ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/06/11

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 巨大なオシドリが街を闊歩する。メタファでもシンボルでもない、言葉通りの存在であるが、人々は理解できない。繁盛するのは精神科ばかりで、日常を放棄した家族は遊園地の代わりに病棟を巡る。心の弱い者たちは、自らが架空であり、すべてはオシドリの瞳に映る虚構だと思い込んだ。

2012-06-11 00:14:49
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 神殿へと続く石の階段に、少女が小さな花を供える。衛兵が、ここはそういう場所ではないよ、と諭す。少女は無垢な瞳で衛兵を見上げ、古代の言語で何かを語りかける。衛兵は自らの無学を恥じる。そんな光景が毎朝欠かさず、百年以上も続いていることに、少女も衛兵も気づいていない。

2012-06-11 00:14:58
あまたす @amatasu

失恋した。人生最後の恋、そのはずだった。辛くて、悲しくて、わたしは泣いた。ティッシュを二箱使い切っても、まだ泣いた。そうしているうちに、眠ってしまったらしい。冷たさに目を覚ますと、ベッドの外は一面の海で、わたしの頬に波が打ち寄せていた。わたしはまだ、泣いていた。 #twnovel

2012-06-11 01:50:33
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 無人の教室。あの子の縦笛。囁く悪魔。間接キスの誘惑。幼い胸の葛藤。悪魔と天使の折衷案は、唇をつけずに息を吹きかけること。教室に響いた情けない音が、始まってもいない恋の終わりを暗示していた。

2012-06-11 02:05:44
雨音 @candypeal

この切符は使えませんと困り顔の車掌に言われ、走る電車から降ろされました。その時、線路の真ん中に体育座りして見上げた空の青さがまさに、この指輪の色なんです。私の薬指を愛おしげに撫ぜながら彼は繰り返し話す。切符に細工をしたのはあの犬だと知りながら、私は相槌を打つ。 #twnovel

2012-06-11 02:49:38
浅葉積木 @tsumiki_a

#twnovel この家の人間が庭に食事を用意しなくなってからだいぶ経つ。そういえば、そもそもここの人間の姿を見なくなった。小鳥たちには理由は分からないし興味が無い。またいつかここで食事が出来るかもしれないから時々は様子を見に来よう。その時はまたお気に入りのこの枝に留まろう。

2012-06-11 07:03:14
蒲公英 @haruka_tanpopo

街灯のスポットライトを浴びた手品師は、うやうやしく頭を下げて微笑んだ。「僕の劇場にようこそ」素人とは思えないジャグリングのボールに拍手すると、いつの間にやらボールのひとつはリングケース。「さて、お次はお客様の姓を変えてみせます」ねえ、それは手品なの?#twnovel

2012-06-11 08:27:39
ておまさお @teomasao

取引先に電話した。「佐藤と申しますが、鈴木さんはおられますか?」「申し訳ございません。当社に鈴木は5人おりますので、フルネームでお願い致します」「鈴木としか名乗らなかったんですよね」「それでは鈴木に確認しまして折り返しお電話差し上げます。私、鈴木が承りました」 #twnovel

2012-06-11 09:59:47
@tofuhamburg

遠い宇宙から明らかに自然でない電波が届いた。人々は「地球外知的生命体からだ」と大騒ぎ。返事をと地球上のあらゆる言語・リズムで通信が行われたが反応なし。唯一、海中で録ったある音だけが違った。結局その電波が何なのか分ったのは随分あと。宇宙クジラが発見された時だった。 #twnovel

2012-06-11 16:05:17
七歩 @naholograph

梅雨。空から雨の如く降る梅を拾う子供達。綺麗で大きい梅だけが梅干しとしておいしくなれる。子供達は梅を集め、梅婆ちゃんの元へ行く。梅婆ちゃんは梅を飴に取り替えっこしてくれるのだ。そして飴がつきた頃、子供と一緒に梅を漬ける。梅婆ちゃんも子供達も梅雨がとっても大好きだ。#twnovel

2012-06-11 16:06:21
N.T.Works/凪司工房@介護生活中 @nagi_tter

#twnovel 今日子さんは小人を見る。「今日子さん、苺ジャム見なかった?」「知らないよ」「今日子さん、ハチミツは?」「知らない」「今日子さん、ここに残ってた食パンは?」「知らない。でも小人さんなら見たよ」「その小人さんが君に悪さしたのかな?」僕は彼女の口の端のジャムを拭いた。

2012-06-11 16:50:01
@mimimdr

ロボットはこの星に生命が生まれる前からずっといた。遠い昔、他の星からやって来て帰れなくなったのだ。失恋して泣いている私に、彼はそっと寄り添った。姿かたちは違うけど君たちも涙を流すんだね。僕を作った地球人もそうやって泣いていたよ。ロボットは寂しくても泣いたりしない。#twnovel

2012-06-11 18:43:17
hypo- @hypohyphen

#twnovel 朝起きるたびに胸の奥がすうすう寂しい。こりゃ穴があいたかな、と医者に行くと、老先生は薄荷のとり過ぎだね、と短く言う。出された薬は生姜味の水飴。大丈夫かあの医者、ぼやきながらもお湯に溶かしてちびちび飲むと、少しずつぽかぽかしてくる。寝て起きると頭に花が咲いていた。

2012-06-11 20:28:16
layback @laybacks

月の夜。野良猫たちは会議する。静かに。長老が土管の上に登る。今夜の議題は他でもない。我々の未来についてだ。皆も知っての通り、先月、突然この街から人が消えた。今のところ危険の兆候は見えぬが、早晩食料がなくなるだろう。移住すべきか、否か。皆の忌憚なき意見を聞きたい。 #twnovel

2012-06-11 21:23:03
ゆい @yu_i_ta

毎度ご乗車ありがとうございます。各駅停車東京行です。節電のため、お降りの際にはドア横のボタンを押して、解答して下さい。吉祥寺が見えて参りました。それでは第13問。『千のプラトー』『アンチ・オイディプス』 などを著した2人組といえば?はい、8号車3ドア目早かった。 #twnovel

2012-06-11 21:42:18
tokoya @tokoya

#twnovel 街の中央に巨大な砂時計がある。それが何時から動いているのか、知る者は誰もいない。でも終わりは必ずやって来る。それが今日だ。街中から人が集まり、無言で砂時計を見守った。そしてついに、最後の砂が落ちた。その瞬間、世界が上下反転し、人も、街も、全てが崩れ落ちていった。

2012-06-11 22:30:20
すわぞ @suwazo

#twnovel 羊皮紙を用意せよと言ったら羊が書斎に現れた。腹にだけ毛がない。ここに書けということか。私は幼なじみへの文を書く。彼の国は今や敵国である。我が国の軍は既に国境を越えた。だが私は。続きに迷い手を止めた私を、羊が不思議そうに見上げる。子供の頃の幼なじみの顔に似ている。

2012-06-11 22:35:59
歌種 @PM23564

#twnovel 「豆腐屋の豆腐になりたかった。スーパーじゃなく、商店街の片隅で昔気質の店主が営む豆腐屋で売られたかった」嘆く端から崩れ落ち、お椀の中の豆腐は既に形を留めていない。「口に入れば同じだろう」呟いて白く濁った味噌汁を流し込む。美味い。半額のシールは後で丁寧に剥がした。

2012-06-11 23:56:05