跡もえパロ3

戦国時代
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@k5xm0e

1 「綺麗な花畑!」 タタタタタッ 「ひいさま!危のうございます!」「大丈夫」「この辺りは盗賊も出るのです。何かあってからじゃ遅いでしょぅ」「わたしには跡部がついているもの!だから平気よ。何かあったら跡部が守ってくれるもの」「仕方のない、ひいさまですね」 #跡もえ で戦国パロ

2012-06-25 23:49:07
@k5xm0e

2 「また夜更かしですか?」 月明かりに照らされる少女に声をかける。少女は七瀬家の末姫で、俺が仕えるひいさまである。末姫として愛されて育ったからだろう。血や争いとは無縁の姫で、いつも屈託なく笑っている。 「眠れないだけ」 その柔らかな笑顔に何度救われただろうか。 #跡もえ 

2012-06-25 23:49:29
@k5xm0e

3 「そろそろ寝なくては。明日は市にお出かけするのでしょう?」「ええ。ねえ、跡部」「はい」「眠るまで側にいて?なんだか怖いの」「全く。ひいさまはもう立派な女性なんですよ?駄目です」「…そう、よね」「さ、お部屋まで送りますから」「ん」 だからどうか、そんな顔をしないで。 #跡もえ

2012-06-25 23:52:51
@k5xm0e

4 ひいさまが好きだ。愛している。命を懸けて守りたい。ひいさまを守って死ねるならば本望だ。けれどひいさまは七瀬家の末姫で、俺は目付役。結ばれる事は決してない。だから俺は、今日も思いを胸に秘めて距離を取る。ひいさまの一番近くに居ながら一番遠くに立つのだ。 #跡もえ

2012-06-25 23:55:52
@k5xm0e

5 「嫁ぎ先が決まったわ」 それはいつもと変わらない昼下がりの事だった。ひいさまがぽつり呟く。 「おめでとうございまする」「相手は極悪非道で有名な平山家のお殿様よ」「…殿がお決めになったのです。きっと幸せになれましょう」「跡部の、馬鹿」 ひいさまの頬に一筋の涙が伝った。 #跡もえ

2012-06-25 23:59:17
@k5xm0e

6 「わたしが、誰を好きなのか知ってるくせに!そんな上っ面の言葉なんて要らないわ!逃げてよ!!わたしを連れて、逃げてよ!!」「ひいさま」「……っ」「もうじきお稽古の時間です。お支度を」 追われて逃げる日々になる事が解っていて、どうしてひいさまを好きと言えようか。 #跡もえ

2012-06-26 00:02:16
@k5xm0e

7 それからの日々はあっという間だった。今日ひいさまは旅立つ。 「ひいさま」 ああ、なんて美しい白無垢だろうか。胸が、熱い。 「今日まで、よく仕えてくれました。感謝します。わたしは跡部、あなたを、心から愛していました」 返事は、涙を堪えるのに必死でできなかった。 #跡もえ

2012-06-26 00:05:37
@k5xm0e

8 ひいさまが嫁いで二月。ひいさまのいない生活にもようやく慣れてきた、そんな頃の事だ。 「なあ聞いたか?」「ああ、末姫様の事だろう?確か本妻から苛めにあって地下牢にいるんだっけ?」「殿も相手が平山様だからな、手を出せないらしい」 そんな噂話に耳を疑った。 #跡もえ 

2012-06-26 00:12:11
@k5xm0e

9 すぐに忍をやり調べさせてみた所、噂は本当だった。ひいさまは平山家に側室として嫁いだものの、それが北の方様の逆鱗に触れ、平山家につくや否や地下牢に閉じ込められたらしい。なんと言うことだろう。俺はひいさまの幸せを願って手を離したのに。 瞬く間に怒りの炎が燃え上がった。 #跡もえ

2012-06-26 00:15:38
@k5xm0e

10 ゆらりゆらり、上がる炎。下克上が常とはいえ、身震いする。今こうして、この城を攻め人を殺めているのはこの俺だ。だけど。 「跡部殿!末姫様が見つかりました!」「今、行く!!」 「跡部!」「ひいさま!」 ひいさまがそれで笑うならば。俺は修羅になる。 #跡もえ

2012-06-26 00:18:30
@k5xm0e

11 ぎゅううう 「ああ、こんなにお痩せになって……!申し訳ございません」「大丈夫」「ひいさま…?」「わたしには跡部が居るもの。絶対助けてくれるって信じてたわ。だから、平気よ」 ああ、もうこの手を離したりはしない。 #跡もえ で戦国パロ おしまい

2012-06-26 00:21:03