@Rootportさんによる、Web怪談分析ツイート

いろいろ怪談を読みあさっていたところで、ちょうど@Rootportさんによる分析ツイートを発見。 勝手にまとめさせてもらいました...
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Rootport🧬 @rootport

『ことりばこ』『八尺様』『くねくね』──このあたりはWeb怪談の基本かな? コトリバコはお話としてはあまり怖くない。が、色々な人が語りたくなるような奥深い不気味さがある。残りの2つはマジ勘弁してください。

2012-05-30 20:26:48
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『ヤマノケ』『リョウメンスクナ』『リゾートバイト』『リアル』──巻き込まれ系の怪談の多さに驚く。「祠を壊しちゃって……」とか「注連縄を切っちゃって……」みたいな原因が示されず、語り手はワケも分からず恐怖体験に巻き込まれてしまう。

2012-05-30 20:30:08
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『裏S区』は文章の下手さに頭が痛くなった。

2012-05-30 20:31:16
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『禁后』は『くねくね』の発展型だと言えそう。同じ発狂モノだけど、登場人物と舞台設定を固めてある。

2012-05-30 20:33:36
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ネットでよく見かける都市伝説・怪談を時系列に並べたら、ハッテンの系譜が見事に浮かび上がってきた。キーワードは「物語の複雑化」「巻き込まれ型被害者から過失のある被害者へ」「寺社でのお祓いはいつから常識になったのか」……そのうちまとめます。

2012-05-31 17:42:23
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まず1999年5月、2chが誕生。ノストラダムスの大予言の直前だ。2chはオカルトと共に産声をあげた。

2012-05-31 17:44:12
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1999年ごろ~2001年ごろに語られていたのは「ベッドの下の男」や「ジェットババア」のような、テレビやマンガを元ネタにした都市伝説だった。「猿夢」が書き込まれたのもこのころ。「猿夢」によく似た話を、「世にも奇妙な物語」か「週刊ストーリーランド」で見たような気がする。

2012-05-31 17:47:53
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この時代のWeb怪談はワンシーンで恐怖体験を語るものが多く、物語の体を成していないモノも少なくない。起承転結ではなくて、こんな体験怖いでしょ?はい、おしまい。みたいな書き込みが目立つ。

2012-05-31 17:50:43
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しかし2001年、後のWeb怪談の方向性を決める非常に重要なお話が書き込まれる。それが「分からなくていい」だ。畑を眺めていたら、遠くで白っぽい人影が踊っていて……。そう、「くねくね」の原型になるお話なのだ。

2012-05-31 17:54:27
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翌2002年はWeb怪談の空白期だ。もちろんオカルト板には熱心な書き込みが続けられていただろうけれど、今でも語られるようなお話がほとんど生まれなかった。/この年2chを賑わせたのは「G県厨」のような実況モノだ。「S県月宮」はあまりにも有名。お兄ちゃん、どいて!そいつ殺せない!

2012-05-31 17:58:34
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2002年には実況モノの恐怖体験談がヒットを飛ばすようになり、2chユーザーは長文のスレを読むことに慣れていった。そして2003年、名作「くねくね」が書き込まれる。くねくねには色々なパターンがあるけれど、「分からなくていい」をベースにした最初期のやつは何度読んでもゾッとする。

2012-05-31 18:01:51
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くねくね以後、Web怪談は長文化の一途をたどる。ワンシーンで「ほら怖いでしょ?」というスタイルから、複数のシーンからなる誰かの体験談という形態を取るようになる。

2012-05-31 18:03:52
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複数の書き込みがリンクしてしまう「ヒルサキ」、祖父の体験談として語られる「しっぽ」……これらも2003年だ。ヒルサキの"発狂"、しっぽの"モンスター"という要素をそれぞれ併せ持っているのが「くねくね」だった。

2012-05-31 18:07:43
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そして2004年、「きさらぎ駅」が語られる。異世界モノは人気のあるジャンルだけど、有名なコピペはあまり生まれていない。誰でも知ってるレベルで拡散されたのは「きさらぎ駅」ぐらいではないかな。幽霊もモンスターも呪いも登場しない、非常にめずらしいタイプのWeb怪談だ。と思う。

2012-05-31 18:10:36
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2004年で外しちゃいけないのは「本危」だ。「本当に危ないところを見つけてしまった」の略で、肝試しをしながら実況していた>>1が行方不明になり、オカ板住人が捜索に乗り出したことで祭りになった。「きさらぎ駅」が1月、「本危」は9月。ちなみに「電車男」は2004年3月だった。

2012-05-31 18:15:25
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2005年、その後のWeb怪談の作風を決定づける2つの物語が書き込まれる。6月の「ことりばこ」、そして9月の「リョウメンスクナ」だ。この2作品は本当に画期的だった。

2012-05-31 18:19:13
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まず「呪詛・呪殺」を主題に掲げたこと。そして「歴史的背景」を固めていたこと。さらに「過失のある被害者」が登場すること。なによりも「寺社の専門家によるお祓い」を定式化したことだ。

2012-05-31 18:21:48
Rootport🧬 @rootport

もちろん呪詛を主題にした作品は古くからあった。が、「不幸の手紙」型の無差別な悪意である場合が多かった。/「ベッドの下の男」や「3歳の息子を女の子にしたい」のような「人間が怖い」というパターンと、くねくねのような「怪異が怖い」というパターン。二つを合体させると「呪詛が怖い」になる。

2012-05-31 18:28:55
Rootport🧬 @rootport

また歴史的背景を固めていたのも画期的で、ことりばこは近代の部落差別を、リョウメンスクナは古代から大正までの壮大な物語性を持っている。「古くからの言い伝えで……」と語るお話は多かったのだけど、「古く」がいつなのかを明言したのはことりばこが初めてだと言ってもいいんじゃないかな。

2012-05-31 18:31:46
Rootport🧬 @rootport

さらに「被害者の過失」だ。Web怪談では今でも理不尽に巻き込まれるタイプのお話が多い。猿夢もきさらぎ駅もくねくねも八尺様も、被害者たちは何の過失もなく恐怖体験に巻き込まれている。怪談でありがちな「古い祠を壊しちゃって……」みたいな過失がないのだ。

2012-05-31 18:34:23
Rootport🧬 @rootport

そして、なによりも大事だと思うのは「寺社の専門家によるお祓い」というモチーフを登場させたこと。「祓える人がいる」というモチーフは、この2作品以前ではマイナーで、たとえば「くねくね」には登場しない。しかしヤマノケや八尺様のような以後の作品では当たり前のように登場するようになる。

2012-05-31 18:38:20
Rootport🧬 @rootport

ことりばことリョウメンスクナは間違いなく当時のWeb怪談の到達点だった。2005年、2006年はWeb怪談が豊作な時期で、洒落コワまとめサイトで殿堂入りしているモノがいくつもある。俺のお気に入りは「巨頭オ」「危険な好奇心」あたり。モンスターモノと奇人モノですね。

2012-05-31 18:44:42
Rootport🧬 @rootport

2007年2月にヤマノケが書き込まれた。これは「くねくね」のリバイバルだと思っていて、翌年の「八尺様」への重要な布石になる。また「裏S区」という部落モノ・祓い屋モノ・奇人モノの合わせ技が登場したのも2007年だ。

2012-05-31 18:47:34
Rootport🧬 @rootport

そして2008年1月に「邪視」、8月に「八尺様」が書き込まれる。9月には「悪皿」という目撃談が書き込まれるなど、八尺様は大いに盛り上がる。「くねくね」型モンスターモノの完成型が「八尺様」だったのではないかと俺は考えている。

2012-05-31 18:50:31
Rootport🧬 @rootport

つまり:2001年7月「分からないほうがいい」→2003年3月「くねくね」→(ことりばこ&リョウメンスクナ)→2007年2月「ヤマノケ」→2008年1月「邪視」→同8月「八尺様」→同9月「悪皿」──こんな感じ。

2012-05-31 18:54:16