花魁バニーSSまとめ #花魁バニー

いさな @bc_isana

匂い立つような牡丹の衣の裾を無造作につまんで駆ければ、暁の薄闇の中で笑うように白い足首が躍る。河原の石に下駄の音が弾む。流れる水の横には愛しいあの御仁。ほんのつかの間の逢瀬でも構わない、朧な細い月の下、兎よ兎駆けてゆけ、あともうひと跳びであの方の腕の中。 #花魁バニー

みつひと @3hitolog

蕾の頃より変わらずにいつまで経っても顎を上げ誰にも媚びぬ華だった。近頃ついっと様子が変わりそわそわ見るは窓の外。いつか我が手の籠に入れよう入れよう思っていたが、どうやら心はすでに籠の内。どんな奴かと尋ねてみれば、ただただ頬を染めるばかりなり。ようやく咲いた大輪の花。 #花魁バニー

みつひと @3hitolog

普段一切り買うお方がね、今日は奮発二切り買って。ああこりゃ祝いの酒でもせねばなるまい。ようよう聞こえてくるは色を振りまく声ばかり。これは酒より用意をせねばと湯を沸かし、曇る視界のわけを湯気のせいだと言ってみる。春がきたりて溶けゆく根雪。ああめでたいな、やれめでたい。#花魁バニー

みつひと @3hitolog

果てて眠る腕の中。乱れて絡まる金糸を解き、愛しい頬を撫でてゆく。最初は遊びと思っちゃいたが気がつきゃ白磁に溺れてる。籠の中から出す算段をこれは立てねばなるまいて。しかしひとまずこの余韻をば、楽しみながら口を吸う。この碧玉は我のもの。手放すことはできもせん。 #花魁バニー

みつひと @3hitolog

籠から籠へと運ばれるこの体なんぞ不自由なもので何もこの手にゃ残らせぬ。厭いたわっちの目の前に現れたのはお日様で冷えた心が揺れ動く。火照るばかりの肌には触れずただただ笑う男が憎らし。ようよう重ねたその身は熱く芯から溶けて崩れてく。気がつきゃ口約ひとつこの手にあった。 #花魁バニー

雨傘 @damegane99

行灯の明かりを映す緑の目。褥へ広がる金の髪。鬼、化け物と蔑みながらもここへ通う客達を嘲り笑う紅い華。惚れたはれたは斬ったはった、廓の中に誠はないと骨身に染みて知っている。知っているのにあの一言が未だに耳から離れない。「綺麗な色だな目も髪も」子供のように笑った男。 #花魁バニー

あんのうんくん @unknowntb140

じゃらん、しゃらん。金棒引きの音がする。「あの時間ですが、支度はいいですか」「憎らしいね」「はて何がですか」「あの音が。来て欲しい人は来ないでも、見世には出なきゃいけない」曇った眉根を他所に、春霞に流れる、その清掻を。 #花魁バニー

みつひと @3hitolog

心底惚れたお人などこれまで一度もおりゃんせん。肌を撫でるは不粋な手ばかり舐める瞳も酔狂で、異人の肌でも試してみるかと明日は武勇を口にする。心はすっかり乾ききり男の精でも潤わぬ。どうせわっちは廓の中でひとり乾いて死ぬだろう。誰も哀れと思わぬさ。/しん #同題ssTB #花魁バニー

みつひと @3hitolog

女は皆綺麗が好きで乱したいと思ってる。異人ならばと好きにやり、てひどい仕打ちも興の内。狂っているのさ何もかも、でなきゃ買いはせぬだろう。芯はどんどん冷めていき何も感じぬ夜明け前。応える体だけがあればいい。心なんぞ死んじまえ！/しん #同題ssTB #花魁バニー

みつひと @3hitolog

そっと胸元より取り出したるは、色は緑のお守り袋。破るまいと丁寧に取り出すは端の擦り切れた役者絵一枚。見えを切る姿にそっと指あて涙ぐむ。会えばあなたの迷惑になると思って抑え込む。想いの炎が本当にこの身を焼いてくれたらいいと、願って今宵も男に抱かれる。 #花魁バニー

雨傘 @damegane99

惚れておりんす。待っておりんす。心にもなくすらすらと。嘘の手管ならすらすらと。「落ち着かねぇからやめてくれ」そう云って里言葉を嫌った彼の御仁。何時ものように笑み浮かべ「貴方が好きです」「待っています」これはいけない、心が籠る、そう悟った時にはもう彼の手の内袖の内。 #花魁バニー

雨傘 @damegane99

春には桜花を杯に、夏には冷えた水菓子を、秋には紅葉が床の間で、冬には白磁の火鉢を部屋へ。見世の季節は造り事。箱庭の中の遊び事。そこにただ一つ鮮やかな「手土産だ」と寄越したそれは黄色い向日葵。外の季節は伽羅の香払って清々と。野暮は承知と笑う御仁は愛し憎しや、籠の鳥。 #花魁バニー

あんのうんくん @unknowntb140

「じゃ、行ってきます」「おう、綺麗だぜ」もう今では滅多に行われる事のない花魁道中に立つ、何故あれらの華が美しいか判るか。親に売られ辛苦に耐え、この世の不幸という不幸を背負い、さらに重く豪華な衣装に櫛笄、吉原の威信を背負って三枚歯の高下駄で土を踏みしめる。それゆえに。 #花魁バニー

いさな @bc_isana

白い肌に真っ赤なおめめしてかわいくて、まるでお前さんみてえだ、とあの御仁がくれた小さな兎の形の鈴、それがどんな上等な簪より嬉しくて、常に離さず懐に忍ばせれば、逢いたさ見たさに胸が鳴る。他のお方の前で帯を解く夜も、衣の陰ではちりんと悲しく鈴が鳴る。 #花魁バニー

あんのうんくん @unknowntb140

「どうぞ。一献」艶やかに笑う。流れる金の髪。杯を傾けながら、戯れのように言った。「なぁ、ここから抜け出したくないか」「え？」まるで異国の言葉を聴いたような顔をして。「身請けしてやろうか」顔を伏せる。弟の想い人だと知っていて言うわが身の業を思う。 #花魁バニー @someyaBL

andrew @andrew_TandB

「虎徹殿が勝ったら一つ。なんでも言う事聞いてあげましょう。そのかわりわっちが勝ったら…」そう言って誘った花札。勝てない事は解ってる。勝った彼が他愛もない願い事をするだろう事も。けど、それでも「こいこい！」足掻いてしまう恋のあだ花。＜こい＞ #同題ssTB　#花魁バニー

ばやし @HayashiBayashih

しとしとしとしと 朱の格子を隔てた向こう もう二日も止まぬ長い雨 立てた片膝 はらりほどけた前袷 長い金糸雀の睫毛を伏せる 今日は来るのか 愛しい人 #花魁バニー

みつひと @3hitolog

請い願っても手に入らぬものもありましょう。客の目盗み月夜の窓辺、手を合わせて願います。恋しい愛しいあなた様。どうか明日は来て下さいな。今度こそはその胸で、夜明けを迎えとうございます。叶わぬ願いだからこそ胸にしまうために願います。/こい #同題ssTB #花魁バニー

聖→うの @hijiricat

廓に売られたばかりの異人の子。砂浜で膝を抱えて海を眺めているのは、その先に親を想っているのだろうか。「ここにいたのか」俺の声に振り向いた瞳は翡翠。睫毛と髪は錦糸、肌は触れるのが躊躇われるほど透きとおり、あまりの美しさに腰が引けた。 #花魁バニー