【ゾンサバで】 ６日目 【リレーSS】

吾妻巧 @ESTakumi

今日の吾妻巧：【戦闘】ゾンビ化した親を安らかに眠らせてほしいという少女に出会う。了承して戦うなら５のダメージ、お礼に拾った治療薬（ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て）をくれる。 http://t.co/noLUWnfV　「どうするの？」自然と言葉は出た「――助けるさ」

犬居　のすけ @inui_nosuke

今日のinui_nosuke：【同行者】足と目を悪くした子供（アイテム扱い。だが、有利な効果は何もない）を発見。連れて行くなら好きにせよ。足手まといと分かってもなお連れて行くなら、だが。食糧：－２ http://t.co/7CVELqBa

犬居　のすけ @inui_nosuke

交代で仮眠を取る。何があるかわからないこの状況では当たり前の決めごとに、やはり当たり前にセラは頭数として数えられない。タクミとじゃんけんをするカナメ。負けて悔しそうにした後、急に「でもまあ、これまで大変だったでしょうし、今夜はよく寝なさい」と微笑むカナメ。

犬居　のすけ @inui_nosuke

「あ…っと、その前に包帯。ずれてるみたいだから見せてみなさい」と強引に服を捲り上げるカナメ。羨ましい、とも少し違う。周囲の少女たちに比べても大人しい性質のセラには、助けてくれたヒーローの隣に見合う年齢の女性がいたところで嫉妬心など生まれようもない。ただ──

犬居　のすけ @inui_nosuke

（役に立てないのは、やだな…）このところ、少し考え事をする時間があればすぐこの結論にたどりつく。タクミと二人きりだった頃に比べ、ひとり蚊帳の外に置かれる事が増えたのもある。（せめて、迷惑はかけないようにしないと）そう思うとやけに熱い体のことを、彼らに伝えるのが怖くなってしまう。

犬居　のすけ @inui_nosuke

「じゃあ寝ようか」傍らにきたタクミが、横になり自然な仕草で手を握ってくれた。冷たくて心地いい。軍施設で初めて出会ったとき、初めて自分を庇ってくれた時の彼の手は、とても暖かかった気がするのに。「おやすみなさい」伝えると優しく頭を撫でられて、複雑な気持ちで瞼を閉じた。

犬居　のすけ @inui_nosuke

物音がした気がして目を覚ます。夜が明けたらしく眩しさになかなか目が開かない。まだ寝ているタクミの隣には、なぜかカナミも一緒になって寝入っていた。ゆっくりと体を起こし、そこで凍りつく。まとめておいた荷物の近くに、小さな人影が見える。「お…お兄さ……」「待って！」

犬居　のすけ @inui_nosuke

慌ててタクミを起こそうとすると、必死の声がセラを遮った。子供だ。自分とそう変わらない年の、少女。「待って…ごめんなさい。助けが欲しかっただけなんだ」そうつなげた言葉は、しかし何を目的にしているのか誰もいない方向に向けられている。（ううん、違う…見えてないんだ…）

犬居　のすけ @inui_nosuke

少女は光の入らない目で懸命にセラに乞う。「もう行くから…今朝は何も取ってないから、だから大人の人は起こさないで」「って、そういう訳にはいかないわよねえ」かけられた声に少女と同じくらいセラも驚いた。振り向くと眠っていたはずのカナメが、勇ましく少女に銃を向けていた。

犬居　のすけ @inui_nosuke

「やっぱりね。気配はあったし、寝たふりすれば出てくると思った。それにしても…また子供、か」やれやれと首をふって、カナメが少女に近づく。待って、と喉まで出かかるが、先にカナメに「そこで待ってなさい、子供だからって油断しないで」と鋭く釘を刺されてしまう。「お兄さん…タクミさん……！」

犬居　のすけ @inui_nosuke

こうなると頼れるのはタクミしかいない。少女が本当に危険な人物なのか、カナメが何を考えているのか自分にはわからない。けれどもし、カナメがあの銃の引き金を引いてしまったら──「お兄さん、お願い起きてっ」

吾妻巧 @ESTakumi

「――ッ！ 何をしてるんですか！」悲痛な声に目が覚め、目に飛び込んできたのは更に悲痛な光景だった。荒らされた食料。震える少女、銃を構える女性。即座に状況は理解できた。あらゆる異質さに体が震えた。――だからこそ、タクミは声を振り絞る。「――銃を下ろしてください」 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「まだ子供は寝ている時間よ。大人に任せていなさい」そう言ったカナメの声はゾッとするほど冷たかった。「その子も、まだ子供です」「そうね。でも、違うわ。この子はあなた達じゃない」一瞬、その真意をタクミは理解できなかった。「――」彼女は静かに銃の撃鉄を起こす。 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「――それは、僕たちなら、」「ええ」タクミの言葉を遮り、カナメは答える。（ああ、この人は……）ようやく、タクミは彼女の心に触れることができた気がした。彼女は大人としての責任を果たそうとしているのだ。そしてそれの限界を知っている。一人が助けれる数には限りがあると。#ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

それはとても悲しい考えだ、とタクミは思う。そしてそれが子供の甘えなのだ、とも理解できた。それは同時に、この銃を構える彼女へ負担を強いる繋がることも分かっている。（それでも……！）タクミは頭を振る。「ダメです」カナメは冷たく「どうして？」と疑問を返した。 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「……守られている僕たちが言えることじゃないってのも分かってます。カナメさんに負担をかけているのも分かってます。でも……。それは、決して取るべき手段じゃない。……その引き金を引いてしまえば、失ってしまいます。こんな状況でも、人であることを捨てて欲しくありません」#ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「――はぁ」カナメの大きな溜息が投げられた。「やっぱり、子供ね」「いいんです。子供で」もう一度、カナメは溜息を吐き拳銃を懐へ入れた。そして、わざとらしい明るい声で「……冗談よ。お仕置きをしようと思っただけ。勝手に食料を盗ったらこうなる、分かった？」と、言った。 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

その向かいにぺたんと座っていた少女は、震えていた。その光景がつい先日のセラと重なる。「……大丈夫？」近づき、顔を覗き込む。「あ、あ……」「大丈夫。もう怒らないから」「……は、はい」少女の視線は遠くを向いていた。（……この子、目が）少女の目には、光が無かった。 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「ご、ごめんなさい！ わ、わたし、お腹が減って……」少女は必死といった様子で頭を下げる。その様子は、タクミはとても悲しく思えた。「いいよ。食べ物なら少し分けてあげる」いいですよね、とカナメを見る。カナメは小さく笑って返した。タクミは自分のバッグから缶詰を渡した。#ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「ところで、お父さんか、お母さんは？」タクミの一言で、少女は沈黙する。「……ごめん。聞かない方が良かったかな」そう言って、もう一つ缶詰を取ろうと立ち上がろうとした、そこで服の裾を引かれた。タクミは少女を見る。少女は、光のない目を向けていた。「お願いが、あります」#ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

「――この道を、そのまま真っ直ぐです」少女の案内の元、住宅街を進む。閑静な住宅街だった。綺麗に整えられた街道や、沿って植えられた並木が清潔さを思わせる。だが、そこを歩く人は他に誰もいなかった。「その角を曲がって、３つ目が、」少女は一瞬、息を飲む。「私の家です」 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

少女は静かに語り出した。焚火の火がゆらゆらと揺れる。「お父さんの様子がおかしくなったのは、一週間ほど前からです。始めは口数が減っただけでした。でも、どんどん喋らなくなって……。気になって、病気かな、って思って触った手はとても熱かったのを覚えてます」 #ゾンビサバイバル

吾妻巧 @ESTakumi

（……高熱）タクミはどくんと胸に何かを覚えた。だが、それはまだ形にならない。少女は言葉を続ける。「そんなお父さんは私を遠ざける様にしてました。部屋にいなさい、って。それだけを言って。でも、そんなことが続いた日、リビングからすごい音がしたんです」 #ゾンビサバイバル