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【腐】お題:寂しい ギルベルトss

妄想の産物、寂しさと寒さと冬の朝。 腐向け。
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memo

@m__mb

【寂しい①】ギルベルトは白いシーツにくるまったまま空が白むのを見つめていた。冬場の空気は室内にも忍び込み、吐く息を白く濁らせる。独りで長い手足を縮こまらせて、ともすれば温めておいた布団んの中にまで入ってこようとする寒さから必死に体温を守っていた。独りで過ごす一晩は長い。

2012-06-08 22:13:46
@m__mb

【寂しい②】ついに寝れなかったその理由をギルベルトは意識的に考えないようにしていた。考えても仕方のないことだ。まさか、そんな事があっていいはずがない。「・・・・・・寂しい、なんてな。」国民たちも弟に十分溶け込み、たまに自国の香りを感じることはあっても、もはやプロイセンは存在しない

2012-06-08 22:17:36
@m__mb

【寂しい③】自分の国は既についえている。そんな事を最近よく考えるようになってから、ギルベルトは自嘲の笑みを浮かべた。なぜ自分はまだ生きているのだろう。なんという体たらく。こんなことなら弟と再会したあの日に消えてしまえばよかったのかも知れない。

2012-06-08 22:20:37
@m__mb

【寂しい④】いっそのこと消えてしまえばよかった――。こんな感情にさいなまれて、眠れなくなる日が来るのならば。ギルベルトはいっそう身体を縮めるとガチガチと歯を鳴らした。寒い。寂しさがシンと骨身に染みた。ああ、もう仕方がない。認めよう。ギルベルトは寂しかった。

2012-06-08 22:23:41
@m__mb

【寂しい⑤】ガチガチ・・・・・・自身の歯が鳴り、身体もガクガクと震えだした。冬の朝の寒さは、ギルベルトが必死に守っていた布団の体温まで浸食してくる・・・・。――トントン。ドアのノック音の後数秒。ガチャリという音とともにドアが開いた。「・・兄さ・・・暖炉の火が消えているじゃないか」

2012-06-08 22:28:37
@m__mb

【寂しい⑥】ルートヴィッヒは急いで暖炉の火をおこそうとしたが、ガタガタ震えている兄をみてこちらの方が早いと判断した。ひょいと兄を抱えると、すでに暖まっているリビングヘと移動する。兄はおとなしく自分の腕に抱かれており、なされるがままだった。

2012-06-08 22:32:45
@m__mb

【寂しい⑦】兄を抱きしめるように毛布でくるみ、暖かい暖炉のそばへ移動する。そのままの体勢でじっとしていると、わずかに震えながらギルベルトが呟いた。「ヴェスト」と。ルートはなんだと答えながら、腕の力を強めた。身体が冷え切っている。そのくせ自分からは暖を取ろうとしない。

2012-06-08 22:38:41
@m__mb

【寂しい⑧】回されているのはルートの腕で、兄はされるがまま。もしルートがここを離れてしまえばそのまま凍死しそうな危うさがあった。この人はいつもそうだとルートは思う。自分を粗末にしすぎる。いや、粗末にというよりどうでもいいと感じているのかも知れなかった。身体はこんなに冷えているのに

2012-06-08 22:43:35
@m__mb

【寂しい⑨】だからこそルートは待っていた。ギルベルトが自分から求めてくれるのを。もちろん兄を独りにするつもりはない。誰よりギルベルトの孤独を理解していた。だがルートが兄の孤独を埋めたくても、肝心の彼が受け取ってくれないなら仕方がない。ルートはギルベルトを抱きしめて次の言葉を待った

2012-06-08 22:49:32
@m__mb

【寂しい⑩】今、やっと兄が扉を開きそうなのだ。(認めてくれ兄さん・・・)もどかしい思いを押しこめて、相変わらずわずかに震える体を抱きしめる。そのままやけに長い時間が経過したような気がした。「ヴェスト」二回目の声にルートが顔をあげる。すぐ近くに兄のうなじが見えた。

2012-06-08 22:53:46
@m__mb

【寂しい⑪】  「・・・寂しい」  絞り出すように出された言葉は短くて、それでも十分な力を持つ。「兄さん」うつむく兄を抱きしめる。しかし先ほどとは違うのは、兄が抱き返してくれた点。やっと認めたギルベルトは今までの分を埋めるようにルートを抱きしめた。冬の朝は暖かい。   end.

2012-06-08 23:01:35