを渡される。地下街では募金を求められ、電車で外国人に話しかけられる。私には、人を引き寄せる潜在能力があるのかもしれない。 #twnovel 影が言った。「そう錯覚するのは、君がいつもひとりだからさ」

2012-05-01 21:47:23
黒目ソイソース @ghostsoysauce

ソメイヨシノはすっかり散り、道路に落ちた花弁もあまり見かけなくなってしまった。景色の中には淡いピンクよりも生き生きした緑が勢力を増してきている。「それでは最後の宴に参ります。また来年」「うん、また来年」居間を覗けば、髪に桜の花びらを乗せた鶺鴒がいるだけだった。#twnovel

2012-05-01 22:10:49
ぼろいねこ讃 @nekoboro

夢のなかでわたしの部屋に(少女)が迷いこんできた。(少女)とするのは、体つきは小さく幼いのに、年齢不詳の表情をしていたからだ。彼女は水のかわりに火で手を洗った。わたしがコンロの前で体を持ち上げてやると、喜んで青い炎をつかんだ。それ以外は、絵が好きな普通の子だった。#twnovel

2012-05-01 23:04:53
塩中 吉里 @shionaka_kiri

「ねえねえ」昨日見た夢や、小径を横切る猫のしっぽのもようや、星形のわた雲や、シャッターの閉まった店舗から漂ういい匂いを、残らず隣の誰かに教えてきた少年は、五十年が経ち、誰もいなくなってしまった今も、話したいことを忘れないように、首から下げた手帳に書き付けている。 #twnovel

2012-05-01 23:33:40
斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

真実を高い純度で伝えるには嘘、つまり物語が不可欠なのだと先代によく聞かされた。先代、230歳で死んだ姉にかわり、今夜も私は祈るような願いを持つ人々へ物語を届ける。受け止めきれず心を失う人もいるが、仕方がない。さて、これから嘘をつきます。ご注意ください。 #twnovel #締め

2012-05-01 23:38:21
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 天球儀の体温を確かめるのが、かの乙女の役割であり唯一の日課であった。しかし、彼女に名前はない。「名は塔に捧げました」と微笑むが声はさみしげである。早起きの者は神殿を覗いてみるがよい。気づかれぬように。朝日に震える天球儀の肌を愛おしそうに撫でる彼女の姿があるから。

2012-05-01 23:43:33
橘 颯 @so__w

硝子のキャビネットには、金古美色した淋しいが詰っている。婦が涙する都度、男は手ずからココアを淹れた。そうして減って行く褐色の代わりに、缶には淋しいが満ちて行く。甘い暗闇一杯に閉じ込めた婦の寂寥を又一つ戸棚に納めて、男は硝子戸に口付ける。其の唇に淡く喜悦を刻んで。 #twnovel

2012-05-01 23:57:36